石塚の店3
「それで石塚はどうしている」
「奥で伝票の整理をしているのよ」
「ほう〜珍しいなあ、彼奴が」
「あの人口下手で、奥の仕事が合ってるのね」
「なんせお姉さんからダルマ扱いされてる男だからなあ」
うふふ、と、そんな物思いに耽る人じゃないと澤村は微笑んだ。
「そうだろうなあ、まさか穂高では澤村さんは石塚を、興味本位で聴いていたとばかり思い込んでいたのに、一緒になってお荷物になってなければいいが」
「もうお荷物よ」
「エッ! 後悔しているのか」
「ウウン、その反対、ほっとけなくて、気になってしょうがないのよ」
「じゃあヒマラヤ登山どころじゃないなあ」
「アレは、う、そ。だってそうでないとあの人動かないんですもの」
「じゃあ、ちょっと様子を見てみるか」
ここは家賃が高いだけに住居にしていない。その所為かほとんどの敷地を商品の展示で占めている。
通りから見れば間口は三間半六メートル近くの大きな店舗に見えるが、奥行きはその半分以下で、壁に仕切られたその奥は、更にその半分しかない。澤村さんが中央にある入り口のカーテンを開けて奥へ案内した。
奥の左側は事務所と流し台とトイレがある。勿論嵩張る事務机はなく、部屋の三分の一は固定された長テーブルで、その上の棚には伝票や商品が積まれ、スチール製の事務椅子だけが三つあり石塚の隣に座った。反対側は倉庫になって大きな商品が所狭しと置かれていた。
それをちらっと見て売れ行きを聞いてみた。流しで珈琲を淹れてくれた澤村さんが「まあまあってとこかしら」と長テーブル上に置いてくれた。
「店は澤村さんがやっていて、お前は何をしてるんだ」
「まあ、見ての通りだ」
「そんな言い方ないでしょう」
と澤村さんは眉を寄せて、石塚を睨むでもなく半分諦めた表情で、こんな人ですと越村に視線を戻した。その瞳に何となくほのぼのとしたものを感じた。




