19.疑惑と尾行
デミオは昼間は錬気の修行。
夜は剣の修行をやっていた。
3日に1回スケルトン狩りを行う。
アイン達との狩りは10日に1回程度だ。
3日ほどの計画で集中して狩りを行う。
デミオも強くなったと自覚しているが、アインの剣の冴えは以前より増しており。
実力はかえって開いたと感じる。
アインが自分をチームに入れ続ける理由がデミオには未だに理解できなかった。
さっさとレベル3になってレベル3以上の強者を入れたほうがいいはずだ。
アインが何を考えているのか分からない。
ともあれデミオにとっても理解のあるアイン達と共にするのは心地いい。
自分から出て行くつもりも無かった。
魔界での魔力の修行はいっこうに進展がなかったが、錬気の修行は思いのほかうまく行く。
まさしく自分のために準備してくれたような技だ。
アインのように急激に強くなることは無いが、効果がじりじりと出ていると感じてきた。
充実感があるのでついやりすぎてしまう感がある。
アインにも休憩なしで修行できる人間はいないから注意しろと言われている。
この間も最初は気づかなかったけど、木の陰からデミオをじっと見ている人がいた。
見られて困ることは無いからそのままやっていたけど。
気づいたら結構長い時間、素振りをやっていたことに気づいてあわてて宿に戻った。
スケルトン狩りでも帰りに気づいたが、丘の上からデミオを見ている人がいた。
もしかしたらスケルトン狩りしようとしたら自分がいたので順番待ちしていたのかもしれない。
知らないであらかた狩ってしまった。
少し残しておくべきだったかもしれない。
今度遇ったら挨拶しておくべきだろうか?
アイン達と狩りに行くときは鎧だが普段は皮のチョッキを着ている。
動きやすく、着慣れているので便利だ。
鎧も改善されてからはかなり使いやすい。
どちらを選択しても動きには差は無い。
単に皮のチョッキが気に入っているだけともいえる。
アインに錬気のやり方を習ってから調子がいい。
以前よりスムーズに体が動く。
錬気で蓄積した魔力を運動エネルギーに変換する。
すると体の切れが増し、その結果防御と攻撃が増すのだ。
魔力のこんな使い方をするなんて自分では考え付かなかっただろう。
錬気はまだまだ奥がありそうだ。
自分はまだその入口に立っただけなのだ。
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ビクセンはエドガーの報告書を読んでいた。
アインに対する教示は失敗に終わったようだ。
少し手順を間違ったかもしれない。
結果からすると悪手だったと言える。
アインを説得するのは難しくなった。
エドガーはアインがデミオを仲間として受け入れており。
信頼関係を築いているので無理に引き離すと暴走しかねないと忠告してきた。
ハンターにおける信頼関係の構築はレベルアップに不可欠な要素だ。
レベル3以上のチームなら最後まで同じチームとして活動するのが一般的だ。
優秀な冒険者チームならなおさらこの傾向となる。
アインはデミオが暗殺者ではないと否定したそうだ。
しかしビクセンはこれを素直に受け入れるほどお人よしでは無かった。
ビクセンの勘はデミオに対し警鐘を鳴らし続けている。
アインにばれないように監視を続けるしかないだろう。
まったくアインはあんなにそばに居ながら自分の危険にも気づけんとは。
つくづく不出来な息子だ。
お陰で余計な苦労をする。
あのような甘いやつはわしの側で使ってやるしかない。
冒険者になるなど10年早いぞ。
いずれにしろ戴冠式までに何らかの動きがあるはずだ。
しかし今回自分がターゲットだと言うのは幸運だ。
自分は簡単にやられるほど甘くない。
事情を知らずに受けてしまったか。
そうであれば三流ということになる。
こちらは先手を取った。
ビクセンは出発まで執務室から動くつもりは無い。
寝るときも鎧を着込んでいる。
執務室の守りは万全だ。
ビクセンの妻ユリーシカ・ドレアーは珍しいトラップ型魔法使いだ。
ビクセンは彼女こそ最高の魔法使いだと確信していた。
彼女の魔法は儀式魔法であり1日に一回しか使えない。
直接の戦闘ではまったく無力だ。
しかし十分な時間が有るなら話は別だ。
その汎用性と応用力で最悪の魔法トラップを作ってみせる。
執務室の天井には彼女の傑作トラップが仕込んである。
忍び込んだら生きては出れないだろう。
カリムのチームはデミオにべったりと張り付いて決して逃がさないだろう。
どんな手でも自分を殺すのは無理だろう。
動けばたちどころに捕まえてみせる。
捕まえたら問答無用だ。
必ず黒幕を吐かせてやる。
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カリムはデミオに張り付いて5日になる。
昼間は殆ど動きがないとの情報だったので配下に任せたが、夜間はカリム自身が追跡を行った。
この間、スケルトン狩りに1回、ジャイアントバット狩りに1回出かけている。
ジャイアントバットはアイン達と一緒だったが、スケルトンは本当に1人だった。
まるでピクニックに行くような風に皮のチョッキ1枚でスケルトン狩りに行くとは驚きだった。
よほどの自信があるのだろう。
新月が近く見通しはかなり悪い。
夜目の効くカリムでもスケルトンなのかサボテンか判断できない。
デミオは何の苦も無くすいすいと歩いていき、やがて暗がりに消えていった。
驚くべきことだ闇に対する恐怖がまったく無いとみえる。
やがてカリムにだけ聞える戦闘音が響いてくる。
明らかにスケルトンと戦闘している。
しばらくすると暗がりからデミオだけが出てきた。
まったく怪我をしていないようだ。
来たときと変わらない足取りで帰っていく。
一度こちらを向いたように見えた。
しかしこの距離だ動かなければサボテンと区別できないだろう。
じっとしてやり過ごす。
カリムもデミオの力量を測りかねていた。
確かに見かけはせいぜいレベル2のモンクだ。
しかしやっていることが常識を超えている。
わざと力を隠しているのか?
自分にあのような戦闘が行えるだろうか?
やるまでも無く無理だと分かっている。
議長に報告しておくべきだろう。
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議長はカリムの報告書を読んでいた。
スケルトンに対する戦闘力はアインも言っていたことだ。
ビクセン自身なら可能かどうかなら可能と答える。
スケルトンが光に惹かれる習性はビクセンも知っていた。
だからデミオと同じ戦法を取ったこともある。
暗闇であっても、そんなに苦労は無い。
恐怖のオーラがスケルトンの武器でもあるし弱点でもあるのだ。
恐怖オーラを感じたら1歩踏み込んで剣を凪ぐとスケルトンを倒せる。
そうやってかつてはビクセンもスケルトン狩りを得意としていたのだ。
ではなぜ兵士にその戦法を取らせないか。
その恐怖に誰も耐え切れないのだ。
頭で理解しても実践では恐怖で体が動かなくなる。
その一瞬の躊躇で命を落とすことになる。
だからカンデラの壁を作って全員で押し切る今の戦法が採用されているのだ。
デミオはビクセンが長い鍛錬の結果身につけた位置に居ることになる。
才能と言っていたが、自分の配下なら色々と使える男と言えるだろう。
いずれにしろ自分の前に出てきたらその技量を存分に発揮してくるだろう。
20年前に失った闘争心が蘇る。
心が躍るようだ。
ビクセンはベッドの上で高ぶる血を押さえられなくなっていた。




