社長の話3
ーーそんなの口が裂けても言えないよ。彼奴は典子ちゃんが好きだ。それで俺が典子に三上はお前を好きだと代弁してやった。その代わりあの日の集団登校をずる休みして君にやらせた。
ーー何のためにそんな事をしたのよ」
ーーえへへ、今だから時効で話すけど、三上との交換条件で希実ちゃんならそれが一番効き目があるって言われてそうした。
ーーあたしの気を惹くためにそうしたの。
そうだと四十年ぶりに白状した。
ーー確かにあれは効き目が後からボディブローのようにあたしのハートにじわじわ効いてきたのよ。
希実ちゃんの気を惹くにはどうすればいいか。三上と一年近く考えた末に卒業の一ヶ月前に実行した。確かに希実ちゃんの気を惹けた。向こうは頭にきて口も聞いてもらえなかった。それでも何もしないよりインパクトはあった。中学ではクラスが違ったが偶然を装って待ち伏せて顔を合わせるようにした。最初は無視していたが、何なのよと食って掛かり出し、これで口を利いてもらえた。愚痴でも嫌みでも良い。これを突破口に会話を増やすんだと思った矢先に君は転校してしまった。
ーー最初は頭に来たわよ。しかも中学に行ってからあたしの目の前に頻繁に現れているうちに、何なのこの人はと思い始めると頭が怪しくなったのよ。
いや、彼女は真面になったんだ。恋とはそう言うものなんだ。
ーーどう言う風に。
ーー何か胸がチクチクしだしたのよ。ようーし。今度会ったらとっちめてやろう思うまもなくあたしは急な父の人事異動で転校を余儀なくされた。それからどれだけあんたの為に苦しんだが解らんやろう。
ーーこっちは君とは逆に居なくなると段々と想いが萎んでいった。
ーーへ~え。石塚君の恋って、そんなもんだったの。
と四十年ぶりにスッカリ忘れていた初恋の相手に言われて「そうだったのか」と社長はすぐに思い出せずに意気消沈したそうだ。社長の頭の中には整理整頓が行き届いていたが、この出会いから更にどんな些細なものでも心の片隅にいつでも取り出せるようにした。




