母の想い3
「じゃあどうして別所さんを焚き付けて聞き出そうとしたんだ」
「お母さんとはよく一緒に河原町へ出掛けて、ふと父について足を止めて考えるときがあるからよ」
何処かで母は気にしてるんじゃないかと思って、ちょっぴり別所さんに頼んだようだ。
「そんな勝手な忖度で、それでお義父さんの恋愛観を探そうとしたのか」
「そう、だってお母さんの目がそう訴え掛けてるのよ」
「オイオイ、勝手に決めるな。誰だって黄昏に人生を重ねるひとときはあるもんだ」
「それが恋愛なら女性にとっては大問題よ」
「男は仕事か、お義父さんの場合は仕事とロマンが直結していたんだろう」
彼女だって越村に父の再来を期待するように、最初のデート場所を選んでいる。
「お義母さんだって過去には色んな出来事の中で、お義父さんを選んだのなら何も言えない」
そこを問い詰めると「そうね」ともの足りなさを感じて、何度か人生の黄昏に引き込まれそうになると、つい母に訊いてしまった。
昼休みになると、いつも校庭の片隅で物思いに耽る人が現れて、母はその人に心が釘付けになり、もう心が堪えられなくなった。でも一度も声を掛けらずに、とうとうその人は卒業した。
「その人とはどうしたの?」
「とうとう言い出せないままになってしまったのよ」
「それだけ」
でもそれでどれだけ心が苦しめられたのか、母はその時のことが頭に浮かぶ度にふと立ち止まった。
「それから心が動けば立ち止まったらあかん、と母からスッカリ刷り込められたのよ」
入社して暫くだけ、人寄せパンダにされた受付嬢の時に、心に留まる言葉を掛けられたのが父で、デート先が湖東三山の百済寺で母はこの人だと決めた。




