母の想い2
「それに似合わない」
エッ、と聞き返した。意味が判らないのだ。
「お義父さんの過去が今の生き方と似合わないのか」
「そうじゃないの。その三上君って言うお友達のやり方が、父の性格に合わないって言ってるの」
「だって君の生まれる前の話だろう。どうしてそう思える。義父の子供の頃の考え方と今では変わってないって僕は思うけど」
「やっぱりあなたもおかしいわよ、父の子供の頃は知らないのにどうしてそう言い切るのよ」
「世間で良く言う三つ子の魂百までは、幼児期に身に付いた性格がそのまま大人になっても変わらない。それでも物事に対する考えが違えば、今は思い遣りのある対応が出来る」
要は形成された性格に安定した情緒が身に付いてくる。
「幼い頃に身に付いて変えるにも変えられないものなんて有り得ない、ましてそこが弟と同じなんて滑稽を通り越して、お父さんにすれば悲劇じゃないのッ」
沙苗さんは弟と父を同格にするなとぼやいている。
「悲劇はないでしょう。静寂な人だと思うが石塚には当てはまらない」
「もちろん、そんなもん、弟に当てはまるわけがないッ」
沙苗さんは仏頂面しているが、目許には憂いを帯びてる。誰に対しただろう。お父さんかそれとも石塚か。いずれにせよ彼女には、今日までの人生を埋めてきた肉親だ。
「でもね、洋樹さん。子供って前後の見境もなくやるのが普通じゃないの」
それが子供の特権だと彼女は言っている。越村も同感だと思っている。何が違うのか敢えて言うなら世間に擦れてないところだろう。
「子供心に残っているものって、案外とシビアなものが多いのよ」
「そうか、現実を無視出来る子供だから、許される世界に浸っていられる」
本当はそんな父の子供時代の想い出なんて、沙苗さんは知りたくなかったのだ。




