重なる親の愛2
「それが可愛いと姉に言われるほど彼奴は自分に素直じゃない。何を言っても周りの人の事を考えてない」
「それでもお父さんにすれば気の済むようにやらせたいと思っているのよ」
「丹波の隠れ里ではね。あれには参った、何も感じずに石塚がのうのうと旅館に長居したお陰で、こうやって二人が暮らせたのには感謝している」
「そこはあなたのお陰かしら、その点はあたしも感謝している。それ以上なのが父でしょう。それであなたは大事にされているのよ」
「そうかなあ、今はこき使われてる」
「そう思うのはあなたの身勝手な思い込み。いつか二人の間に出来た子が苦もなく健やかに育てられるように働いて頂戴。そのためには我が家のために努力を惜しんではいけないわよ」
あなたのご両親の若狭の実家も一度訪ねて見て、賑やかな家族で驚かされた。家では一人片づいてホッとしていますよと言われて可笑しかった。
実家は若狭と言っても若狭湾の西の端にあり、数キロ隣の舞鶴に勤めている。目の前の海に背を向けた苦労を、肌で感じて育ててくれた実家は有り難い存在だ。
「そうね、あなたの実家は海の近くにあったのね」
漁師町で漁業者以外は仕事が少ないのだ。依ってこの町では生活は楽じゃない。しかも五人兄弟となれば尚更だ。そこで舞鶴にみんな働きに行く。
「それで両親に初めて会って、とても穏やかで漁師の顔をしてなかったのね」
「顔で仕事を決めるなよ、それに漁師は板子一枚下は地獄だって言うからなあ、五人いても誰もお袋をどん底には落としたくない。それで陸の仕事を決めたんだ」
「それって、お義母さんへの愛情の裏返しなんだ」
沙苗さんはそう取るか。そうなると愛と愛情とは微妙に違ってくる。
「賛否両論はあるが、一概に子供の数が愛情の深さとは限らない」
「そうかしら。家族のために仕事を選んでいるあなたのご両親は如何なの」




