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若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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忘れていた約束

……よく寝たわい。


北の大地の旅は辛かったが、何処でも寝られるようになったのは悪いことではない。


「さて、オルトスは……朝から元気じゃな」


「ウォン!(気持ちいいのだ!)」


視線を川に向けると、そこには子犬……いや、オルトスがはしゃいでいた。

どうやら、一人で遊んでいたらしい。

日差しの中で戯れる姿は、良く良く見れば一枚の絵のようだ。

忘れがちになるが、此奴は伝説の魔獣フェンリルじゃからな。


「オルトス! いい天気じゃな!」


「ウォン!(主人! 起きたか!)」


「どれ、儂も朝の水浴びでもするかのう」


昨日も川遊びはしたが、それはあくまでも水浴びではない。

今度はゆっくりと浸かり、石鹸を使い汚れを落としていく。

それが終わったら、プカプカと浮いて穏やかな川を漂う。


「……あぁ……気持ちがいい」


「ウォン(おっさんみたいなのだ)」


横ではオルトスがバシャバシャと犬かきをしている。

そして、儂を可哀想な目で見ていた。


「ばかもん、これが大人の過ごし方というやつだ。そもそも、儂はジジィだというのに」


「ウォン(そういえばそうだったのだ)」


「全く……よし、お主にも少し大人の過ごし方を教えてやろう」


「ウォン?(何をするのだ?)」


「川があるということは、近くにアレもあるはず。よし、ついて参れ」


儂は川から上がり、裸のまま川の上流に向かう。

すると、すぐに『ドドドド』という音が聞こえてくる。

その方角に向かうと……見事な景色が広がっていた。


「おおっ……こいつは見事じゃわい」


「ウォン!(滝がすごいのだ!)」


「うむ、壮観であるな」


そこは森の隙間もいうべき光景。

そこには木々が空を遮ることなく、心地よい日差しが水面と滝を照らしていた。

飛沫はキラキラと光輝くように宙を舞い、滝の音以外はしない空間。

まさしく、絶景と言っていいだろう。


「ウォン?(これが大人の過ごし方?)」


「うむ。あとは……岩部に座るか」


滝がよく見える岩場に座り、魔法袋から紅茶の入った水筒を取り出す。

オルトスには、冷たい牛乳を用意した。

どちらも中々に高価なものだが、こういう時はケチってはいかん。


「ほれ、飲むといい」


「ウォン!(やったぁ!)」


ピチャピチャと音を立てて、オルトスが勢いよく飲み出す。

不思議なもので、魔獣がやると下品には見えないものよな。

当然儂がやれば下品なので、ティーを片手に優雅に紅茶を飲む。


「……美味い」


暖かい紅茶に、綺麗な景色、そして滝の音。

側にはオルトス以外はいなく、そこには緩やかな静寂がある。

おそらく、これが大人の過ごし方というやつだ。


「ウォン!(飲みきったのだ!)」


「……ちと早すぎやせんか? もう少し、情緒というかなんというか」


「ククーン……(だって美味しかったのだ……)」


いくら飲み方は下品ではないとはいえ、飲みっぷりは酷い。

というか、口周りが牛乳でベチャベチャである。


「やれやれ、まだまだ大人にはなれないようじゃな」


「ワフッ(ぐぬぬ)」


「ふっ、仕方あるまい。ほら、顔を洗ってきなさい」


「ウォン!(うむ!)」


オルトスは顔を洗えと言ったのに、岩場から飛び降りて水飛沫を上げる。


「お、おい! 危ないではないか!」


「ウォン!(楽しいのだ! 我は丈夫だけど主人には無理なのだ!)」


「ぐぬぬ……ええい!」


少しの悔しさと、ちょっと楽しそうだと思って……誘惑に負ける。

儂も高さ五メートルほどの岩場から、勢いよく飛び込む。

すると全身に負荷と、なんとも言えん爽快感が押し寄せた。


「ウォン!?(主人!?)


「フハハッ! 見たか!」


「……ワフッ(……大人とは)」


「……今の儂は若いんじゃ」


そうして、結局泳ぎ回る羽目に。

更にここまできたら、密かにやってみたいことを実行する。

そう、滝があるなら……打たれてみたいのが男心よな。


「あばばばば!」


「ヴォーン!(あばばばば!)」


「オォォォ! これは効くわい!」


「ウォン!(よくわからないけど楽しいかも!)」


滝の根元にある岩に座り、滝行を楽しむ。

そう言えば、若き頃にロイス様と滝行をしたこともあったのう。

また一緒にやろうといい、それきりだったが……。

一頻り楽しんだら、再び元の岩場に戻る。


「どうやら、忘れていた約束は果たせたようじゃな」


「ククーン?(主人?)」


「オルトスよ、感謝する」


オルトスが遊ぼうと言わなければ、こうして思い出すこともなかったかもしれない。


儂は感謝を込めて、オルトスの頭を撫でる。


すると、嬉しそうに目を細めるのだった。


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