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揺らぐ世界の渡り方  作者: 春科シオン
第一章 少女は案内人と出会いその素顔を見る

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風乗る少女:04 午睡

「正味な話、どう思う?」

ナヴェットの昼寝中、階下のロビーでシャラがシュロに問いかける。


「体力も行動も食事も、『ただの子ども』としか思えん。が」

「ただの子どもマンタに乗って空の彼方からやってくるわけないよねえぇ」

シャラは頭を抱えた。


そしてあの、異常と呼んで差し支えない聡明さと、先ほど覗かせた翳り。どちらも年端のいかない子どものものとはとても思えないが、それが「里」で過ごした経験の成せるものだとしたら。いったいどれほど濃密な……場合によっては過酷な幼少期なのか。


「話す内容にも特に矛盾はないし……まったくシュロは早々にほだされちゃってさ」

「普通だろ、あんな小っこい子を励まさまない選択肢とかあんの?」

ほんとイイ子に育ってしまったものだ。先ほどまであんなに不満そうにしていた癖に。


「まぁそれはそれでいいんだけどっ。本当に正規の代理人なわけぇ? だとしたらなかなか鬼畜な話じゃない?」

半日ほど見た限り、ナヴェットは喋りさえしなければ本当にありふれた子どもだった。子どもの足に合わせたおかげでこの漁村に戻るのに想定以上の時間がかかったし、見かけるあらゆるものに目を輝かせて興味を示し、挙句(本人のやる気とは裏腹に)電池切れを起こしたので、急遽宿に入って寝かせた。


どう考えても、保護者抜きで旅に出すべき存在ではない。


「心配じゃないのかね、里長とやらは。あんな小さい子をさ」

「でなければ……内緒でナヴェットが誰かと入れ替わったとかか?」

「そういうことしそうな子には見えないけどね……」


普通なら「おうちへお帰り」と相手にしないところなのだが、なにせあの返信の文は本物だ。

加えて、ひとたび喋ればこちらが飲まれるような空気を纏う。確たる証拠もなく邪険に扱うのも危険に思われた。


「もう、いつもならさっさと上に報告して判断責任を押しつけるのに!」

今回は限りなく非公式の直轄指示のため、本来の直接の上長はこの件を知らされていない。指示元からは「現場の裁量」を盾に、終わるまで接触してくるなと匂わされている。


「報告できないのに、報告書は書くんだな」

「シュロ君、それがいつか己の身を守るのだよ、覚えておくといい」

現場好きが多いこの職には珍しいことに、シャラは書類仕事が苦でない質だが、今回の件は何と書き残したものか、さすがに綴る文字が止まりがちだった。


「もうこれじゃさ、接待随行(アテンド)じゃなくて護衛付添(エスコート)じゃない。しかも子ども相手なんて難易度全然違うよ、評価に相当色つけてもらわないと割に合わない」

「そもそも評価対象になるのかコレ」

「ヤなこと言わないでよ」

何せ限りなく非公式の直轄指示だ。残念ながら、どういう扱いになるか未知数なのはその通りだ。


「まあ分からんけど、とりあえず祭壇までは案内すればいいんじゃないか。場所が秘密ってわけでもないし、万が一替え玉か何かでも問題はないだろ」

確かに新祭壇発見はすでに世間で話題になっているので、部外者を案内したからと言って大した問題にはならないだろう。


「ウチらで身の回りの安全は注意してやってさ。成果があれば万々歳。そうでなければ、シャラが上手く長官の責任にしてくれ」

「そんな力があるように見えてるわけ?」

でも結局はそれしかないのだろう。シャラはため息をつきながら書きかけの報告書を閉じた。


「あの子の体力に合わせて、日程見直さなきゃだね。この村は休憩だけで出発する予定だったけど一泊しよう。あの大規模な鱗砂子(うろこすなご)も気になるし。シュロはルート計画直しながら、ナヴェットのこと見てて」

「いいけど、シャラはどこか行くのか?」

「あのままだとあの子目立ちすぎだからね。着替えを手に入れないと」

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