表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/111

嫌な予感しかしない

部屋へ戻った頃には、

王城の廊下も静まり返っていた。


 


夜更け。


 


窓の外には、

淡い月明かり。


 


レオンは、

無言で麻袋を持ったまま歩いている。


 


そして。


 


ミレイユの部屋へ入るなり。


 


「こちらへ」


 


ミレイユが、

当然のようにベッド下を指差した。


 


レオンが、

静かに視線を落とす。


 


ベッド下。


 


そこには既に。


 


木剣。


 


謎の干し芋。


 


保存食らしき包み。


 


用途不明の麻縄。


 


完全に秘密基地だった。


 


レオンが、

深くため息を吐く。


 


「……増えてませんか」


 


「辺境から持って帰ってきました

隠すの大変だったんですよ」


 


少し誇らしげだった。


 


レオンは、

何も言わず麻袋を押し込む。


 


ごろごろ、と果物が転がる音。


 


もはや王女の部屋ではない。


 


その時だった。


 


ミレイユが、

ぽつりと呟く。


 


「……ねぇ」


 


レオンが、

振り返る。


 


ミレイユは、

ベッドへ腰掛けながら首を傾げた。


 


「近衛騎士って、わたくしと四六時中一緒にいなきゃいけないのかしら?」


 


「えぇ」


 


即答だった。


 


ミレイユが、

ぱちぱちと瞬きをする。


 


「寝ている時も?」


 


「何かあれば即座に動ける距離にはおります」


 


「へぇ」


 


興味深そうだった。


 


レオンの眉が僅かに寄る。


 


……嫌な予感がする。


 


ミレイユは、

そのまま続けた。


 


「じゃあ、

どちらで寝ているのですか?」


 


「殿下の部屋前の控室です」


 


「見せてください」


 


即答だった。


 


レオンが、

完全に止まる。


 


意味がわからない。


 


だが。


 


ミレイユは、

もう立ち上がっていた。


 


結局。


 


レオンは、

無言のまま控室へ案内する。


 


部屋は質素だった。


 


簡易ベッド。


 


小机。


 


椅子。


 


壁に立てかけられた剣。


 


それだけ。


 


ミレイユは、

静かに部屋を見回す。


 


そして。


 


ぽつりと呟いた。


 


「……狭い」


 


レオンが、

目を瞬く。


 


「控室ですので」


 


「窓も小さいですね」


 


「寝るだけですから」


 


「息が詰まりそう」


 


レオンは、

少し困ったように黙り込む。


 


王女が。


 


なぜそんな顔をするのか、

わからなかった。


 


その時だった。


 


ミレイユが、

また首を傾げる。


 


「休みの日は?」


 


「……はい?」


 


「どちらで過ごされているのですか?」


 


レオンは、

僅かに間を空けて答えた。


 


「騎士棟の、

近衛騎士用宿舎です」


 


「一人部屋ですか?」


 


「そうです」


 


「窓は?」


 


「あります」


 


「陽当たりは?」


 


「……良いですが」


 


「そうですか」


 


ミレイユの瞳が、

じーっと細められる。


 


完全に。


 


何かを考えている顔だった。


 


レオンの背筋に、

嫌な汗が流れる。


 


そして。


 


次の瞬間。


 


ミレイユは、

にこりと笑った。


 


これは絶対に、

“問題を起こす前の顔”だった。


 


「明日遊びに行ってもいいですか?」


 


「駄目です」


 


反射だった。


 


即答。


 


ミレイユが、

ぱちりと瞬きをする。


 


「……まだ最後まで言っていないのだけれど」


 


「駄目です」


 


「どうしてですか?」


 


「絶対に何か企んでいるからです」


 


沈黙。


 


ミレイユが、

少しだけ唇を尖らせる。


 


「失礼です」


 


「違うのですか」


 


すると。


 


ミレイユは、

ふわりと笑った。


 


満面の笑み。


 


その瞬間。


 


レオンは、

確信した。


 


あぁ、

駄目だ。


 


これは。


 


かなり危険なやつだ。


 


ミレイユは、

ゆっくり口を開く。


 


「……わたくし、

王女なのだけれど?」


 


圧だった。


 


絶対権力だった。


 


しかも本人、

それを完全に悪用しようとしている。


 


レオンが、

静かに額を押さえる。


 


……頭が痛い。

この王女また何かやらかす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