エピローグ
……遅いですね。
夕方になっても、シグルド殿が戻ってこない。
いつのまにか、オルトス君もいなくなってる。
すると、宿にセドリック殿が訪ねてきた。
「どうしたのですか?」
「アリアさん、申し訳ございませんでした」
「あ、頭をお上げください!」
「いえ……謝って済む問題でないことは承知ですが、どうか謝罪させてください」
「その、まずはお話を聞かせてください」
「これは失礼いたしました」
メリッサ殿の許可を取り、一階のカウンター席に座る。
そうして、事の経緯を聞かされた。
そのあまりの情報量に目眩がしてくる。
「えっ? 私が昇格? そもそも妨害があったなんて……シグルド殿、なんで黙って行ってしまったのだろう」
「なんでも照れ臭いだそうです。きっと、貴女がお礼をすると言うから」
「当たり前ではないですか!」
こんな見ず知らずの私に、ここまでしてくれる方なんていなかった。
それも、見返りも求めない。
まさしく、私が目指すべき騎士の姿だった。
「本当に素晴らしい方でしたね。結局、塩漬けになっていた依頼も、全てこなしてくれましたし」
「ええ、本当に……まるで、かの英雄シグルド様のように」
「案外、息子さんとか。でも、独身だと言う話でしたか」
「ふふ、本人だったり」
「それは面白いですね」
魔王を倒した英雄シグルド様は知らないけど、きっと彼のような人なのだろう。
私に何かできるだろう……彼の恩に報いたい。
この気持ちに整理をつけるためにも。
そんなことを考えていると、セドリック殿が二通の手紙を差し出す。
片方を見守っていたメリッサ殿に、もう一つを私にと。
「大事なことを忘れてました。こちらが、アリア殿宛ての手紙になります」
「……拝見します」
『拝啓、アリア殿。この度は勝手な真似と、黙って出て行く不義理を働き申し訳ない。その詫びと言うわけではないが、王都にある近衛騎士ユーリスに貴女を騎士になれるように手紙を出した。この手紙を見せれば、後はその男が面倒を見てくれるだろう。貴女が立派な騎士になれることを願っております。それでは、またどこかで』
その中を見た私は、目から涙が出るのを堪えきれなかった。
何が詫びなのだろう?
こんなの、ずるいではないですか。
「うぅ……」
「……拝見しても?」
「はい……」
「これは……何という粋な計らい」
「本当に……シグルド殿、貴方に最大限の感謝を」
今、目指すべき騎士の姿がわかった。
私は貴方のような騎士になってみせます。
だから、いつか……また会ってくださいね。
一部完結となります。
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