23.それぞれの修行
忙しくなってきましたので投稿が遅くなってます。
読んで頂いている皆様申し訳ありません。
エドガーは宿に戻って来た。
宿の状態と宿泊者のチェックをすばやくこなす。
アインとデミオは先に部屋で休んでいるようだ。
アインは才能あふれる若者だ。
最初は仕方なしに教えることにしたが、彼の予想は良いほうに外れたようだ。
あれだけの闘気があやつれるなら、次の段階を教えてもいいかもしれない。
そしてデミオ、彼の能力にエドガーは興味がわいた。
アインにデミオを連れてくるように指示する。
アインは今度は何の話だろうと、緊張した趣でデミオと降りてくる。
エドガー「デミオ、お前の流派はなんだ?」
デミオ 「分からない」
エドガー「師匠の名は?」
デミオが少し考えながら「エイジス」
エドガーはその名前に記憶が無かった。
やはり自分の知らない流派だろうか?
エドガー「師匠は達人か?」
デミオ 「分からない。でもとてつもなく強い」
エドガー「何歳くらいだ」
デミオ 「多分100歳を超えている」
エドガーは合点がいった。
なるほどデミオが未完なのは師匠が他界したせいだ。
おそらく触りしか教わってないだろう。
エドガー「錬気をやってみろ」
デミオが集中して錬気を始める。
スムーズな気の流れだ。
エドガーは気の量はさほどではない。
しかし錬度はかなり進んでいる。
才能有りと見た。
エドガー「わしの流派は人智流だ」
「習ってみたいか?」
デミオが頷く。
エドガー「ではわしを師匠とあがめろ」
「30回頭を垂れるのだ」
デミオは素直に従う。
エドガーは納得すると、アインとデミオに錬気を行わせ修行の状況を確認した。
エドガー「そのまま。続けて。体全体を気で覆うのだ」
アインの体にうっすらと気の膜が構成されていく。
デミオの体から気が発散されている。
エドガー「デミオそうではない。発散したらあっという間に錬気がなくなるぞ」
「あくまで気の循環だ。気の流れを作るのだ」
デミオが試行錯誤の結果やっと出来るようになってきたのをみてエドガーは安心した。
エドガー「そのまま続けろ。最低1時間はキープできるようになれ」
アインも苦しげだとても1時間も持ちそうに無い。
5分かからずに2人ともダウンした。
エドガー「だめだ。その程度では話にならん。練習しておけ」
と言って立ち去った。
デミオはなぜエドガーがモンク修行をつけてくれる気になったのか訳が分からなかった。
今日は訳の分からないことが起き過ぎる。
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次の日アインはまたエドガーに呼ばれた。
デミオを連れてエドガーのところに行く。
エドガーがこんなに集中して教えてくれるなんてどういうことだろう。
エドガーはいつもの白い道着を着て立っている。
テーブルの上に素朴な杯が3個置かれている。
並々と水が張られているようだ。
エドガーがいきなり話し始める。
「お前らは歩くのが下手だ」
アインは何を言っているのか分からない。
歩くのに早い遅いはあっても、上手も下手も無い。
アインもデミオも普通に歩ける。
エドガーが杯を頭の上に載せる。
「こぼさずに付いてこい」
エドガーがさっさと歩いていく。
アインも杯を頭の上に載せて歩こうとした。
杯から水がこぼれて頭にかかる。
意外と難しい。
というよりこれは大道芸に近いだろう。
エドガーの杯は自分と同じものだ。
エドガーの技術がすごいというのは分かる。
がモンクの修行とは少し違うと感じる。
アイン「ちょっとまってください。水が・・・」
エドガーが振り向いてアインを見て。
「やっぱり歩くのが下手だ。いや歩く前の話か」
「いいからそのまま来い」
アインが慎重に歩く。
杯がちゃぷちゃぷと言うのがアインにも分かる。
額から汗が流れ落ちた。
デミオを見るとデミオも同じ状態だ。
2人してへっぴり腰で付いていく。
しばらく行くとエドガーが振り返り。
「どうしたそんなへっぴり腰で。しゃんと歩け。。わはは・・っは」
と大笑いする。
アインは苦笑する。
そんなこと言われても水がこぼれそうでまともに歩けない。
エドガーを見ると頭が動いていない。
地面を滑るように歩いている。
いったいどんな魔術だ。
エドガーはどんどん先に進んで木の根元で休んでいた。
アイン達はやっとの思いでたどりつく。
エドガー「先に宿に帰っているぞ。こぼさずに来いよ」
と言ってアインとデミオの杯に水を継ぎ足した。
アインはちくしょ~と内心思ったが素直に歩き出す。
小一時間してやっと宿に戻ったアイン達を尻目に、エドガーはお茶をすすって。
「やっと来たか。待ちくたびれた」
「遅いからやり直しだ。もう1回行って来い」
と言ってまたアイン達の杯に水を継ぎ足すとさっさと奥に行ってしまった。
アインとデミオはまた木の元まで歩き出す。
アイン「デミオ、頭にこないかい?」
