↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/26

5.ハンター協会

門を抜けると、広い通りが真っ直ぐ伸びている。

馬車でも余裕で2台が並走できるだろう。

地面は砂漠の砂が平らに均されているが、十分な湿度を保持していて歩きやすい。

デミオリクスはなにやらぶつぶつと呟きながら通りを歩いている。

「シトメタ・・・キョカショウ・・・ケガワ・・・ハンターキョウカイ」

「しとメタ・・・キョカしょう・・・けがわ・・・はんたーきょうかい」

「しとめた・・・きょかしょう・・・けがわ・・・ハンターきょうかい」

「仕留めた・・・許可証・・・毛皮・・・ハンター協会」

最後の発音はまずまずだ。


門番に言われたとおり、2つ目の通りを左に曲がる。

夕刻になるが通りには色々な店が立ち並び、人通りも多かった。

しばらくいくと目的の「ハンター」と書かれた看板を見つける。

ここだ。

店に入ろうと思ったが障壁に阻まれた。


デミオリクスは背中に冷たいものを感じた。

悪魔よけの障壁だ。

神殿で提供している護符は悪魔に対する防御能力を持っている。

招かざる客である悪魔はこの障壁の中に入ることができない。

入るためには中から招かれるか。

案内する先導者を立てるかだ。

この都市の主要な建物は全て守られていると考えたほうがよさそうだ。

入口でうろうろしていると中から若い女性の声がした。

「なにか用かしら、入って」

助かった入れる。

ゆっくりとドアを潜ると幾分涼しい。

店内には女性が1人だけだった。

デミオリクスは牙と爪をまとめてカウンターの上に置いた。

「仕留めた」


エマ・グリーンはハンター協会の店員である。

黒い髪と大きな目をした20歳くらいの若い女性であるが、妙に貫禄がある。

この女性が実はエイブルの顔役であることは公然の秘密であった。

奥には何人も人がいるが、店の管理は全てエマが行っている。


エマは店に入るときからじっとデミオリクスを見る。

このあたりのものではない。

遠方のものだろうか。

何があったかは知らないが、殆ど裸だ。

平均的なハンターより少し小柄、年は20歳くらいかしら。

日焼けした肌で精悍に見える。

が筋骨隆々とはいえないわね。

ファイターならレベル1、レンジャーならレベル2かしら?

瞬時に見立てを終える。


カウンターの爪と牙を見た。

「デザートタイガー!」

ばかなこのレベルのハンターに手に負える野獣ではない。

まさかキャスターなの?

右腕を見るとかなりの深手を負ったと思われる。

が殆どふさがっている。

なるほど治癒ができるということはクレリック?

雰囲気がちょっと違うわね。

すると自己治癒できるモンク!


自分の見立てが外れることは今までなかった。

「デザートタイガーの牙2本で銀貨2枚よ」

「でもハンターでなければ換金できないわ」

「登録には銅貨10枚かかるけどどうする?」

デミオリクスを見る。

デミオリクスは真っ直ぐこちらを見ている。

やがて「登録したい」と言った。


エマは少し違和感を感じた。

口が動いていたかしら?

デミオリクスはエマが警戒しているのを感じた。

なにか失敗したのだろうか?

「エビルアイ」

勘の鋭いものには感ずかれてしまうのかもしれない。

なるべく現地の言葉でやり取りしたほうが良いようだ。

もっと自然に見えるように工夫しよう。


エマはしばらくデミオリクスを見ていたが。

やがてカウンターの中から1枚の紙を取り出し矢継ぎ早に質問をする。

「登録するので必要事項を教えて?まず名前は?」

「デミオ」

「クラスは?モンクかしら?」

デミオをチラリと見る。

登録に来た大抵の冒険者は自分のクラスを言い当てられてびっくりする。

エマは驚いた顔を見るのが大好きだった。


デミオはちょっときょとんとしていた。

がうなずいた。

エマは満足だった。

今日はちょっと難しかったけどこれを当てられるのは私くらいのものよ。うふふ

「冒険者の登録はしている?」

先に冒険者の登録をしていなければならなかったのだろうか?

デミオはゆっくりと首を振る。

エマは大きくうなずく。

説明の間も先ほどの申請用紙になにやら書き込んでいる。


「詳しい説明が聞きたいなら銅貨5枚」

「注意点だけなら無料よどうする?」

デミオはなるべく色々な情報がほしかった。

迷わず「詳しいほうで」口真似をしながら応える。

自然に見えただろうか?

