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11.コボルトキング掃討作戦

小鳥の鳴き声でアインは目が覚めた。

デミオはベッドに横になっている。

まだ朝早い時間だが、もう一度寝る気はしない。

少し興奮気味なのだろうか?

デミオは起きているだろうと思った。


アイン「昨日は練習できたかい?」


デミオ「ええ。北側に適当な空き地があったよ」

   「まだうまくできないけど。今日は頑張るよ」


アイン「期待しているよ」

   「でも無理はしないくていい」

   「危ないと思ったら逃げるんだ」

デミオはうなづく。


階段を降りて1階のホールに行くとまだ誰も朝食に来ていなかった。

いつも通り大盛りのボールが運ばれてくる。

しばらくすると、2組のパーティが降りてきた。

実力派のチームばかりで、全員今日の参加チームのようだ。

アイン達は一足先に森の入口に出発することにした。


森の入口に着くとデミオがハンマーの素振りを始める。

見ていたアインが

    「腕の力に頼りすぎだ」

    「ハンマーの重さで振るんだ」

    「後、足で移動するんじゃない」

    「腰を移動させるのさ」

デミオは理解できず首をかしげている。


アイン「直ぐにはできないよ」

   「少しずつ自分の身に染み込ませるイメージさ」

   「いずれできるようになるよ」


デミオ「どれくらいでできるようになるんだい?」


アイン「才能によりけりさ」

   「数日でできるかもしれないし、数年かもしれない」


デミオ「数年!」

   「人間はそんなに練習するのかい?」


アインは当たり前だと言う顔。

   「数日でできる人は一部の天才だけだよ」

   「普通は数年」

   「悪魔は練習しないのかい?」


デミオ「その理論で行くと僕以外は何でもできる天才ってところだ」

   「まあ元々できないことはやらないしね」


程なくして、他のチームも到着する。

アインがそれぞれに挨拶する。

1時間ほど待っているとキース達も到着した。

キースが先頭で他の3名が続いてやってくる。

キースは余裕の笑みを浮かべているが、後ろの3名の顔は強張っている。

アインは眉をひそめた。

おかしい、キースはもう直ぐレベル3になるはずだ。


アイン「キース作戦は昨日のとおりだ」

   「赤と黒を優先でやってほしい」

   「僕らはノーマルのコボルトには負けない」


キース「わかっているよ」と一言だけだった。


程なくガイエンが主力チームを率いてやってきた。

筋骨たくましい大柄の男で、野生的な雰囲気だ。

プレートアーマーに、両手持ちのウォーアックスを肩に担いでいる。

ガイエン「俺達は洞窟まで真っ直ぐ進む」

    「露払いは任せた」

    「万が一、俺が撤退したら作戦失敗だ」

    「くたばる前に全力で逃げてくれ・・がはははっ」

と豪快に笑う。


アインはマイクとデミオにアイコンタクト。

アインが先頭を切って進む。

程なく、コボルトの群れを発見。

アインが突撃を開始する。

デミオも遅れず付いて行く。

キースは細かくチーム員に指示をしているようだ。

意外とマメなリーダなのかもしれない。


アインが3回ほど突撃を終えると、洞窟の前に到着した。

ガイエン達は立ち止まることなく洞窟の入っていく。

アインは洞窟の左に陣を構える。

右側では早くも戦闘中の音が聞える。

意外とコボルトの数が多い。

ここまでに赤と黒を2体ずつ倒している。

キースはしっかりと役割をこなしているようだ。


アイン「洞窟から出てくるやつもいるかもしれない」


デミオが了解の合図をだす。

30分ほどの戦闘を終えた。

洞窟からはだれも戻ってこない。

中は大分広いのかもしれない。

コボルトは最初の一団を倒した後はパッタリとでなくなった。

このまま行けば誰も怪我せずに終了だろう。


その時アインが木の陰にコボルトを発見した。

黒コボルトが2体。

アイン「キース」と言って指差す。

キースは既に弓を構えている。

キース「左をやる。お前達右を狙え」

後ろにいた3人がいっせいに動き出す。

アインは遅いと感じた。

だが下手に突撃すると射撃の邪魔になる。

ここは任せるべきだろう。


黒コボルトの後ろからコボルトの一団が走ってくる。

アインとデミオは武器を上段に構えながら迎え撃つ準備を行う。

数が多い。

しかし、アインに緊張は無かった。

次々とコボルトを倒す。

デミオはアインのサポートでアインの左側を固める。

最後の1匹を倒したところで奥の木がへし折れる音がした。

なにか大型の野獣がいるのか?

ドシン、ドシンとかなりの重量がこちらに向かってくる。

アインに緊張が走った。


「コボルトキングだ」

3メートル以上ある巨大な姿が見える。

思ったよりすばやい動きだ。

ばかな、洞窟の中ではなかったのか?

