今夜は二人きり
王都近郊――
古びた借家の一室。
アルフレッドとセシルは、
机を挟んで座っていた。
ミレイユは、
窓の外を見ながら言う。
「今回のことで、
王城は大騒ぎでしょうね」
「帰らないのですか?」
アルフレッドが尋ねる。
すると。
ミレイユは、
ふふんと胸を張った。
「帰りません!」
即答だった。
「いつもは赤髪でも、
こっそり帰れましたが」
「今回は色々やらかしすぎました」
「絶対に見つかります」
その通りだった。
孤児院摘発。
地下牢潜入。
騎士負傷。
役満だった。
「ですので!」
ミレイユが立ち上がる。
「今日はここへ泊まります!」
そして。
少しだけ笑った。
「みなさんで外食と反省会をしましょう」
「今回の失敗を、
今後へ活かさなければなりません」
アルフレッドとセシルは、
顔を見合わせる。
あれ。
思ったより反省している。
すると。
ミレイユが続けた。
「串焼きを食べながら」
前言撤回だった。
「揚げ菓子も必要ですね」
やっぱりいつも通りだった。
その時。
――ガチャリ。
扉が開く。
全員が振り返る。
そして。
ミレイユの顔が固まった。
「ダメです」
低い声。
そこに立っていたのは。
包帯を巻いたレオンだった。
部屋の空気が変わる。
ミレイユの笑顔も消える。
すん。
見事な速度だった。
「なぜ」
「貴方がここに」
心底残念そうだった。
レオンが眉を寄せる。
「現在」
「王都には騎士が大量に出ています」
「摘発も続いています」
「殿下を放置するわけにはいきません」
「二人では抑えられないと思いまして」
アルフレッドとセシルが頷く。
「その通りですね」
「えぇ」
「反論できません」
裏切りだった。
ミレイユの頬が膨らむ。
「抑えるとは」
「どういう意味ですか?」
レオンは真顔だった。
「言葉のままです」
即答だった。
ミレイユはむすっとする。
そして。
腕を組んだ。
「本日は」
「三人で外食と反省会をしますので」
「レオン様はお怪我をされています」
「お帰りください」
「嫌です」
即答だった。
ミレイユの顔がさらに曇る。
すると。
アルフレッドが申し訳なさそうに手を挙げた。
「殿下」
「はい」
「私達」
「王城へ戻ります」
沈黙。
「……はい?」
「騎士が出払っていますので」
「本日は警備です」
セシルも頷く。
「徹夜ですね」
ミレイユが固まる。
数秒。
動かない。
アルフレッド。
セシル。
レオン。
アルフレッド。
セシル。
レオン。
視線が往復する。
そして。
現実を理解した。
「つまり」
小さな声。
「今夜は」
「私とレオン様だけですか」
「そうなります」
レオンが答える。
ミレイユは。
ものすごく嫌そうな顔をした。
アルフレッドが吹き出す。
セシルが顔を逸らす。
レオンは額を押さえた。
「ご不満ですか?」
静かな声。
ミレイユは。
にっこり笑った。
「いえー」
笑顔だった。
ものすごく。
嘘だと分かる笑顔だった。
「大丈夫です……」
声も死んでいた。
アルフレッドは思う。
地下組織の壊滅より。
王女の落胆の方が分かりやすかった。




