4.商業都市エイブル
少しわかり難いと思いますので、補足説明を入れることにします
貨幣価値
銅貨100枚 = 銀貨1枚
銀貨 20枚 = 金貨1枚
金貨 10枚 =白金貨1枚
スムリト共和国・・・南の海岸線一帯を占める海洋国。
豊富な海産資源で潤ってます。
イーラ帝国・・・・・北の山岳地帯にある。
豊富な地下資源により、武器や加工品を作る工業国です。
兵の武装は充実しています。
食料をスムリト共和国やアッザーム王国から輸入。
アッザーム王国・・・本話の舞台です。
国土の大半が砂漠です。
が中央に位置する利点を生かした貿易立国。
南方は広大な穀倉地帯となっており、比較的裕福です。
商業都市エイブルはこの王国随一の町です。
王都はこの都市の東に位置する。
王都からさらに東にずっと進むと海岸に出る。
海岸線に沿って小国があると言われています。
西は死の砂漠と恐れられ不明です。
モンスターの危険度は危険度EからSまであります。
危険度Eが一番弱いです。(+-表示あり)
ハンターのクラスはレベル1からレベル5(最強)までです。
ネックレス型の金属板に数字と名前を彫刻します。
冒険者のクラスはレザー、カッパー、シルバー、ゴールド、プラチナです。
それぞれの材質の丸いワッペンを胸に着けます。
表は登録した冒険者組合のデザイン、裏が名前です。
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突然まぶしい光があふれる。
デミオリクスは空中に放り出された。
熱い砂が視界を埋める。
頭が砂の山に埋まった。
強い衝撃がガツンと顔に感じられた。
が幸いやわらかい砂のお陰で怪我は無いようだ。
あわてて両手で掻き分け抜け出す。
周りは果て無き砂。
上空に太陽がぎらぎらと輝いている。
口の中がじゃりじゃりとする。
がひとまず生き残れた。
賭けに勝ったといえるだろう。
照りつける強い光に顔をしかめる。
強い光に弱いのは種族の弱点だ。
他の悪魔ほどではないがデミオリクスも軽い頭痛を感じる。
日差しをさけるものは見当たらない。
我慢するしかあるまい。
図鑑で見た砂漠というものだと思い当たった。
50度にもなる日差しが容赦なく照りつける。
がデミオリクスにダメージは感じられない。
幸い魔力は半分以上残っている。
追っ手がかかるかもしれない。
この場に長く留まるのは良策とは言えないだろう。
どちらを見ても風景に差がないようだ。
真っ直ぐ進むしかあるまい。
俺は自由なのだ。
そう決心すると初めての自由をかみしめ力強く歩き始めた。
夕刻になるとようやく太陽が地平線に差し掛かかる。
日差しも幾分和らいだ。
いつの間にか魔力が残り少なくなっているのを感じた。
やはり強い日差しで僅かではあるが魔力を削られていたようだ。
夜は休憩すべきだろうか?
いやもしかしたら昼に休憩して夜に移動するのが正しいのかもしれない。
日差しを避けられる場所があれば・・・
などと思いながら砂の山を登っていく。
突如、視界の隅に白い影が見えた。
20メートル右前方に2メートルはありそうな大型の獣。
こちらを見ながら近寄ってくる。
デザートタイガーだ。
砂漠地帯にいる大型の野獣。
図鑑では性格は獰猛だが危険は少ないと書いてあったはずだ。
しかし音もなく近づき獲物を鋭い爪でしとめる。
砂漠のハンターだ。
危険でないはずがないだろうと軽い突込みをいれたくなる。
逃げれそうもなかった。
おそらくデザートタイガーの獲物は自分だろう。
立派な白いふさふさの尾が上空に向かって伸びていた。
前足からは爪がちらりと見えている。
頭を下げた低い姿勢でじりじりと近づいてくる。
戦うしかない。
デザートタイガーを睨み、右手に集中する。
「スチールスキン」
次は「パワーアシスト」だ。
その瞬間いきなり20メートルの距離をダッシュしてきた。
すごい加速力だ。
間に合うか?
