記念日4
メイン料理が出て来て、ウッ、と思った。魚と肉の両方が出て来たのだ。
「大概はどちらかなのに、これは?」
「好みが解らないから両方頼んだのでしょう」
いとも簡単に沙苗さんは云うが、向かいのテーブルにも両方、肉と魚の二皿置かれている。
「一年も同じ食卓を囲んでいれば判りそうなものなのに」
「朝は一緒でも、夕食には揃わない日もあるでしょう」
もっと決定的なのは、何でも食べてくれるのは有り難いけれど、作る張り合いがないと母がぼやいていたと面白おかしく言われてしまった。
「それでお父さんはお母さんに聞いた結果、こう云うメイン料理になったのじゃあないの」
それならそう言えばいいのに、それではこのサプライズは無理か。とナイフとフォークで肉料理から格闘して、話は四年前に弟が旅館の巣ごもりまで遡った。
何故か父が催した今日の行いに対して、沙苗さんには罪滅ぼしという考えはない。そもそも弟に対して自由奔放にさせたのが何の罪に値するのか。考えを詰めれば懺悔に行き着きもしない。父はそれほど厳格ではない。宗教心のない娘にミッション系の大学行きにも、目くじらを立てるどころか学費も大いに負担して家に聖書があっても何も言わない。それどころか勧められるままに父も読んだ揚げ句に、中々言い文面もあり参考にも成ったと言われる。
「息子の丹波の巣ごもりから、娘の宗教にまで拡げるのか」
沙苗さんの父の講釈に半ば呆れて、細く切った厚いステーキを、越村は忙しなく口に運んでいる。




