『色のない村』
第1話では主人公の言葉で語っていましたが、今回からは…第3者から見たような文章をはじめ、いろんな文章で、この作品を進めていきます。
旅日記 No.0099
七技が訪れて半日くらいが過ぎた世界、まるで古い絵の具を水で薄めたような世界だった。
木々の緑はくすんでいる。空は白っぽい灰色。人々の服も、家の壁も、畑の作物さえも、はっきりとした色を持たず、すべてが曖昧でやさしいトーンに包まれている。
いつも通り、風の忍術…暴風忍法で気配を探っても、探している男の気配はない。七技はいつものように、その世界の服装に合わせて質素な上衣とズボンに着替え、静かに村の中へ歩いていった。
「たまには少し歩くか…」
七技が道を歩いていると、村人たちが不安そうな顔で空を見上げている。
「また明日も、色が戻らないのだろうか」
「そろそろ半年になるな」
そんなつぶやきが聞こえてくる。
「おや、見かけない顔だね。」
「うん?」
七技が広い田舎町にたどり着いていた。
「旅人さんかな?」
「まぁ、そうだ」
誰にも気づかれないように移動していたが、広場にある石を椅子代わりに座っていた老人に声をかけられていた。
「色、ないじゃろう?」
唐突に老人が、話を続ける。
「あぁ…そうだな。」
老人と話を合わせる七技。
「けど、一瞬だけだ。」
だが、うそをつかないほうがいい。そう思った七技が老人と話を続ける。
「はは、そうかい…旅人さんには色が見えるんだな…せっかくだから、どうして色がないのか、知りたくないか…」
「…聞かせて、ほしいな。」
七技はまだ時間がある。心の中で確認して、老人との話をつづけた。
話を聞いてみると、半年前からこの村には「色」が来なくなったのだという。
かつては春には花が色鮮やかに咲き、秋には紅葉が里を染め、空は青く、夕日は赤く輝いていた。だがある日を境に、すべての色が少しずつ褪せていき、今ではほとんどのものが曇りガラス越しのような色合いになってしまった。
誰も病気になったわけではない。争いもない。作物も育つ。だが、何かが欠けている。
村の人々は「色神様が怒っているのだ」と言い、毎日広場に集まっては歌を歌い、色が戻ってくるよう願っている。だが願いは届かないままだ。
「色がなくても、生きてはいける」
年長の老婆が、七技にそう話してくれた。
「だけどね、旅人さん。色がないと、心まで少し曇ってしまうのよ。嬉しいときにも、喜びの色が見えないから」
「まぁ、分からなくはないな。」
七技が答えた後、老人はゆっくりと立ち上がり
「久しぶりに話ができて楽しかった…それに、かすかだが、色が見えた気がするよ。」
そういって歩き出した。
「旅人さん。初めて会った老人の頼みを聞いてくれいないか?」
「聞くだけならいいが、金はないぞ。」
「ほっほっほっ、しっかりした人だ…この村から出てすぐに山があるじゃろう?」
「あぁ、もしかして、あれか?」
「そうじゃ、あそこには泉のほとりがあってのを…そこには色とりどりの妖精や精霊がいると言われている…しかし今、そこの泉の色も薄くなってしまって、妖精もいなくなった…もしも興味があったら登ってくれないか?」
「なぜ、俺にそんなことを?」
「長生きしているから、分かる…旅人さん、あなたはここで、色を見つける人じゃと…」
老人は、振り向かずに、ゆっくりとこの場を去っていた。
七技は老人を追わずに「久しぶりの登山も悪くはないか」と独り言で言って山へと向かった。
七技は山の上へと登っていった。
色が褪せはじめたという、村のはずれの泉へ行くためだ。
「おっ?」
泉のほとりには、一人の少女がいた。
「あ…」
少女が七技に気づく。
「…泉を見て来いって、あの町の老人に言われてここに来た。君は?」
十歳ほどの少女に優しい声で話しかける。
「そう…長老さんが…」
少女は理解して七技と話し始める。
彼女は毎日この泉へ来て、水辺に花を飾り、歌を歌い続けているのだという。
「色神様はきっと寂しいだけなの」
少女は七技にそう言った。
「だから私、毎日お話しするの。いつかきっと、色が戻ってくるよね」
七技は泉の水面を見た。
水は透き通っている。だが、そこに映る空も木々も、やはり色は褪せたままだ。
――色が消えたわけではない。
七技は風の気配を読み、そして気づいた。
この町…いや、この世界には「色」を感じる心の余裕が、少しずつ失われているだけなのだ。
日々の暮らしに追われ、喜びを感じることを忘れ、ただ「色が戻ってくる」ことだけを願いながら、自分たち自身で色を見ようとすることをやめてしまったのだ。
だから色は戻ってこない。
色は誰かが与えてくれるものではなく、自分たちの心が見つけるものだから。
七技は「…色が見えてきたが…」と今の自分のことを少女に言うが、静かに泉の前で目をつぶって祈っている。
誰かを倒すことも、呪いを解くような大きな力を振るうこともない。七技は旅をする中で決めている。
ただ、静かに少女のそばにしゃがみ、木刀を手に取った。
「…森林忍法…」
そう心の中で唱え、泉のほとりの固い土へと木刀を触れる。
すると泉の周りから、次々と芽が顔を出しはじめた。
青、赤、黄色、紫――鮮やかな色をした無数の花たちが、風に揺れながら一斉に咲き誇る。
あまりにも美しい花々に、少女は目を見開き、息をのんだ。
「きれい……」
思わずこぼれたその声は、心からの喜びに満ちていた。
七技は花々を咲かせると、何も言わずに立ち上がった。
「色は、探すものだ。誰かが持ってきてくれるものではない」
そう静かに告げると、七技はその場を後にした。
少女は泉のほとりで、咲き誇る花々を前に、笑顔を浮かべ続けていた。その姿を1匹の妖精が見ていることを知らずに。
その日の夕暮れ時。
村の人々が空を見上げると、白っぽかった空に、うっすらとオレンジ色が浮かんでいるのに気づいた。
色はすぐにすべてが戻るわけではないだろう。
だが、人々がもう一度「色を見たい」と心から願い、探しはじめたとき、少しずつ色は戻ってくるはずだ。
七技は村を離れ、再び別の世界へと移動した。
「世界には、その世界だけの正しさがある」
誰かが何かを変えるのではない。
その世界に生きる人々自身が、道を選び、色を取り戻していくのだ。
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### 旅の記録
『色のない村』
色は与えられるものではない。
心が見つけ、心が描くものだ。
誰かが願うだけでは、何も変わらない。
だが誰かが笑い、喜ぶとき、その世界には少しずつ色があふれはじめる。
今回も、兄の痕跡はなかった。
だがこの世界で、また一つ大切なことを知った。
――七技
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旅日記の数字は、いつも変わります。これから読み続ける人は、数字をあまり気にしないで読んでほしいと思います。私も多くの内容を考えるので…ここの部分覚えてください。




