石塚の店1
御池通柳馬場通西入る北側に、奥行きはそうないが、外から陳列した商品が見えるように三間半の間口一杯ガラス張りにしたスポーツ用品店を、石塚は澤村さんと二人で経営している。今では澤村さんがインストラクターを兼ねて、買ってくれたお客の指導もしていた。
大学を出れば天王町にある親の店を手伝うのが普通だが、石塚の場合は完全に適用除外と早々と親は匙を投げていた。その影響か矢張り式を挙げる余裕はなかった。此の店は貸店舗で高い家賃を払いながらの経営で、内情はまだ軌道に乗りかけたばかりで、二人は籍には入れたが結婚式どころではなかった。
想えば学生時代に遡ればこの二人は逆転している。あの頃は石塚が澤村さんに追随していたが、その総仕上げに比良山系最高峰の武奈ヶ岳登山をした。
武奈ヶ岳山頂から下山して二人の絆が増した。もう石塚には越村を必要としない。澤村さんが越村に代わって彼を支えだした。沙苗さんも弟にはもう干渉は不要とし、越村の特訓も必要ない。澤村さんが登山を奨励しなくなったとはいえ、けして甘やかさずにトレーニングは絶してない。京都と大阪に居る澤村ではマンツーマンで取り組めず、越村にも頼まず石塚が自主トレーニングを始めた。天地が逆さまに回り出した。この日課を澤村さんはデートの度に確認して、街中でもエレペーター、エスカレーターは避けて排除していた。これには沙苗さんも越村も、笑うに笑えない涙ぐましい努力が愛だと脱帽した。
石塚は大学を出る前にマンションのようなアパートを借りてもらい実家を出た。澤村さんも大学の卒業が確定すると顔見せ程度に大学に通った。何度かの日帰りから石塚の部屋に泊まり出すと、いつからか一緒に暮らし始めていた。沙苗さんは越村のアパートに良く来ても、実家が気になり泊まらなかったのとは大違いだ。




