9.ドレアー流剣術
まったりと更新です
デミオは昨晩の出来事について何度も思い出していた。
考えがぐるぐると頭の中を駆け回り。
気が付くと朝になっていた。
アインがベッドから起き上がる。
珍しく朝から雨が降っている。
「デミオ、君は寝なくていいんだったね」
「少しうらやましいよ」
「そうそう。君が人間で無いと確信した話をしてなかったね」
「君は1回も水を飲んでないだろう?」
!!!
人間は水を飲むものなのか?
そういえばアインもマイクも頻繁に水筒を持っていた。
「朝食を摂りながら色々やってみるか?」
「マイク朝食だ」
1階に降りるとエドガーに銅貨5枚ずつを渡しながら。
端の席に陣取る。
アインが小声で話す。
「君の技は中々だ」
「よほど気をつけないと気づかないと思う」
「けどもっと工夫の余地はある」
「例えば」
「肉の食べ方が綺麗過ぎる」
「肉しか食べていない」
「水も飲んだほうがいい」
「試してみよう。まず肉をかじって骨から肉をそぎ落とす」
「次に骨を捨てながらアブソーブだ」
デミオは試してみる。
なるほどこれなら適度に骨に肉が残って自然だ。
「次はアブソーブで野菜はどうかだ」
「野菜を頬張ってやってみて」
野菜を頬張り「アブソーブエナジー」
野菜も無くなった。
アインは大きくうなずく。
「最後に水を含んでやってみて」
デミオが試してみるとこれも問題ない。
デミオは驚いていた。
アブソーブエナジーは自分が思っているより遥かに柔軟な呪文だった。
これは新しい発見だ。
朝食を終えるとアイン達はコボルト狩りに出かける。
昨日と同じ森の入口に到着した。
「僕の父ビクセン・ドレアーは結構有名なハンターだった」
「僕は父から剣術を習ったんだ」
「でもこれは他の武器でもそんなに変わらないと思う」
「マイクもメイスでやってみて」
ドレアー流剣術
「まずは立ち方から」
少し半身になりながら右足を前、左足を後ろ。
足先を真っ直ぐ相手に向ける。
左右の足の間隔は概ね肩幅より狭いくらいに開く。
ひざを軽く曲げて腰を落とす。
「ハンマーの使い方」
ハンマーの尖った方を下にして構える。
右手でハンマーの柄の中間点を。
左手はハンマーの柄の端を持つ。
ひじを伸ばしきらないようにする。
大きく振りかぶる。
ハンマーのヘッドの重さを利用して重力と遠心力をうまく使ってハンマーを加速。
左手は体の中心からはずさないように前に突き出す。
右手でハンマーの軌道をコントロール。
左手の手首で加速。
最後滑らして右手と左手をくっつける。
目標にヒット。
エネルギーの全てを相手に叩き込む。
「移動攻撃」
右足を大きく踏み込む。
同時にハンマーを振り下ろす。
すばやく左足をひきつける。
重要なのは左足だ。
左足が早く引き付けられないと次の攻撃ができない。
下がるときは左から下がって右を引き付ける。
下手に強い攻撃をしようとしてはいけない。
あくまでハンマーの重さを利用した攻撃に徹する。
力より速さだ。
デミオは教えられた動きを何度も繰り返す。
アインはデミオのセンスに舌を巻いた。
本来何年も練習しないと身につかない技術だ。
しかし既にそれなりに形になっている。
デミオは驚いていた。
こんな技があるなんて。
今までより正確にしかも縦横無尽にハンマーを振るえる。
ハンマーにそれほど力を入れていないように感じるが。
威力は倍はあるだろう。
程なくしてアインはデミオに言った。
「上出来だ。そろそろ実践と行こう」
「今日はマイクも武器があるから」
「2人で前衛をやることにしよう」
アインは森を進んでいく。
デミオは振り返るとマイクに言った。
「祝福はいらない」
「僕の抵抗値が下がるんだ」
マイクはなるほどとうなずいた。
後ろから付いて来るマイクがエンチャントウェポンを掛ける。