エマはデミオに対する評価を上げた。

この職業における情報は大切だ。

死に急ぐやつほど情報を重視しない。


エマは早口で説明を行う。

「エイブルにはハンター協会、冒険者組合、マジックギルドがあるわ」

「ハンター協会はエイブルの議会が運営していて」

「冒険者組合は依頼の報酬の3割をピンはねして運営しているわ」

「マジックギルドは魔法使い達のコミュニティね」

デミオをチラリと見る。


「すまないもう少しゆっくり」

エマは今度はゆっくり目に話し始める。

「獲物の換金レートはそこに張り出してあるわ」

入り口の壁を指差す。

「デザートタイガー 牙2本 銀2枚」と表示が見えた。

「時々サービスモンスターがいるのよ」

「今月はコボルトの角」

「換金レートが高いからお勧めよ」

デミオをチラリと見る。


デミオは真剣に聞いているようだ。

「ハンター協会は討伐モンスターの懸賞金を換金するだけでなく」

「情報提供や装備の斡旋もおこなっているのよ」

「もちろん有料だけど」

「装備の品質は保障するわよ」

「なんて言ったってこの私の監修だからね」

エマはニコリと笑う。


「次に注意点ね」

「当然ながらハンター協会に迷惑が掛かるような行為は禁止よ」

「町の役人とのトラブルも禁止、酒はほどほどにしてね」

「ハンティングにおける事故は全て自己責任よ」

「後、ハンターに登録した人はこの町に有事があったときは強制的に戦闘義務があるわ」

「ハンターは首からこの標識を提げておいてね」

と言いながら。

数字の1を透かしてデザインされた標識を取り出す。

すばやく標章にデミオと彫刻する。

「最後に、もし死んだら連絡したい人はいるかしら?」

デミオは「いない」と短く応える。


冒険者は身寄りのいないものも多い。

特に不審な点はない。

「なにか質問はある?」

「モンク用の装備はあるか?」

「どんなものがほしいの?」

「銀貨1枚で武器と服、マントもあればうれしい」

「そうね・・・」

デミオをつま先から頭までなめまわす。

「武器はなにがいいかしら?」

デミオは返答に困った。

武器と言ったがモンクは何を使うのだろう?

ふと頭に浮かんだ言葉を発した。

「ハンマーを」

エマは倉庫の在庫を頭に描く

「そうねハンマーなら少し古いけどいいのがあったわ。ちょっと待って」

店の奥に入っていく。


左の壁に大きな地図と商業都市エイブルと書かれた町の見取り図があった。

どうやらここはアッザーム王国のようだ。

北の山脈にはイーラ帝国、南の海にスムリト共和国と書かれている。

しばらくするとエマが重そうな装備を抱えて現れた。


「これはウッドハンマー  銅貨 90枚はする品だけど 55枚よ」

「服よりこの皮のチョッキ 銅貨 15枚で動き安いし、防御もそこそこ」

「マントは旅人のマント  銅貨 15枚」

「皮の靴         銅貨 15枚」

「でぴったり銀貨1枚」

「あとお勧めはこのターバン 銅貨 10枚 頭を直射日光から守ってくれるわ」

「私が考案した巾着付きのロープ 今ならセット価格で銅貨 5枚よ」

「他には皮の手袋もあると便利 ほしいなら銅貨 15枚よ」


デミオは差し出された品を観察した。

ハンマーは丈夫な木の柄に重そうな金属のハンマーが付いている。

片方が平べったく片方が鋭くとがっている。

ぐらつきは無くしっかりとしているようだ。

他の品も丁寧な仕事で丈夫に作られている。

品質保証というのはあながち嘘ではない。


皮の靴は使い方が判らなかった。

エマを見ると足元に同じ靴を履いている。

なるほど足を守る服なのか。

ターバンは長い布切れでどうやるか判らない。

「全部もらおう」

デミオが応えるとエマはにっこりした。


「では残りの銅貨55枚は巾着に入れるわね」

と言って巾着に詰め込むと口をギュウと絞った。

デミオはチョッキを着てマントを羽織る。

しかし靴の紐に悪戦苦闘していた。

見かねたエマが

「だめだめそれでは直ぐ脱げちゃうわよ」

と言いながら器用に編み上げていく。

ターバンを頭の上に巻いてやり、腰にロープを結んでクルクルと回すと巾着で留めた。

エマの見立てた装備は、まるでデミオにあつらえた様にぴったりのサイズだった。

体にフィットして動きやすい。

皮の靴は初めて履いてみたが。

しっかりと足に固定され、歩くのには問題ないようだ。

自分のサイズに合う装備がこんなに簡単に揃うとは何という幸運だろう。


手袋をはめてウォーハンマーを持つと立派なモンクに見える。

エマは自分のコーディネートに満足した。

「他に聞きたいことがあるかしら」

「体を休めるところがあれば教えてほしい」

「そうね・・・この先の『夜の帳屋』がいいわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。