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10.コボルトキング掃討作戦(前夜)

今回はちょっと短めです。

エマは店で報告書をまとめていた。


『ガントレットの改善提案について』

ガントレットは防御力が高いが、金属製で滑りやすい。

防御力を落とさず滑りにくいガントレットを開発したい。

提案者 アイン・ドレアー 

                 エマ・グリーン


エマが大声で命令する。

「だれか議会に報告書を持っていって頂戴」

「長剣の研ぎなおしとグリップに滑り止めを付けて」

「そうね皮ひもがいいわ。綺麗に編み上げて頂戴」


階段を上ってくる複数の人間の足音がする。

普段ハンター協会はエマしかいないように見える。

が実は地下に何人もの人が働いているようだ。


マイクとデミオは風呂で汗を流すと、1階のロビーで食事をしていた。

デミオの食事は実に巧みで不自然さはない。

奥にキース達もいるようだ。

しばらくするとアインが帰ってきた。

長剣には綺麗に皮が巻かれて、綺麗にとがれた刃が鏡のように辺りを写していた。

アインが向かいの椅子に腰掛ける。


アイン「明日のコボルトキングの参加が決まったよ」

   「僕達は洞窟の左側の防衛だ」

   「多分敵の主力は洞窟の中だ」

   「でも赤や黒コボルトも出るだろう」

   「防衛時間は2時間の予定だ」

マイクがうなずく。


アインの視界の先にキース達のいるテーブルがある。

アインがここで一呼吸おいて話し出す。

   「僕らはキース達のチームと一緒だ」


マイクが眉をひそめる。

   「キースと協力?」


アインがヒソヒソ声で応える。

   「キースはいい噂を聞かないけど。腕は立つよ」

   「アーチャは僕達と相性もいい」

   「ガイエンの判断は妥当さ」


アインは席を立ってキースのテーブルに向かう。

キースがアインに気づいて、じっと見ている。


アインはキースの前で立ち止まって言った。

   「明日のゴブリンキング、僕達も参加することにしたよ」


キースが気障に笑いながら

   「ひとつ仲良くやろうじゃないか」

   「怖かったら僕の後ろにいてもいいよ」


アイン「いやそれには及ばないよ」

   「僕達もレベル2なんだ」

   「それより僕達の周り1メートル以内に打ち込むんじゃないぞ」

   「まあ、赤や黒の処理は任せるよ」


キースは両掌を上に挙げたポーズをとる。

つくづく気障なやつだ。


アインはマイクにアイコンタクトを送ると階段を上っていった。

デミオとマイクが付いて行く。


マイク「装備のカスタムができるなんて知らなかったよ」


アイン「ああ、ハンター協会は装備の実用実験もやってるのさ」

   「新しい装備を買うときに必ず下取りするだろう」

   「あれは、装備改善の研究材料にしている」

   「だから改善案として応えてくれるのだろう」

   「改善結果は町の役人の装備にも反映される」

   「この町の警備兵は派手さは無い」

   「が王国の近衛と遜色ないといわれているよ」

   「もし戦ったら勝ち目は無い」


デミオはウッドハンマーを握り。

   「このハンマーも防具もとても使いやすい」

   「まるで、あつらえたみたいだ」


マイク「そうなんだ。僕も気づいたよ」


アインが今更という顔をしながら。

   「ハンター協会の地下ってどうなっているか知っているかい?」

   「これは噂だが」

   「巨大な倉庫で膨大な数の装備がサイズ別で管理されているらしい」

   「装備のメンテナンスは地下でやってる」

   「さすがに鍛冶場は無理だから別に存在しているだろうね」


マイク「武具は北のイーラ帝国産が最高だって聞いたよ」


アインがうなずきながら話す。

   「たしかにイーラ帝国産は強いよ」

   「でも値段が高すぎる」

   「市場でも扱っているけど、とても買えないよ」

   「ハンター協会のものはこのエイブルで生産しているものさ」


マイク「さあ明日は大仕事だ。今日はゆっくり休むべきだよ」

アインもうなずく。


デミオ「僕は今日のおさらいをしておきたいんだ」

   「魔力もほぼ満タンだし、休む必要は無い」


アイン「余り長時間でなければ空き地でやるといいよ」

   「でもほどほどにね。休憩しないやつも人間じゃないよ」

とにやりと笑う。


デミオは真面目な顔でうなずきながら部屋を出る。

町の門は硬く閉ざされ、昼と違う人が警備していた。

デミオを見ても特に気にしていないようだ。

しばらく歩いていくと、デミオは町の北側に空き地を見つけた。

月が煌々と辺りを照らしている。

ナイトビジョンでなくても辺りは見えるだろう。


立ち木を相手にウッドハンマーを振るう。

本当に当てたりしないが、目標があったほうがやりやすい。


踏み込みと振り上げ。

足の運び。

重心の移動の確認。

攻撃パターン。

確認しておくことはたくさんあった。

あっという間に2時間が経っている。


もう深夜だ。

デミオはそろそろ切り上げるべきだと判断した。

町のメインストリートは昼間と違い人の姿は無い。

しかし路地を見るとこの時間でも営業している怪しげな店もあるようだ。

店の前には酔いつぶれた人が寝ている。


町の警備兵が2人一組で横切るのが見えた。

特に気にする様子も無く通り過ぎる。

日常的な風景なのだろう。

デミオは宿のふかふかなベッドで休むことにした。

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