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石塚の店4

「まあまあ」と言われても以前とどの程度なのか、余計な心配を掛けたくないのか、本当はどうなのか気になった。石塚の無表情からして読み取れるのは越村ぐらいだが、その彼にしても実に根気が要る。

「石塚、お前、何《なん》のために武奈ヶ岳に登ったんだ」

「そんな話を今更ほじくり返しても、この人は動かないわよ」 

 珈琲カップを持って石塚の後ろに立って、澤村さんは他人事《ひとごと》みたいに、彼奴《あいつ》の頭ごなしに言って退ける。

「この店をオープンさせるまで何をやってたんだ」

「だからトレーニングして、スポーツ用品を売るのもいいねぇってなって、色々店を廻ったところで、この店のオーナーが雪山で足を凍傷して身売りする話を聞きつけて、この施設を買い取ったの」

黙ってる石塚に代わって、澤村さんが簡単に説明してくれた。

「じゃあ、お前が探し回ってこの店を見つけたわけじゃないのか」

「ああ、それで響子に言われてしまった」

「なんて」

「武奈ヶ岳に登って響子からトレーニングを受けたが、俺はあの山以上は無理だと解った」

「勝手に決めるな。それは澤村さんが決めるんだろう」

「平行移動なら大丈夫。ヒマラヤは無理でもアマゾンは行けるわよ」

「それはたいしたもんだ。俺は槍ヶ岳には行けてもアマゾンは無理なのに。これも澤村さんのおかげか」

 どうかしら、とさっきまで立っていた澤村が、越村の隣に座ると彼が真ん中になった。まるで越村が二人を分けてるようだ。

「それで就活を止《や》めたのか」


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