デザートタイガーの前足を掻い潜る。
右手を大きく開けたデザートタイガーの口めがけて突き出す。
「ピアースネイル」
鋭い牙が右手を引き裂くのを感じた。
かまわず夢中で指先に魔力のありったけを込める。
デザートタイガーの400Kg以上もある体重と加速力。
突進を受け止めた右手の肩とひじが悲鳴を上げた。
踏ん張った足は砂の上を滑っていく。
押し倒されたら勝機はない。
左手を首の後ろに回してタテガミを掴む。
腰を落として体勢を安定させる。
5メートル近く押し込まれたところで正面に向き合う形で地面に崩れ落ちた。
やわらかい喉につき立てた指先から生暖かい血があふれている。
この状態では「ピアースネイル」の効果はない。
がもう一度突きができるとは思えない。
先ほどはチラリとしか見えてなかった前足の爪。
3本のナイフのようにはっきりと見える。
この体勢はまずい。
やわらかい喉につきたてられ苦しそうに首を振った瞬間。
うまく背中に回ることができた。
接触した牙でざっくりと引き裂かれた右手が、無理な体勢に悲鳴をあげている。
しかしまだ右手の感覚はある。
魔力の残りは少ない。
デザートタイガーはローリングして逃げようとしている。
がこちらも体をひねる。
鋭い前足に当たったら致命傷だろう。
このままデザートタイガーの力が尽きるまで頑張れるとは思えない。
なにか方法はないのだろうか?
夢中考えた。
エイジスの教えがふと頭にひらめく。
「頭はクールに常に自分のやれる最善を考えるのです」
「アブソーブエナジー!」
デザートタイガーの体から突如力が抜けるのが判った。
レジストされたら死んでいたのはデミオリクスだっただろう。
今日はついている。
悪魔だから悪運か?
毛皮と骨だけになったデザートタイガーの抜け殻の下から這い出した。
デミオリクスは大きく肩で息を切らせている。
裂けた右手から血がどくどくと出ている。
焼きこてを当てられたような強烈な痛みだ。
しかし魔力はほぼ全開まで回復している。
右手を押さえながら魔力開放で治癒を試みる。
ゆっくりと血が止まり傷口がふさがっていった。
痛みが幾分やわらいだところで中止した。
魔力を残さなければならない。
デザートタイガーの血と肉がもたらした魔力はもう半分も残っていない。
太陽は完全に沈んであたりは薄暗くなっている。
デミオリクスのナイトビジョンが地平線の先に建物らしき影を見つけた。
あそこなら太陽の日差しから身を守れるだろう。
デザートタイガーの毛皮は立派な毛並みをしている。
前足の爪を1本引き抜くとまるでナイフのようにとがっている。
首の柔らかそうな部分につきたてた。
力いっぱい開くとすっぽりと穴が開いた。
中身はなくなって骨格を作っていた骨がきれいに見える。
爪で少しずつ腹の方まで引き裂くと骨を引きづり出すことができた。
頭からすっぽりと被ると失った上着の代わりになる。
太陽の日差しを幾分和らげてくれそうだ。
はるか遠くに見える建物が星明かりに照らされてはっきりと見える。
夜のうちにあそこまでたどり着けるだろうか?
