結末
話はこうだ、まずはアリア殿に求婚した貴族がいた。
それは国境を守るリーガン伯爵家の当主らしい。
そしてアリア殿の言う通り、条件をつけてきた。
しかし、その裏では……妨害をしていたというわけだ。
それがわかった今、儂のすることは一つである……翌日、街にあるリーガン伯爵家の別宅に向かう。
「貴様、ここを何処だと——」
「これが目に入らんか!」
「それは……少々お待ちください!」
門兵の一人がすぐに屋敷に向かい、すぐに小太りしたおっさんが出てくる。
胡散臭そうに儂の紋章を確かめた後……すぐに態度を改めた。
「これはこれは、国王陛下の印をお持ちの方……何か御用ですかな?」
「お主がリーガン伯爵家の当主じゃな?」
「い、いかにも、私がリーガン伯爵の当主であるモルガンだ」
「何故当主が国境にいないとかは置いとくとして……アリア殿から手を引く考えはあるか? お主がしたことは全てお見通しじゃよ」
すると、モルガンの顔色が変わる。
どうやら、触れて欲しくないようだ。
「あれは私のだ! 何故、手を引かねばならん!」
「正当なやり方であれば、儂は文句は言わん。しかし、お主は裏から手を回した。ギルドに圧力をかけたり、ならず者を雇って襲わせたり」
セドリック殿から聞いた。
ギルドに圧力をかけて、アリア殿を孤立させろと。
それでもアリア殿は頑張り、どうにか銅級冒険者に。
そして今回の功績で鋼級になるのを、此奴が妨害したというわけだ。
「う、うるさい! 黙れ!」
「いいや、黙らん。貴様は貴族にあるまじき行為をした。女の尻を追っかける暇があるなら、領内にいる妖魔達を退治すれば良かった」
「そんなのは私の仕事じゃない! それに、平民がいくら死のうと——ふぐぅ!?」
それ以上は言わせない。
儂は手で口を塞ぎ、ゴミのように投げ捨てる。
「わ、私にこんなことして済むと思うなよ! お前ら、こいつを消せば証拠は消える! 国王陛下の印を持った者など来なかった!」
「……屑が」
「ひぃ!? や、やれぇぇぇ!」
兵士達が戸惑いつつも、槍や剣を構える。
「お主達も、馬鹿な主人に仕えてしまったのう。いいだろう、かかってこい」
「「「ァァァァ!」」」
「ふんっ!」
躊躇のある攻撃など避けるまでもない。
抜刀を放ち、剣圧で兵士たちを吹き飛ばす。
そのままモルガンに近づく。
「や、やめろ!」
「お主はやりすぎた——牢屋で反省するがいい!」
「グヘェ!?」
顔面を殴り飛ばすと、ゴムボールのように飛んでいく。
すると、打ち合わせ通りにセドリック殿達がやってくる。
「さて、聞いていたな?」
「はっ、確かに」
「では、後始末を頼んでも良いかのう? それと、頼みたいことがある」
「もちろんです、それくらいはさせてください」
「感謝する」
儂は用意してあった二通の手紙をセドリック殿に渡して、その場を後にする。
そのまま歩き、門の外の近くでオルトスと合流した。
「ウォン?(いいのか? なにも言わなくて)」
「うむ、きっとあれこれ言われてしまう」
「ウォン(間違いないのだ)」
そう、儂はこのまま別れを告げずに出て行く。
顔を合わせづらいというのもあるが、自分の中にある未練をこれ以上見ないために。
「やはり、ユリア様に似てるのが悪いわい」
「ウォン?(惚れてたのか?)」
「どうじゃろうな? 今となってはわからん」
「ウォン(アリアではダメなのか?)」
「それは彼女に対して失礼じゃよ。それに、儂は老いぼれだ。彼女なら、もっとステキな男性がいるだろう」
儂とて朴念仁ではない。
アリア殿が、儂をそういう目で見ていることには気づいていた。
しかし、儂は死んだろくでもない人間……そんな男は忘れた方が良い。
「ウォン(相変わらず不器用なのだ)」
「放っておけ。ほら、次なる目的地に向かうぞ」
「ウォン?(何処なのだ?)」
「とりあえず国境を越えて、そこからは適当じゃ。美味い物と綺麗な景色を求めて、あちこち行くとしようではないか」
「ウォン!(賛成!)」
「決まりじゃな!」
そうして、儂らは門を出て行く。
決して振り返ることはなく。
だが、この出会いに感謝の意を示して。