デミオのハンマーが光り輝く。
エンチャントウェポンは武器に弱い魔法属性を与える。
レイスなどの魔物は魔法武器でしかダメージを与えられない。
しかしエンチャントウェポンならダメージを与えられる。
また若干のダメージの底上げもあるため人気の呪文だ。
先頭を走るアインが10匹程度のコボルト集団を発見した。
群れの中央付近に突撃を開始。
後ろを向いていたやつを1檄で倒す。
続いて右のやつに1檄を入れながら左の転んだやつに突きをいれた。
体勢を立て直した右のやつに再度1檄を入れて止めを刺す。
流れるような動きだ。
派手さは無い。
しかし堅実で無駄がない。
右の踏み込みと同時に振り下ろされる剣が確実に相手にダメージを与えている。
攻撃し終えたらもうそこにいない。
すばやく足を戻す。
バランスを崩すことなく、次の攻撃の準備が終わっている。
デミオはアインの技術の高さに舌を巻いた。
昨日は良くわからなかった。
が手ほどきを受けた今ならその動きの意味が理解できる。
シンプルだが奥の深い世界がそこにあった。
デミオも戦闘に参加。
アインの背後に回ろうとしているやつを仕留める。
教えてもらった方法でハンマーを振り上げる。
軽い!
狙いを定めてハンマーを振り下ろす。
風を切る音がピューウと鳴る。
脳天に直撃。
グシャと頭がつぶれる。
すばやく足を戻して次のやつに備える。
既にハンマーは振り上げてある。
まるで魔法のような技法だ。
デミオは次々とハンマーを打ち下ろす。
あっという間にコボルトは全滅した。
付近に敵の気配は無い。
アインもデミオも無傷だ。
アインはデミオを見ながらにっこりと笑った。
「完璧だね」
「正直そこまでできるとは思わなかったよ」
「きっと君に武術の手ほどきをした人はみっちりと基礎をやったんだろう」
「君の足腰の強さは本物だよ」
アインは水筒を飲みながら周りを見渡す。
角を回収して次に行くことにした。
2回目もアインの突撃から戦闘が始まる。
デミオはコツがつかめてきた。
次々と苦労なく倒して行く。
森の奥にだんだん入っていく。
アイン達は本日3回目の突撃。
コボルトの3匹ほど倒したところ。
奥から黒い服を着たコボルトが現れる。
黒コボルトだ。
アインに緊張が走る。
距離は5メートル。
間に合うかもしれない。
アインは猛烈にダッシュ。
コボルトの槍がアインに当たる。
かまわずそのまま黒コボルトに走る。
マイクが「あっ」と叫びながら「スモールヒール」。
そのまま「ディレイ・スモールヒール」。
その時デミオがアインに攻撃していたコボルトにハンマーを振り下ろす。
コボルトは「ふぎ~」と言ってつぶれる。
デミオは右奥の3メートル先に赤コボルトを発見した。
しまった数が多い。
赤コボルトが弓を構える。
デミオは「スチールスキン」全身が少し黒みを帯びる。
そのまま突進。
赤コボルトの矢がデミオの胸に刺さる。
デミオは一気に距離を詰め。
右足を大きく踏み込みハンマーを振り下ろす。
距離が足りない。
ハンマーはもう止められない。
くそ~右手を離す。
左手を目いっぱい伸ばす。
赤コボルトはびっくりした顔をしたまま脳天にハンマーを受けた。
デミオはすばやく振り向く。
胸の矢が抜け落ちる。
幸いチョッキとスチールスキンが守ってくれたようだ。
傷は浅い。
まだコボルトは5匹以上いる。
アインは黒コボルトを倒した。
マイクがデミオに「スモールヒール」
傷が消える。
マイクにコボルトが攻撃。
マイクは盾で受け止める。
メイスは手放してしまった。
デミオは瞬時にマイクが危ないと判断。
マイクとデミオの間にいたコボルトを攻撃。
しまったかわされた。
ハンマーは地面に激突。
そのまま1歩進んで右足でキック。
