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僕らが子供だった頃  作者: ひおむし
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ゼーゲン王国について

説明回です。

「……その質問に答える前に聞きたいが、コリューシャはこの国についてどの位知っているんだ」

「フランカ出身の魔法使いが集まって作った国だろう。外交をはじめて今年で100年。建国以来、周辺国との国交を断っていたが、現代魔法については随一だと聞いている」


 ゼーゲン王国より海を挟んだ大陸にあるフランカ王国。そこはかつて魔法大国と言われた国家だった。だが、ある代の国王はそれに満足せず、世界一の魔法国家となるべく国中の優秀な魔法使いをせっせと狩りまくり、片っ端から禁呪魔法を植え付けようとした。理の外にある魔法が使えると言われている禁呪魔法は古代魔法の中でも扱うのが特に難しいと言われている。そんなものがそうそううまくいく筈もなく、ボトボトと命を落とす魔法使い達。それでも国王の『魔法使い狩り』は止まらない。だって国王、強くなりたいんだもの。

 そんなイカれたオッサンに付き合って死にたくねえ、と意を決した魔法使いは同士を集め、国を出た。海を超え山を超え、当時まだ未開の土地を発見し、国を作った。

 最も、最初は国ともいえぬ状態だったが、ともかく周囲から見つからない事が最優先だったのだ。隠蔽魔法を最大限に使い、魔法の大盤振る舞いで人の住める土地にし、国民全員、気合を入れて引きこもった。

「その後、ある程度国としての体裁が整った頃に『ゼーゲン王国』として、名乗りを上げたんだ。それまで特にトップは決めてなかったんだが、当時一番魔力の強かった魔法使いが初代国王となった。強い代表がいた方がハッタリが利く、って程度の判断だったんだがそれが俺のご先祖様だな」

 国家として設立しても、フランカ・ストーカー国王から何をされるかわからなかったため、国交は最小限で長い間鎖国状態だった。己達だけで国を回すため、各自必死に魔法の腕を磨いた。元々優秀な魔法使いの集まりだったが、皮肉にもそれが後の魔法大国と呼ばれる礎となった。

「まぁ、ようやく他国とも渡り合えるくらいに国力がついて100年前に本格的な国交を開始したわけだが……」

 はぁ、と深く息をついた。話し続けて疲れたのもあるが、気持ちも重い。

「ここに来て、俺を王太子に担ぎ上げたい連中が騒ぎ出してな」

「は? 今更?」

「第一王子が継ぐものじゃないのか」

 第一子が継ぐという明確な決まりがあるわけではないが、正妃腹の長男で他国の王女を娶りすでに子供が3人、となるとむしろ立太子しない方が何か問題があると思われるくらいだ。アルフレートは側室の子なので本来であればあくまでスペアで、ゆくゆくは臣籍降下する予定だ。だが、

「大変遺憾ながら、異母弟である俺が天才的な魔力を持って生まれてしまったせいで話がややこしくなった」

「帰っていいすか」

「自虐だ、わかれ」

 白けた顔で手を上げるランベルトに舌打ちする。もう何かあまりにも自由すぎて気を使うのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

「別に自慢で言ってるわけじゃない。……本当に困ってるんだ」

 この世界で魔力を持つ者は生まれつき属性がある。後天的に増やす事も可能だが、生まれついての属性がやはり相性は良い。魔力の段階としては国際基準で1から10段階まで決められていて、生まれた時の魔力は基本が2、多くて3。4あれば天才と言われている。

「俺は、生まれた時点で風属性10だった」

「よくわからないがそれはすごい事か」

「とてもすごい事だ」

 後天的に10を目指す者もいるが、それは『ちょっとワタクシ本気を出して人間辞めますね』という宣言とされる。10段階と言っても、実際は測定できるのが9までで、測定不能が10なのだ。ここまでいくと天才というより天災扱いだ。

「説明が長くてくどいんすけど。結局、どこがデンカの同室も側近も護衛も従者も、友達もいない可哀想な人だって理由に繋がってるんですか」

「誰が可哀想な人だっ。友人がいないとは言ってないだろうがっ」

 ふう、と呼吸を整えてから、まだ国内で発表していない事を告げた。 

「……ここだけの話だが。開国100年のこの節目に、フランカ王国との国交を樹立する運びになった」

「マジすか」

「マジだ」

 建国の原因であるフランカ王国は、現在も魔法国家としての体面は保っているが、実際はかなり怪しいことになっている。『魔法使い狩り』のせいで優秀な魔法使いは軒並み死ぬか国外逃亡されたせいで、一時期ぐっと国力は下がったらしい。引きこもってたご先祖様もザマァと喜んでいることだろう。

「そのせいか、あそこはどうにもきな臭い噂が絶えない。未だに禁呪も研究してるんじゃないかって噂だ」

「何でそんな国と仲良くしようとしてんすか……」

「かろうじて大国の部類には入ってるからな。フランカそのものというより、フランカと国交がある国との交流がこのままじゃ厳しいんだ」

 大きな企業と付き合いを断つと、そこと繋がっている他の企業とも付き合いを得にくくなるようなものだ、と説明する。

「あー、友達多い子に嫌われてると、クラスで友達作りづらい法則ですか」

「一気に日常レベルまで下がったな」

「それで何で王子が国王に推薦されるんだ」

 今ひとつ飲み込めない、という顔をしているリクに、アルフレートは心底面倒だという顔で告げた。


「ゼーゲン王国初代国王は俺と同じで、生まれつき風属性が10クラスだったんだ」


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