第21話 つみたてNISA創設と資産形成の本格化
「パパー、これ読んでー!」
西暦2018年、お正月明け。
3歳になった長女の未来が、お気に入りの絵本を両手で抱えて、俺――佐藤拓也(37歳)の膝に飛び込んできた。
「おっ、いいぞー! 今日はどのお話にする?」
温かいUR団地のリビング。すっかりおしゃべりが上手になった娘の頭を撫でながら、俺は目を細めた。
美咲と二人三脚で乗り越えてきた保活地獄や、共働きの過酷な日々。それらを泥臭く乗り越え、我が家には確かな幸せの時間が流れていた。
だが、親としての現実的な不安が消えたわけではない。
娘がすくすく育つにつれて、これから待ち受ける小学校、中学校、そして大学へと進むための教育費という「巨大な山」が、確実に近づいてきているのだ。
「ふふっ、二人とも仲良しだね」
キッチンから温かいコーヒーを運んできた美咲が、微笑ましくこちらを見つめる。
「なぁ美咲。未来ももう3歳か。……ありがたいことに今は共働きでなんとか回ってるけどさ、これから本格的にお金がかかる時期になっていくよな。学資保険だけじゃ、これからのインフレとか考えると正直ちょっと心細いし……」
俺の言葉に、美咲も小さく頷いてテーブルにマグカップを置いた。
「そうだよね。2014年に一般NISAが始まってから細々と積立は続けてるけど……あれって非課税期間が『最長5年』だから、私たちの老後や未来の教育資金をじっくり育てるには、どうしてもリセットの手間があったりして期間が短いのよね」
アベノミクス以降、株価は順調に回復していたが、これまでの投資には制度上の「5年という壁」が常に付きまとっていた。一攫千金を狙うわけではない。だからこそ、家族の生活基盤を脅かさずに、確実に未来へ繋ぐ仕組みが欲しかった。
「……それがさ、美咲。2018年から始まる、新しい『長期の防衛陣形』がさ!」
俺はテーブルの上に広げた新聞の経済面を、少し興奮気味に美咲に見せた。
そこには、日本の資産形成の歴史を塗り替える大きな見出しが躍っていた。
『2018年1月スタート! 「つみたてNISA」創設。非課税期間は最長20年!』
「つみたてNISA……? 最長20年!?」
美咲が目を丸くし、新聞の文字を食い入るように見つめる。
「そう! 年間の投資枠は40万円までだけど、出た利益が20年間も非課税になるんだ! しかも金融庁が厳しい基準で『長期・積立・分散』に適した低コストの商品を厳選してるから、自分たちでイチから複雑な商品を探す必要もない!」
ここで、我が家のCFOである美咲の目の色がスッと変わった。現役の信用金庫職員として、金融商品の裏側や手数料の重さを知っている彼女だからこそ、この制度が持つ意味の大きさが一瞬で理解できたのだ。
「……手数料が低くて、国が選んだ健全な対象商品だけ。しかも、それが20年非課税……?」
「そうだよ、美咲! これこそ、俺たちが氷河期から泥臭く這い上がってきた中で作ってきた『種銭』で、家計を守りながら長期で資産形成に取り組むための強力な仕組みなんだ!」
俺の言葉に、美咲はゆっくりと息を吐き出し、やがてパァッと満面の笑みを咲かせた。
「……すごいよ、拓也。これなら、私たちが毎月の生活を切り詰め、激安ハックで守り抜いてきたお金が、ただの貯金じゃなくて『未来を育てる力』にちゃんと変わってくれる……!」
家族の未来を明るく照らす、確かな一歩を踏み出した瞬間だった。
【説明しよう!】
ここで、日本人の資産形成の常識を大きく変えた『つみたてNISA』の制度的意義を解説しよう!
当時の日本の投資環境では、短期運用や高い手数料、毎月分配型など、長期の資産形成には向きにくい商品も数多く存在しており、一般庶民が資産を効率的に増やすのが難しい側面があった。
しかし! この「つみたてNISA」の誕生により、ゲームのルールは一変した!
金融庁が設定した「購入時手数料ゼロ」「信託報酬は一定水準以下」「長期・積立・分散にふさわしいこと」という厳しいスクリーニングをクリアした商品しか対象として選ばれない。つまり、「国が国民の長期的な資産形成を支援し、長期・積立・分散に適した商品を選びやすくするための要塞」を築き上げたのである!
さらに「最長20年」という非課税期間は、複利の力を存分に発揮させる。短期の株価の変動に一喜一憂せず、ただ淡々と積立を続けるだけで、普通の会社員や共働き夫婦でも、長期・積立・分散によってリスクを抑えながら、世界経済の成長に参加できる――これは、日本の金融史において文字通り大きなターニングポイントだったのである!
「これなら、未来が大人になるまでの間、じっくりと時間を味方につけて『複利の力』を活かせるんだ!」
俺は興奮を抑えきれずに語った。
あの氷河期の時代、手取り16万円で絶望し、城ヶ崎先輩の教えで固定費を限界まで削り、美咲の激安ハックで泥臭く守り抜いてきた俺たちの『種銭』。
それが今、20年という長期の非課税枠という大きな盾を得て、未来の果実を育てるための土壌に生まれ変わろうとしている。
「よし、それじゃあ早速、どのインデックスファンドをメインにして積み立てていくか、夫婦でしっかり比較して決めようか」
「うん! 銘柄選びは我が家の未来を左右するんだから、妥協しちゃダメだからね、拓也?」
こうして、2018年の幕開けとともに、我が家は「つみたてNISA」を軸にした新しい資産形成のステップへと力強く踏み出すのだった――。
【説明しよう!】
この時、拓也と美咲がまだ知らない、日本の投資史におけるもう一つの「歴史的瞬間」が、まさに水面下で着々と準備されていたことを!
この年の秋、世界中の株式にこれ一本で超低コストで分散投資できる「あの伝説の最強ファンド」が産声を上げようとしているのだ……!
そのファンドとの出会いが、我が家の資産形成の運命をさらに大きく加速させることなど、この時の夫婦はまだ知る由もなかったのであった――!
【次回予告!】
つみたてNISAの創設に歓喜し、資産形成の新たな一歩を踏み出した拓也と美咲!
しかし、どのファンドに我が家の未来を託すべきか、夫婦の探求は続く!
そして西暦2018年秋、ついに運命の瞬間が訪れる!
世界中の株式へこれ一本で超低コスト投資が可能な伝説のファンド『eMAXIS Slim 全世界株式』が誕生!
4歳になった娘の未来のために、拓也と美咲が重ねた手に込められた祈りとは――!?
次回、第22話『オルカン誕生! 娘の未来へ押す積立ボタン』!
君は、未来の光を見る――!
ついに時代がサービスしちゃう?!
(つづく)