スレイマンは椅子に腰掛けながら、気だるい午後の街道をぼんやりと眺めていた。
まもなく夕暮れになる。
後1時間で交代だ。
夜警の者が来たら2人で城門を閉じて今日の仕事は終わりだ。
商業都市エイブル・・・この辺りでは最大の商業都市で、街道の要所にある。
毎日多くの商人のキャラバン隊が行き来する。
市場は活気にあふれ他国からの珍しい物産も並ぶ。
質・量ともに充実。
王侯貴族や大商人御用達の店も多いと聞く。
併せて比較的安い関税。
役人の質の良さ。
がこの都市の人気に拍車をかけていた。
スレイマンはこの都市の下級役人である警備兵だ。
都市が生み出す富は莫大。
都市はスレイマンのような役人を大勢雇っていた。
都市の中心は砂漠の貴重な水資源である湖。
取り囲むように高い城壁がそびえたっている。
城門は東と西の2つ。
頑丈な門を閉じれば完全な要塞と化す。
ちょっとやそっとの軍勢でも簡単に落とすことはできない。
警備兵は専従的にこの都市を守る兵士。
危険な魔物や野党がこの都市に入らないように城門を閉めるのが役割である。
仕事がきつくなく、給金もまずまず。
規律は厳しいが待遇がよい役人はこの都市の憧れの職業の1つなのだ。
街道は比較的安全だが、夜になるとスケルトンやゾンビなどの魔物も出る。
商人は夜は安全な地にキャンプを張って休むのが普通だ。
街道沿いのキャンプ地には水の蓄えもある。
警備は雇った冒険者達がやってくれる。
野党は怖いが、エイブルは優秀な人材が多い。
高額だが依頼を出せばあっという間に一掃してくれるだろう。
スレイマンは今日はもう商隊は来ないだろうと考えた。
椅子から立ち上がると城門の周りに異常がないかチェックすることにした。
ふとサボテンの並木の間から白い頭が見える。
デザートタイガーだ。
緊張が走った。
デザートタイガーは砂漠の野獣で危険度Bクラスだ。
1人では倒せない。
白い毛並みは砂漠に同化している。
しかしこんなに近くまで気づかなかったとは。
近くでの目撃例はない。
がテリトリーを探して迷い込んだのだろうか?
群れで活動はしない。
だが自分のテリトリー内では何でも襲う獰猛な野獣だ。
たまにテリトリー争いに敗れると迷いタイガーと呼ばれる厄介な存在になる。
直ぐに城門を閉めるべきだ。
又は鐘をならすべきだろう。
腰から剣をすらり抜く。
とても自然で鍛錬された動きだ。
デザートタイガーの動きに注意を払いつつ城門に手を掛けた。
ゆっくりとこちらに向かってくる。
だがどうも様子がおかしい。
2本足で歩いているようにしか見えない。
腹部から足が生えている。
後ろ足と尻尾を引きずりこちらに歩いてくる。
人間だ。
手に握る剣の力を幾分抜いた。
「止まれ。ハンターか?」
デザートタイガーの頭がずれて、褐色の肌をした若い男の顔が見えた。
見たことない顔だ。
この町の者ではないだろう。
男はじっとこちらを見ている。
「でかいのを仕留めたな」
じっと見つめるだけで男は何も語らない。
「許可証がなければ町には入れないぞ」
デザートタイガーの毛皮は高く売れる。
男の着ているデザートタイガーは2メートルはありそうだ。
綺麗な毛並みをしていた。
どうやって仕留めたのか判らない。
が状態はよさそうだ。
金貨2枚。
スレイマンはそう予想した。
妻が床の敷物がほしいと言っていたのを思い出していた。
どこか遠方からの流れ者だろう。
が危険はなさそうだ。
通しても問題ないだろう。
少し考えていたスレイマンは
「町に入りたいならその毛皮を置いていけ」
といいながら剣を鞘に収めた。
デミオリクスは建物の全容が見える位置までやっとたどり着いていた。
ここまで3日かかっている。
夜間はゾンビ達を回避したため遠回りしなければならなかったのだ。
「思ったより遠いものだな」
とつぶやいた。
昼前の太陽はぎらぎらと照り付ける
がデザートタイガーの毛皮はデミオリクスを守ってくれた。
デザートタイガーの皮は重かった。
できるだけ軽くするため牙と爪以外骨を捨てた。
頭蓋骨をすっぽりとはずし。
顎骨だけが残っている。
牙の間から覗くようすると強い太陽の光を幾分和らげることができた。
思いのほかいい拾い物だ。
この2日小さな日陰を見つけ1回休憩したがずっと歩いてきた。
魔族は魔力が尽きるまで疲れることはない。
魔力は時間と共に回復する。
このぶんならずっと活動できるだろう。
空に大きな鳥が飛んでいる。
自分も飛べたらいいのに。
頭を振りながらそんなことを考えていた。
建物と思ったものは大きな壁だった。
人間界の貴族の居城か?