デミオがきょとんとした顔で「どうして?結構面白いよ」
アインが苦笑しながら。
「デミオに勝てる気がしないよ」
「君が素振りをひたすらやれた理由が分かった。君は天才だ」
デミオ「何言っているんだい?天才はアインだろ。僕はついていくのがやっとだよ」
アイン「どうせなら楽しむか?君を見習うよ」
デミオ「人間っていろんなこと考えるね。感心するよ」
「僕には考えもつかないや」
アイン「悪魔はどうやって強くなるんだい」
デミオ「普通は何もしなくても強くなるよ。最初からできるから」
「君達が呼吸するのに何か考える?それと同じさ」
「僕の様に何も出来ない悪魔は特別なんだ」
アイン「何もしなくても強くなれるなんてすばらしいね」
デミオ「僕は修行も好きだよ。もしかしたら今日出来なくても明日出来るかもしれないじゃないか?」
アイン「やっぱり君に勝てる気がしなくなってきたよ」
愉快に話をしているうちに木の根元に着いてしまった。
そのまま引き返す。
アイン「やっぱり君と2人で修行でよかったよ」
「僕1人ではいやになっていただろうね」
デミオ「僕には、なんでエドガーが修行をつけてくれるのか分からないよ」
「僕は悪魔だって言ったのに。次の日から急にどういうことだろう?」
アイン「その辺の事情はよくわからないね」
「でもエドガーは前から君が気になっていたのかもしれない」
「疑いも晴れて弟子に出来るようになったと言う事かもね」
デミオはそんなに単純なことでいいのだろうかと考え込んだ。
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マイクはアイン達が出て行くと1人で修行をしていた。
この一ヶ月で大分魔力が増強している。
アインが教えてくれた錬気も効率のいい方法だと気がついていた。
いつもの修行と平行して行うとより早く成長できるようだ。
この分ならもうじきラージヒールが使えるかもしれない。
そうなれば重傷になったアイン達を救うことが出来る。
突然ドアがノックされた。
アイン達がノックするはずはない。
いったい誰だろう。
ドアを開けると、女性が一人立っていた。
どこかで見たことがある。
ユリーシカ「あらアインは居ないのね?残念」
「マイク君だったかしら?アインがお世話になっているみたいね」
マイク「あ。先日ギルドから出てきた人?」
「まさかアインのお母さん?」
マイクはユリーシカが腕利きの魔法使いだと聞いたことがあった。
ユリーシカがにっこりと微笑みながら
「先日は奇遇だったわね。ところでアインはどこに行ったのかしら?」
マイク「エドガーさんと修行中だと思うよ」
ユリーシカ「では仕方ないわね。出直そうかしら?」
「アインは元気かしら?」
マイク「元気も元気だよ」
「どんどん強くなるから僕は取り残されている気分になるほどにね」
ユリーシカ「あら貴方は貴重なクレリックでしょう?貴方の強さは殴り合いの強さではないわよ」
マイク「でも僕も戦力になりたい。なにか方法ないかな?」
ユリーシカ「それでマジックギルドをうろうろしていたのね」
「でもマジックギルドには魔法使いしか入れないわ」
「貴方なら魔法を使えるようになるかもしれないけど」
「魔法に魔力を使ったら本当に必要な時にヒールが使えないかもしれないのよ?」
「そうなったらきっと後悔すると思うの」
マイクはなるほどと思った。
「でも僕は武器の使い方が旨くなくて。武器での戦闘は全くだめなんだ」
ユリーシカは少し考えて言った。
「貴方はどんな魔法使いが優れていると思う」
マイク「それはファイヤーボールやライトニングをパンバン撃てるやつに決まっているよ」
ユリーシカ「そうねそういうのも強いわね」
「でも私はどちらも得意じゃないのよ。戦闘時に唱えたことも無いわ」
マイクがびっくりする。
「貴方は高名な魔法使いだと聞いてます。そんなわけ無いですよ」
ユリーシカ「的確なサポートをするのが魔法使い。サポートできるなら魔法でなくてもいい」
マイクはいっているいる意味が分からない。魔法を使わないなら魔法使いじゃない。
ユリーシカ「例えば大声で威嚇したり。石をぶつけたらどうなる?」
「僅かな隙でも致命的なときもあるのよ」
マイクにもやっと言っている意味が分かってきた。
ユリーシカ「だから簡単に言えば相手の嫌がることをやる。落とし穴。粘着蔓。」
「本当に優秀な魔法使いは自由な発想と的確な判断力で戦うのよ」
ユリーシカ「貴方のホーリーだって目くらまし位にはなるわ」
「今ある力の使い方を考えた方がいいと思うの」
「それでも教えてほしいなら私を訪ねて来なさい。簡単なものなら教えるわ」
と言い残して帰っていった。
後に残されたマイクはじっくりと今の話を考えてみた。
デミオが居るからホーリーを使うのは危険すぎる。
万が一デミオに当たったら取り返しがつかない。
他の方法を考えなければならないだろう。
自分が使える武器は何が有るだろうか?
