お節介
それから更に数日後、大きな街道に出る。
看板や馬車の後などもあるので、大きな街や都市が近いはず。
どうやら、迷子は脱したらしい。
「ふぅ、どうにかなったか」
「ウォン(人に聞いたり、我が匂いで探せば早かったのだ)」
「それでは旅の醍醐味がないではないか」
折角の自由な旅、目的地を決めずにふらふらするのが一番じゃ。
もしかしたら、まだ見ぬ景色や美味いものがあるかもしれない。
「ウォン(確かにあの森は楽しかったのだ)」
「じゃろ? 普通の道を通っていたら、あの景色などは見れなかったに違いない」
「ククーン(でも、ふかふかのベッドもいいのだ)」
「全く、フェンリルの名が泣くわい」
すると、オルトスの耳が小刻みに動く。
表情も険しくなったので、儂は黙って待つことに。
「……ウォン!(……主人!)」
「どうした?」
「ウォン!(妖魔の声と、人間の悲鳴が聞こえたのだ!)」
「そうか。では、案内せい」
騎士や盗賊たちの小競り合いならともかく、妖魔となれば話は別である。
全人類の敵である妖魔は、駆除しなくてはならない。
儂はオルトスの案内の元、現場へと駆けつけるのだった。
◇
くっ、私としたことが……利き腕に傷を負ってしまうとは。
こんなことなら、パーティーの誘いを受けるべきだったか?
いや、しかし……結局は変わりないか。
下品な男達と行ったところで、手籠めにされるのは見えていた。
「ブヒッ!」
「ブホホッ」
目の前にはオークの集団。
どうにか別件の依頼を終えた後、帰り道に出くわしてしまった。
普段なら、こんなところにはいないはずだというのに。
「……なんで街道近くにオークの群れがいるのだ」
騎士団や冒険者達が定期的に狩りを行なっているので、そう出くわすことはない。
何も、私が一人の時に出くわさなくてもいいのに……これも、人を頼らなかった報いか。
このまま、慰み者にされるのか……いや、私はここで死ぬわけにはいかない。
「ブホッ!」
「下卑た視線を向けおって、もう勝った気か……だが、ただではやられんぞ」
退却する際に、街道から少し外れてしまった。
故に助けが来る可能性は低い。
私は覚悟を決めて、利き腕ではない方で剣を構える。
「ブヒッ!」
「ブホホホ!」
「ちっ……!」
オークどもが、次々と斧を振り下ろしてくる。
私はどうにか反撃しようとするが、利き腕の痛みが邪魔をしてしまう。
「本来なら、オークこどきに手こずるわけはないのに……!」
「ブホッ!」
「ニヤニヤと……!」
これがオークのいやらしいところだ。
妖魔の中でも、特に相手を痛ぶることを好む。
何より……人間の女を性的に痛ぶることで有名だ。
「ブヒッ!」
「なんの——しまっ!」
右腕の痛みに耐えることに集中しすぎて、視野が狭くなっていた。
後ろから迫るオークに気づかずに、背中に傷を負ってしまう。
何とか直撃は避けたが、これでは剣を振るたびに痛みが走るだろう。
それがわかったからか、オークがジリジリと寄ってくる。
「ブヒッ……」
「こ、こんなところで……助けて」
「ブヒヒッ!」
「く、来るなァァァ!」
恥も外聞もなく、ただ泣き叫ぶ。
そんな自分が情けなくなるが、まだ私は死ぬわけにはいかない。
しかし目の前の現実は……わたしの未来を終わらせに来る。
「ブヒッ!」
「ひっ……」
動きが取れないことをいいことに、オークが次々と服を剥がしていく。
その時——私にのしかかったオークが吹き飛んだ。
「ブヒッ!?」
「女子を辱めるとは……クズめ」
「ウォン!(そうだそうだ!)」
そこにいたのは精悍な顔つきの青年と、見事なシルバーウルフだった。
私が呆気にとられていると、その青年が優しく微笑んだ。
「お嬢さん、もう安心していい。このクソ共は、儂が始末する故に」
「えっ? い、いや、私も戦う……くっ」
立ち上がろうとするが、痛みと恐怖で立ち上がれない。
なんたる情けない姿だ……自分が恥ずかしい。
すると、上からマントを被せられた。
「な、なにを……」
「そのような姿を晒すわけにはいかんのでな。さて……オルトスよ、女子の守りは任せた」
「ウォン!(任せるのだ!)」
そうして、青年はオークの集団へと立ち向かうのだった。