巨大な棍棒を振り回しまわりの木を薙ぎ倒す。


デミオはこの巨体では自分の武器は急所に当てられないと判断した。

倒すか木の上から攻撃しなくてはならない。

どちらも実現はむずかしいだろう。

キースのチームには魔法使いがいたはずだ。

彼なら有効な魔法があるかもしれない。

振り返りキースを見る。

キースは弓を構えて既に狙いをつけていた。

デミオ「キース魔法だ」

しかし、見るとキースの仲間は全員蜘蛛の子を散らすように逃げていっている。

残っているのはキースだけだ。


コボルトキングはもう目の前だ。

キースの矢がコボルトキングの左目に見事命中した。

キースは逃げていった仲間を見て舌打ちすると仲間を追いかけて行った。


アイン「距離が近すぎる」

   「戦うしかないいくぞ~!」

デミオはダッシュする。

左は見えてないはずだ。

コボルトキングの左に回りこむ。

コボルトキングは叫び声を挙げながら棍棒をむちゃくちゃに振り回している。

デミオは棍棒をかいくぐり左足の膝目がけてウッドハンマーを振り下ろした。

グシャ~

膝に強烈な一撃を受けてコボルトキングはバランスを崩す。

振り回したコボルトキングの左手がデミオを弾き飛ばす。

デミオは咄嗟で反応できなかった。

木に叩きつけられる。

意識が飛ぶ。


マイクがヒールを飛ばしてくれた。

ヒールによりダメージから回復していくのがわかった。

頭を振りながら立ち上がる。

アインは正面から剣を振り下ろしている。

華麗な足捌きだ。

棍棒を2回3回とかわし、2檄目振り下ろす。

しかしいっこうに倒せる気配が無い。

とんでもない体力だ。


デミオをふら付きながらコボルトキングの背後から頭を狙って1檄を入れる。

グシャ~

コボルトキングが堪らず振り返りざまに棍棒でデミオを振りぬく。

デミオは間に合わないと判断した。

この一撃を受けるとまずい。

「パワーアシスト」

両腕に「スチールスキン」

ハンマーを捨てて、両手でガード。


ガキ~ン


そのままデミオは吹き飛ばされ木に激突。

両手はつぶれて粉砕骨折している。

木がへし折れる感覚。

まずい即死もののダメージだ。

フルパワーで魔力開放。

デミオの自己治癒が修復を試みる。

そのままデミオは崩れ落ちるように倒れた。


マイクはデミオが吹き飛んだのを目撃した。

まずい即死かもしれない。

しかし、目の前でアインは1人でコボルトキングを相手している。

少しでも油断するとパーティ全滅だ。


もともとレベル2のパーティに手に負える魔物ではないのだ。

「ディレイ・スモールヒール」

後、3~4回で魔力が尽きるだろう。

できれば「ミドルヒール」を残しておきたい。

するとスモールも後1回というところだ。

コボルトキングは既に血だるまだ。

アインも返り血ですごいことになっている。


アインはコボルトキングの右目もつぶす。

右左、回りこんで背後からとめまぐるしく出入りを繰り返し攻撃を加えている。

威力より手数の攻撃だ。

致命的なダメージは与えられない。

しかし確実にコボルトキングの体力を奪っていった。


アインは既に息も絶え絶えだ。

マイクが体力回復のため、「ディレイ・スモールヒール」

アインの顔は紫色、酸欠状態だ。

マイク「アイン一度引いて」

アインが頭を振りながら重い足取りで戻ってくる。


コボルトキングは周りの木をなぎ倒している。

マイクはアインを支えて距離を置く。

アインは今にも倒れそうだ。


少し休むとやっとアインの顔色が戻ってきた。

コボルトキングもやっと力尽きようとしている。

やがてドシーンと巨体を震わせて倒れた。


アインがそっと近づき、頚動脈に一撃を加える。

ギグオ~と叫び声を上げてコボルトキングが最後の攻撃を入れる。

アインの右足に衝撃が走った。

飛び上がり衝撃を逃がす。

しかし着地で強烈な痛みが走った。

しまった折れた。

アインに動揺が走る。


「ディレイ・ミドルヒール」

マイクの呪文がアインの右足をゆっくりと治療していく。

アインは足を引きずり再度コボルトキングの喉に剣を突きたてた。

コボルトキングは動かなくなった。

そのままアインが崩れ落ちる。


マイク「アイン!」

アインは大丈夫と手を挙げる。

マイクは恐る恐るコボルトキングをメイスで突いている。

どうやら動かないようだ。


あわててデミオのところに駆けつける。

デミオは倒れていて動かない。

後1回できるだろうか。

「ディレイ・スモールヒール」

しかし効果は無い。

やはり魔力切れだ。


デミオの両腕は折れている。

体のダメージも酷い。

しかし死んではいないようだ。

デミオを運ばなければならない。


デミオを背負うと森の入口まで引きずっていくことにした。

小柄とは言え、結構な重量だ。

しばらく悪戦苦闘しているとアインが後ろからやってきた。

アイン「手伝うよ」

アインはデミオのハンマーとマイクのメイスを並べる。

マントをかぶせて腰のロープで固定し簡単なタンカを作った。


マイク「良くこんなこと思いつくね」

アイン「昔親父に聞いたことがあったんだ」

   「冒険者の運搬方法らしい」

   「まさか本当にやることになるとは思わなかったけどね」


2人でデミオを森の入口まで運ぶと

ガイエン達も帰ってきた。

   「すまないな~」

   「洞窟にコボルトキングはいなかったよ」

   「作戦を練り直して再チャレンジする」

   「また参加してくれ・・・がははは」

と豪快に笑いながらやってくる。


アイン「その作戦はもう必要ないと思うよ」

   「コボルトキングは僕達の方にでたんだ」


ガイエンが驚愕の顔を浮かべる。

   「まさか倒したのか?」

アインが頷く。

   「アインだったかな?」

   「覚えておこう」

と言い残して立ち去った。


マイクはデミオの様子を見ている。

   「どうやら危険な状態ではないようだ」

   「気絶しているようにも見えるけど気付け薬も効かない」

   「一度町に戻ったほうが良さそうだよ」


アインもマイクと同じ判断だ。

他のチームも手伝ってくれるだろう。

が中央教会の助力は期待できない。

自分達で対応するしかないだろう。

正午の太陽がアインに短い影を落としている。

すこし風も強くなってきたようだ。

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