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杯の修行を2週間ほど行うと、アインもデミオも上手に歩けるようになった。
以前のようにおっかなびっくりではない。
エドガーほどではないが、スムーズに足を運び滑るように地面を歩いていく。
杯の水もこぼれることは無くなった。
エドガーが成果を見て頷く。
エドガーがアイン達についてくる様に言う。
今度は何なのだろうか?
3人は外に出て裏庭に回った。
やがて杭が大量に立っている奥まった路地にたどり着く。
エドガーが話し始める。
「人間というのは実は自分のことが良く分かっていない」
「自分の体の大きさが分かっていないのだ」
「だから現在の体の大きさをしっかりと身に付けろ」
杭の間隔は体が十分に入る。
「すばやくよけて壁まで走れ」
と言うとエドガーが滑るように走っていく。
杭の間をするすると抜けると壁にタッチした。
簡単だ。誰でもできるだろう。
アインはそう思って後に続く。
杭に近づくと意外と密集しているようだ。
正面の杭を右に回避。
直ぐ右に次の杭が立っている。
あわてて左に回避。
四方を杭に阻まれている。
あわてて立ち止まった。
ゆっくり歩けば何のことは無い。
走ると意外とむずかしい。
エドガーが「何している走れ」と怒鳴る。
アインは仕方なく走ろうとして杭に引っかかった。
良く見ると杭に釘が刺さっている。
鎧が引っかかったのだ。
思わず尻餅をつく。
鎧のお陰で怪我は無い。
杭全体に10本程度の釘が刺さっている。
厄介な位置に釘が刺さっているようだ。
アインは立ち上がると今度は比較的ゆっくり進んで壁までたどり着いた。
エドガー「失格だ。遅すぎる。30秒以内に来い」
アインができるわけないという顔をする。
エドガーがデミオに手を振る。
デミオが真剣な顔でスタートした。
意外とスムーズに回避してくる。
デミオうまいとアインは思った。
しかし回避の際に大きく体を捻ると杭に接触してしまう。
あわてて体勢を戻すと反対の杭にぶつかる。
エドガー「走るのが下手だからそうなる。常に一定の体勢で走れ」
と怒鳴る。
アインはそんな無茶なと苦笑いをする。
デミオが壁にたどり着いた。
アインよりかなり早いが1分程度だ。
エドガー「この程度が出来んようではこの先は無理だ」
「練習しておけ」
と言って来た時と同じく杭をすいすいと避けていく。
見事な体捌きだ。
体勢を崩すことなく。
重心が安定している。
細かいステップが微妙な動きを支えている。
アインはなるほどと思った。
あのステップを真似ないとだめだ。
エドガーはアイン達のためにこの杭を立ててくれた。
これだけの杭を立てるのは大変だったはずだ。
アインはデミオとステップの練習をすることにした。
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エドガーは次の日裏庭を覗くとアインとデミオがステップの練習をしているのを見た。
なるほどそう来たか。
闇雲に練習するのも一つの手だが。
わしの動きを見て直ぐに自分との差を見つけてしまう。
やはり才能だ。
さすがビクセンの血というところだろう。
デミオは既にある程度身についているようだ。
確かにステップさえ出来れば、クリアは近いだろう。
しかしこの訓練はこれだけではない。
この先の成長が楽しみなエドガーだった。
1週間ほどするとアインは杭の位置関係を把握した。
どの杭を回避すればいいかしっかりと頭に入っている。
エドガーが提示した30秒にもう直ぐでとどくだろう。
細かいステップと重心移動で体勢を崩さずに回避運動を行える。
エドガー「では試験だ。うまく走れるかやってみろ」
と言って今までと違う場所に連れて来た。
アインがやられたという顔をする。
杭の位置関係を把握しても始めての場所では役に立たない。
しかも心無し杭も密集している気がする。
エドガーが行けと指示する。
アインが走り始めた。
最初の3本まではうまく回避できたが。
やはり初めてではうまく行かない。
デミオもやってみたが途中までだった。
エドガー「お前ら何の練習をしていたんだ?」
アイン「場所を代えるなんてずるいですよ」
エドガー「戦場に2回目の場所があると思うか?」
アインがそんな無茶苦茶なと思うが、エドガーの言うとおりだ。
エドガー「錬気で自分の体を覆えと最初に言っただろう」
デミオは、はっと思った。
エドガー「鎧も武器も自分の体にするのだ」
「錬気で自分の体を作れ」
すごいことを考えるものだ。
こんな使い方は考えもしなかった。
要するに薄い肉体で、自分の感覚域を広げる。
うまく行けば敵の攻撃を寸前でかわし、確実に攻撃を当てれる。
そのための魔力は出来るだけ軽減しなければ長時間運用できないだろう。
歩く練習はバランスを崩さず移動する技術。
すばやくどこにでも移動できなければ。
感知できても回避できないだろう。
しかし頭で分かっても実践となると難しい。
大体錬気で体を覆いながら走るなんてまだ無理だ。
最初の修行に戻ったということか?
練習しておけと言い残して去って行くエドガーの後ろ姿を見送るデミオだった。




