↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ファラオ、古代エジプトを改革す!  作者: 泉水遊馬
ファラオの市政改革

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/40

第1話 新ファラオ誕生

挿絵(By みてみん)




気絶した刺客の男を石床に転がし、一真は大きく息を吐き出した。

(……ふぅ。身体が重い……)

病魔に蝕まれていたツタンカーメンの肉体は、想像以上に脆く、頼りない。

たった一度、柔道の投げ技を繰り出しただけで、呼吸は乱れ、肘や膝の関節が軋むような痛みを訴えていた。

アンケセナーメン。

ツタンカーメンの正妃であり、異母姉でもある彼女だった。

政争の道具として翻弄され、アマルナ革命の破綻と父アクエンアテンの崩御、そして幼い夫の死の影に怯え続けてきた少女。

彼女の視線が、石床に転がされた刺客と、その首元に短剣を突きつけていた一真の姿へと注がれる。

「あ……あ……刺客……!?」

アンの顔から、完全に血の気が引いた。

彼女は夫が病床でそのまま息絶えるか、あるいはこうして誰かに暗殺される未来を、幾度となく「予知」の神託として見てしまっていたのだ。

ガタガタと震え、膝から崩れ落ちそうになるアン。

その華奢な肩を、一真は素早く駆け寄ってしっかりと支えた。

「大丈夫だ、アン。怪我はないか?」

「え……?」

アンは息を呑んだ。

自分を抱きかかえる手の温かさ。

そして、病で床に伏せていたはずの夫が放つ、力強くも優しい声。

何より――彼が自分を「アン」と呼んだことに、彼女の心は激しく揺さぶられた。

宮廷の誰もが彼女を「王妃」あるいは「アメンホテプの娘」という政治的な記号でしか呼ばなかった。

だが、目の前にいる男は、ただの一人の人間として自分を見つめ、慈しむような眼差しを向けている。

(この方は……本当に、ツタンカーメン様なの……?)

(ううん……違う……。この温かさは……まるで……)

「ツタンカーメン様……お体は……? 病は……!?」

「ああ、もう大丈夫だ」

一真はアンの視線に目線を合わせ、前世の市民課時代に何千人もの市民を安心させてきた、あたたかく誠実な笑みを浮かべた。

「心配をかけたな、アン。もう俺は死なない。お前を一人にして逃げたりもしない」

「っ……!」

アンの目から、大粒の涙が溢れ出した。

これまで誰も言ってくれなかった言葉。

王宮という毒蛇の巣窟の中で、たった一人で耐え続けてきた少女の心が、一真の「真実一路」な言葉によって解き解かれていく。

彼女の胸の奥で、最高位の巫女としての神格――未来を見通す「予知・神託」の力が、あたたかな光となって静かに覚醒を開始した。

「……はい……っ。はい……ツタンカーメン様……!」

アンが一真の胸に顔をうずめて泣きじゃくるのを、一真は優しく背中を叩いて受け止めた。

しばらくして落ち着きを取り戻したアンは、顔を赤らめながら一真から身を引き、石床の刺客へと視線を向けた。

「この者は……アモン神殿の刺客ですわ。神官たちが、あなた様を亡きものにし、新たな傀儡を立てようと……」

「だろうな。史実……いや、この国のやり口としては典型的な手口だ」

一真は冷徹な眼差しで刺客を見下ろした。

「アモン神殿は、国家の農地の数割を所有し、免税特権に胡坐をかいて民から絞り上げている。その上、ファラオの命まで思い通りにしようとは……あまりにも腐りすぎている」

「ツタンカーメン様……?」

アンは目を見開いた。

かつてのツタンカーメンは、神官たちの顔色を窺い、言われるがままにアモン信仰への復帰宣言を出していたはずだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。