第6話
「もしもし?」
「晴花、今忙しい?」
「全然忙しくないよ~。で、どうしたの? 何かあった?」
「ううん、そうじゃなくて。ちょっと確認したいことあって」
「確認?」
「うん。アイツ、ちゃんと働いてる?」
「アハハハハ、大丈夫よ。ちゃーんと私が監視してるんだから」
「もしかして、今もやってるの?」
「まさか。とっくに終わって、今のんびりとしてるとこ」
「そうなんだ」
百井、生唾をごくりと飲み込む。
「ねぇ、晴花」
「何?」
「匂いとか大丈夫かな」
「え、匂い?」
「ほら、隣、一応児童養護施設だし」
「は? お姉ちゃん、もしかして子供たちのことを心配してるわけ?」
「そんなわけないでしょ。その逆。変な匂いがするって通報されないか心配してるんだから」
「アハハ、なるほど。それなら大丈夫。あいつ、結構地中深くに埋めてたから。それに、荷物は全部片づけるし、入念な掃除と消毒もしたから」
「そっか」
「何なら明日確認しにくれば? 匂いとか、諸々」
「うん、そうする」
「私、一応ここで一晩過ごすから」
「アイツも一緒?」
「もちろん。だって、一人じゃ怖いから」
「アハハ、だよね。でも、ありがとう」
「ううん。お姉ちゃんのためだもん」
「あ、アイツ今どこにいる?」
「ちょうど風呂から出てきたところ。処理するのに風呂も使ったから、掃除しとかないとマズイじゃん」
「確かに」
「ん、代わろうか?」
「うん、代わって」
「はいよ」
電話越しに聞こえる妹の声。アイツの下の名前を呼んでいる。
「もしもし、お電話代わりました」
「よっ、よくやってくれたね」
「いえ、お義姉さんのためですから」
「フフフ。ってかさ、どうして私の願い聞いてくれたわけ?」
「それは、もう、晴花に離婚を切り出されたからですよ」
「ん?」
「惚けないでくださいよ。俺と離婚するように言ったの、お義姉さんですよね」
「バレてたか。ハハハ、うん、そうだよ」
「どうしてそんなこと」
「だって、そうでもしないと私たちのために働いてくれなさそうだったから」
「そんな・・・・・・」
「でも、離婚切り出されたから働いたわけでしょ?」
「はい、俺は晴花と離婚したくないし、嫌われたくないですから。言いなりに従うことこそ、俺の仕事です」
「いいねぇ、じゃあ、これからも頼んだよ」
「あ、はい。こちらこそ、お願いします」
アイツから妹に電話の相手が代わる。
「ありがとね、晴花」
「何が?」
「私のこと送ってくれたのに、帰ってすぐアイツの監視させて」
「ううん」
「とりあえず今晩様子見て、何か違和感とかあったらすぐに連絡して。夜中でも行くから、ッハハ」
「はーい。待ってるね」
「うん。じゃあ、とりあえずは、また明日」
「うん。また明日」
「おやすみ」
電話を切る。大きな深呼吸をひとつする百井。澄んだ空気がやけに美味しく感じられた。