壁をよじ登れるだろうか?
夕刻が近づくころになってやっと壁のそばまで来れた。
幸い入り口があるようだ。
入り口に1人の人間がいる。
いきなり腰から剣をスラリと抜いて何かを叫んだ。
デミオリクスはデザートタイガーの頭を脱ぐと男の視線をロックした。
「イビルアイ」
通常この能力は相手の視線を捕らえる。
意思の弱い相手を己の意のままに操ることのできる業だ。
上級悪魔なら誰でもできる。
がデミオリクスはそんなことはできない。
しかし、言葉の壁を越えてこちらの意思を伝えたり。
相手の言葉を理解したりできる。
デミオリクスは図書館で人間界の言葉を学んでいる。
しかし文字は読めるようになっても発音が良くわからなかった。
オルソロスであれば発音も知っていたかもしれない。
が聞くことはできなかったのだ。
「でかいのを仕留めたな」
「許可証がなければ町には入れないぞ」
どうやらこの町の門番のようだ。
できればトラブルになりたくない。
走って逃げるか?
夜になったら戻ってくることもできるがどうするか?
なにやら値踏みしていた男が
「町に入りたいならその毛皮を置いていけ」
といいながら剣を鞘に収めるのが見えた。
どうやら入れてくれるらしい。
しかし毛皮を手放すのは少々惜しい気がする。
この2日間この毛皮で生きながらえてきたのだ。
まもなく夕刻だから直ぐに魔力が枯渇することはないだろうが。
どうすべきか?
「許可証がなければ町には入れない」
と言っていた。
すると便宜を図ってくれると言う事か。
ならば申し出に応じるべきだろう。
デミオリクスは決心した。
デザートタイガーの皮を手早く脱ぐと男に差し出した。
男はニタリと笑うと
「ようこそエイブルへ」
と言って、デミオリクスをじっと見る。
スレイマンはデミオリクスと手に入れたデザートタイガーの皮をじっくりと観察する。
デミオリクスの右半身は血染めで殆ど裸だ。
なぜかスボンが焼けこげている。
が激しい戦闘の結果なのだろう。
1人で倒したとは思えない。
が案外実力者なのかもしれない。
デザートタイガーは高額の懸賞金がでる。
爪や牙をほしがる者もいる。
一攫千金を狙う専門のハンターもいるくらいだ。
しかし激しい戦闘で大抵毛皮には無数の傷跡が残ることになる。
このような綺麗な毛皮を見たことはない。
遠方で罠を使ったハンターもいる。
と聞いたことがある。
この男もそうなのだろうか?
しかし、見るところ装備の全てを失ったようだ。
今のこの男の全財産がこの毛皮なのだろう。
スレイマンは決して悪徳役人ではない。
自分の責任範囲で目こぼしをすることは慣例的に許されている。
だが厳格な隊長の耳に入るとちょっと厄介なことになる。
ほどほどでうまく立ち回ることが大切なのだ。
スレイマンは剣の柄で牙と爪をたたき折った。
デミオリクスに向かって放り投げながら言った。
「ハンター協会に持っていけば酒代くらいにはなるだろう」
「この先の通り2つ目を左だ」
デミオリクスは足元に転がっている爪と牙を拾う。
夕暮れの通りを見た。




