↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を旅する忍者 短編  作者: ねこダルマ2世
5/8

『六つの術と無人島の夜』

七技が持つ忍術。その力は、戦うための力…とは限らない。

旅日記 No.0679

滞在時間:約 1 日


新たな世界へ足を踏み出した瞬間、潮風が七技の頬を撫でた。

視線の先には、青い海と、木々が生い茂った無人島が広がっている。

「…… また、時間がかかるのか」

腕のタトゥーを見る。紋様はまだ薄く、次の世界への扉を開くには、丸一日ほどの時間を要するらしい。

探し人の気配は、風の忍術【暴風忍法】で探っても、海の彼方にも、島の奥深くにも、微かな手がかりさえない。

「仕方ない。一日だけ、この島で過ごすか…」

七技は波打ち際を歩きながら、島の様子を眺める。

広すぎず狭すぎず、木々は緑濃く生い茂り、岩場も砂浜も程よく続いている。

「ありがちな無人島だな。」

七技からすれば、これまで見てきた無数の世界の中で、どこにでもあるような、ありふれた無人島だ。


まずは火をおこす。瞳の色が赤く灰色の髪の毛の先端全ても赤く変わる。

七技は砂浜に腰を据え、手のひらをかざす。

「…… 火炎忍法」

ごう、と手の中で炎が生まれ、浜辺の近くにあった乾いた小枝へと移る。

砂の上では燃え広がりすぎることもなく、七技は砂を周囲に盛り、焚き火を囲むように整えた。

「これで、暖もとれるし、夜の闇にも備えられる」


次に水を探す。

七技は目を閉じ、風の流れを捉える。瞼の中では瞳が緑色になり髪の毛の先端も緑に変わる。

「…… 暴風忍法」

風が島の中を巡り、木々の間をすり抜け、湿った大地をそっとなびかせる。

その風の道しるべを辿り、七技は森の奥へと歩を進める。

「こっちか」

木々の隙間から、せせらぎの音が聞こえてきた。

清らかな湧き水が岩間から溢れ、小さな滝となっている。

七技は水筒に水を汲み、その冷たさを確かめる。

「水のありかが分かれば、一日くらいは容易に過ごせる」


続いて、住まいを整える。瞳の色が茶色になり灰色の髪の毛の先端も茶色になる。

七技は木の根が張り、地面の固い場所を選び、地面に手を添える。

「…… 砂土忍法」

地面がゆっくりと変化していき、平らで水はけの良い土台となる。

「必要な時になったら、風を遮るように低い壁を作るか。」

不安定な岩場とは違い、これなら夜も安心して休める。

「大地を味方につければ、風雨も凌げる」


そして、飢えをしのぐ。

七技は瞳の色は桃色に、髪の先は黒に変わり、そっと大地に手を触れさせる。

「…… 森林忍法」

すると、足元から芽が顔を出し、あっという間につるが伸び、みずみずしい葉を広げ、甘い香りの実をつけた。

青く、丸く、一口食べれば空腹も渇きも癒してくれる、そんな木の実。

七技はそれを摘み、一口食べる。

「生き物を傷つけることもなく、こうして命を繋げるのなら、それに越したことはない」

夕暮れが近づき、空が茜色に染まる頃。

「雲行きが怪しいな…」

七技は空を見上げて気づく。

「……雷電忍法」

瞳の色が黄色になり髪の毛の先端も黄色に変わる。

「さて、どこに落ちるか…」

雲行きを伺い、しばらく空を見上げた七技は、ゆっくりと雲の流れが変わったことに気づき、瞳と髪の毛の色を戻す。

「ふぅ…無人島の天気は変わりやすい…どこの世界も同じか。」

炎・水・雷・風・土・植物。

六つの忍術を、それぞれの場面で使い、この島で一日を過ごす術を手に入れた。

どれも、七技が旅の中で身につけ、使い慣れた術ばかり。

「……毎度思うが、いつでもどこでも生きていけるんだな、俺。」


夜が訪れ、満天の星が海面に映し出される。

焚き火の炎がゆらめき、潮風が木々をそよがせる音だけが響いている。

七技は炎を見つめながら、ふと思いに耽る。

これまで幾多の世界を旅し、幾多の場所で夜を明かしてきた。

見知らぬ土地で、一人で過ごす夜など、慣れてしまったはずだ。

だがこの静けさの中で、七技は一つの術のことを思い出す。

――無心忍法。

これは七技の第七の術。

もし今、この術を使えば…。そう考えたとき

「ふぅ……ここでも使わずに済んだか…」

心の底から、そう思う。

あの力は、使えばすべてを楽に解決してくれる。

だが同時に、その世界にあったもの、人々の想い、時間、命 —— そういうものすべてを、何もかも奪い去ってしまう。

「この力、あいつを見つけるときに使う…」

そう七技は、決めている。

この旅の間は、決して「七つ目の忍法」を使わない。

六つの術で事足りるのなら、七つ目の力に頼ることなど、決してしない。

「…… 大丈夫だ。俺は六つの術と、この手があれば、どの世界でも生きていける」

七技は炎を指でなぞり、静かにそう誓った。そうやって、六つの忍術で旅を切り抜けている、そのことを忘れないためにも。


やがて真夜中、腕のタトゥーが鮮やかに輝きだした。

「色も変わったか…」

次の世界への扉が、開かれる時が来たのだ。

七技は焚き火へと近づき、砂をかぶせて炎を静かに消し、

「……水氷忍法」と瞳の色が青に変わり髪の毛の色も青くなる。

どこからか、水を出し、その水をそっと注ぐ。

灰は冷やし、跡も残らないように砂をならし、木々の間を歩いても実を落とした痕も残さないように、すべてを整える。

「この島には、俺が来たことなど、何も残してはならない」

潮風が頬を撫でる。

満月が海面を銀色に照らし、星々が静かに輝いている。

何も変わらない、いつもの静かな夜。

七技は空間へと手を伸ばし、扉を開く。

「さらば、ありふれた無人島よ。」

その姿は、月の光に溶け込むように、静かに消えていった。


――しばらくして、島の反対側。

岩陰で数日間、助けを待ち続けていた一人の男が、ふと砂浜の方を見た。

そこには、誰かがいたような痕跡が、ほんのりと残っていた。

焚き火の跡も、足跡も、すっかり消されているけれど、潮風とは違う、どこか温かく、穏やかな気配だけが、そこに残っていた。

男は不思議そうに首をかしげ、「気のせいか」と一言いい

「……こんな無人島に誰かいるなんて、ありえないよな」

そうつぶやくと、男は岩陰へと戻り、安らかな気持ちで目を閉じた。


旅の記録

『六つの術と無人島の夜』

火をおこす術。

水を探す術。

大地を整える術。

恵みを与える術。

光り、護る術。

そして、そのすべてを知りながら、最後の術を使わないと決める心。

力とは、使うものではない。

使わずに済むのなら、それに越したことはない。

俺は六つの術を、これからも大切に使っていく。

そして七つ目の術は、いつまでも心に封じたままで。

今回も、兄の痕跡はなかった。

だがこの島で、俺は再び、自分自身の心を確かめた。

――七技

簡単に七技の特徴、能力を書かせていただきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。