scene1 もうひとりの主人公
かなり久しぶりの投稿となってしまいました
なんだこの明るい子は。
それが、各務原慧真に対しての第一印象だった。彼女との出会いは、部活の新入生挨拶のとき。上級生の前に並んで一人ずつ簡単な自己紹介や挨拶をしていく、そんな新参者たちの中で、彼女はひときわ――口さがなく言ってしまえば、やかましかった。私と慧真との間には他の新入生が二人並んでいて、だからあのときの彼女の姿をまじまじと見つめることなんてできなかったのだけれど、それでも視界の端に入る短くてよく揺れるお下げと、はっきりと聞き取りやすい、それでいてどこか甘えるような響きを含んだ声は、彼女のことを私に強く印象付けさせた。
そのすぐ後に――自己紹介の最中だったのか、その日の布団の中でだったのかはなんだかあやふやだけれども――ふと、こうも思ったのだった。
ああ、この子、主人公だ。
その閃きは、昔お気に入りだったケーキ型の消しゴムを、何年か越しに思いがけず押し入れの隅から見つけたときの感覚に似ていた。
当時はまだ彼女のことをほとんど何も知りはしなかったけれど、それでも各務原慧真という同級生は、私にとって主人公そのものだった。
小さい頃にアニメで見た、ちょっとドジでお調子者で、皆の先頭に立ちながらも愛嬌があって、何より元気な主人公。慧真はまさしくそんな――私が昔、そうなりたいと憧れていた女の子そのものだったのだ。
仲良くなりたい。そう思った。彼女のような人物と、同じ演劇部に入ることができたのは運命だと思った。私の書いた脚本の主人公に彼女を起用することを想像して、それが在るべき未来であるようにすら感じた。
そして、何よりも――
「おはよーう!」
スーツや制服でごった返す中、慧真は今日もキオスクの前で手を振っている。
ああ本当に、あの子は元気で、うるさくて、
いいね。
私も毎朝そうしているように、小さく手を挙げて合図する。そしてにこにこで迎えてくれた慧真に、困ったように苦笑しながら「声大きい」と呆れてみせる。
それが、私のポジション。
元気な主人公の近くによくいるよね。クールで知的なやつ。
私は――神崎和花は、どちらかといえばそっち側の人間だ。自分のことをクールだの知的だのと評しているわけではないけれど、口数が少なくて皮肉屋で感情表現の下手な私には、主人公よりもそういう立ち位置の方がまだ近いのだろう。
そんな私が慧真と並んで立つと、なんだかすごくしっくり来る。すごくしっくり来ているように、周りから見られている気がする。赤と青みたいな、白と黒みたいな。主人公と副主人公みたいな、そういう組み合わせ。
憧れの主人公ではないけれど、この「もう一人の主人公」っていう感じのポジションは、すごく、
すごく、いい。
間違いなく、慧真のおかげ。
私が冷徹を装って歩きだすと、主人公は大声で不平を垂れながら駆け足で追いついて来る。見覚えがある、この関係性。
大雨でも降っているみたいにやかましくて湿った気分の悪い人混みの中で、私は、私たちは、アニメや漫画の中の何気ないワンシーンだった。




