重なる親の愛1
二人が居る部屋は和室で、夜が更けるに従って、気温は下がるが炬燵はとうにしまってある。少し前に夏日近くまで気温が上がり、ソロソロ冬のジャケットとはおさらばするはずが、名残尽きぬままハンガーに掛かっていた。行きつ戻りつつする季節に、二人は座卓を前にして、淹れた紅茶を飲みながら、芽生えた頃の両親の恋ごころを整理してみた。
長矩と佳乃の出会いは、彼女が大学の就活で受けた証券会社に、勿論受付嬢でなく一般事務員として採用された。敷居の高い受付窓口に気軽に来られるように彼女で敷居を低くして来客が増えると事務職に戻した。事務員なら同僚に適当に愛想良くすればいい。受付嬢はそうはいかない。目一杯愛想良くお客を招き入れないといけない。その頃の笑顔に長矩が強烈に反応して最初のデートに百済寺を訪れた。
庭園に池は付きもの。ただ庭の眺めの中に取り入れるのでなく配置された建物の中に取り込んであるのがここの特長だ。配置と水の流れから長矩は流し台を創造した。佳乃は「この発想は何なの」と驚きを飛び越え、感情をつかさどる大脳の一部に激震が走って恋心を刺激した。
「あの校庭の片隅で項垂れたように、物思いに耽る生徒の時と同じ刺激が、頭の中に湧いて来たって言われたの」
同時に今度はしっかり受け止めようとお母さんは思った。お陰であたしが生まれて成長するように、止めどもなく時間は流れていると感じずにはいられない。あなたを知ったのもそんな流れの中。だが越村には、石塚はどう考えても石塚家の家庭環境には囚われず、中途半端に育った気がする。第一彼奴は俺に見透かされながらも、本人は世間とは対等に渡り合ってると素知らぬ顔で突っ立っている。俺の目には滑稽で、頭隠して尻隠さずだ。