コボルトの腹に命中し、コボルトはよろめく。
ハンマーを切り返して下から突き上げる。
コボルトが吹き飛んだ。
すばやく体勢を立て直し基本の振り上げた格好に戻る。
そのまま突進してマイクの前にて棍棒を振り回すゴブリンを後ろから叩き潰す。
アインもマイクの元に戻ってきた。
マイクを背にコボルト3匹とにらみ合う。
マイクは息を整えながら、メイスを探している。
アインがコボルトに攻撃開始。
デミオも参戦した。
程なくコボルトの一団は壊滅。
アインも息を切らせている。
見ると腕の傷から血が流れてる。
マイクがヒールをすばやく掛けた。
アインが短く「撤退」と言った。
アイン達は森の入口まで撤退した。
デミオの魔力は半分になっている。
全身のスチールスキンは消耗が激しい。
アインが口を開く。
「危なかった」
「コボルトが見当たらなくてつい奥まで行ってしまった」
「黒や赤が出るときつい」
「どうやら殲滅も近いのかもしれない」
「明日の掃討作戦はこの分だと成功しそうだね」
「コボルトで稼げるのも最後かもしれない」
「僕達も参加してみようと思うけどどうする?」
マイクもうなずく。
デミオは昨晩の出来事を思い出していた。
「そういえばホールで参加しないか誘ってきた人が居たよ」
アインはちょっと考えて
「青い皮手袋をしていた人でないかい?」
デミオがうなずく
「それはデミオ、君をおとりに使おうとした人だよ」
「彼はキール、レベル2のアーチャだ」
「アーチャ3人に魔道士、4人パーティのリーダさ」
「以前はファイターもいたんだけど」
「誤射で死なせたんだ」
「それからファイターが入らないんだよ」
「腕利きなんだけどね」
「最近は新人を言いくるめてくるらしいね」
角は35本 アインが13本 デミオとマイクが11本づつだ。
エマはハンター協会で最近の報告書をまとめている最中だった。
最近で目立つのはアインのチームだ。
モンクのデミオが入って急成長した。
エマはアイン達は普段から不遇だと思っていた。
しかし議長からは特別な贔屓をするなと釘をさされている。
あの実力ならもっと早くレベル3になるはずだ。
いかんせん戦力不足。
彼が人数を増やさない理由はわからないが、納得のいく仲間がほしいのだろう。
チームにおける信頼関係は重要だ。
上位のチームほど結束力が強い。
しかしデミオがその日にチームに入るとは思わなかった。
デミオ達がハンター協会に戻るともう夕暮れ時だった。
店には相変わらず、エマさんが一人だ。
それぞれコボルトの角を提示する。
アイン「剣の研ぎなおしをお願いしたい」
「後、少しすべる気がする。滑り止めは付けれないか」
エマ「研ぎなおしは 銅貨 5枚」
「メンテナンス加工も 銅貨5枚よ」
と言って手を差し出す。
アインが長剣を渡す。
「明日のコボルト殲滅作戦の情報がほしい」
エマがアインをじっと見つめて一呼吸して話す。
「ターゲットはコボルトキング 危険度Bクラスよ」
「大きいものは身長3メートルにもなる怪物」
「耐久力、攻撃力ともに通常のコボルトの比ではないわ」
「言うまでも無いけどレベル2程度のチームでは勝率5%以下よ」
「ターゲットの所在は奥の洞窟と思われる」
「高い確率で赤や黒も出るわ」
「今の時点で挑戦するチーム構成は」
「レベル5 1チーム」
「レベル3 2チーム」
「レベル2 3チーム」
「主催がレベル5 のガイエンのチーム」
「『嵐の夜明け亭』にいるはずよ」
「コボルトキングを倒せたら、コボルト達は習性上、散り散りになると思うわ」
「剣は預かるから1時間後取りに来て」
ハンター協会を出るとアインは
「明日の段取りと交渉をしてくる」
「先に宿に戻っていてくれないか?」
デミオはうなずいて、マイクと歩き出した。




