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転生ファラオ、古代エジプトを改革す!  作者: 泉水遊馬
プロローグ 歴史が変わる

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3/40

転生

頭が、割れるように痛かった。

胸の奥を激しく突くような不快な拍動と、喉の奥にこびりつく血と香油の混ざった不快な味。


「……く……っ……」


一真は、ゆっくりと重い瞼を開いた。

視界に飛び込んできたのは、自分が通い慣れた市役所の天井でも、整然とした病院の集中治療室でもなかった。

金碧輝煌な装飾が施された、絢爛豪華でありながら息が詰まるほど重苦しい石造りの天井。

そして、自分の体を覆っているのは、見たこともない上質な白い布と、じゃらじゃらと音を立てる重厚な金属の装飾品だった。


(……なんだ……ここは……?)


胸に手を当てようとするが、腕がまるで鉛のように重い。

ちらりと自分の手元が見えた瞬間、一真は強い違和感を抱いた。

自分の手ではない。

毎日、柔道着や竹刀を握りしめ、タコができ、骨太だった28歳の男の手ではない。

そこに伸ばされていたのは、皮膚が薄く、頼りなく細い、十代半ばの青年の手だった。


(……俺は、確か……市役所の駐車場で……)


思い出すのは、暗闇から飛び出してきた男の狂気と、左胸を貫いた包丁の恐ろしい激痛。

アスファルトの上に溢れ出た、温かい自分の血。

死んだはずだった。

それなのに、なぜ自分は生きているのか。

なぜこんな奇妙なコスプレのような部屋で、見知らぬ体で横たわっているのか。

頭の中で、二つの異なる記憶が激しく交錯し、渦を巻いていた。

日本の公務員としての28年間の記憶。

そして、この体のものである、暗く、重苦しい宮廷の記憶。


ファラオ、ツタンカーメン。


病魔に侵され、王宮の陰謀に怯え、19歳という若さで命を散らそうとしていた悲劇の少年王。


(……夢……なのか……? いや、この痛みも、息苦しさも……あまりにもリアルすぎる……)


混乱する思考を整理する暇すら、与えられなかった。

部屋の隅の影から、気配もなく滑り出してきた人影があったからだ。

顔を布で覆い、手には鈍い光を放つ青銅の短剣を握りしめた男。


「……安心されよ、若きファラオよ。

アモン神のもとへ、すぐにお送りいたす……」


男の口から漏れたのは、聞いたこともない言語だった。

だが、なぜかその意味が、一真の頭の中に直接意味として理解できてしまう。

刺客の瞳に宿る、明確な殺意。

それが、自分を刺したあの男の身勝手な悪意と重なった瞬間、一真の身体が条件反射で動いた。


(……よく分からねえが……殺されそうになってるのだけは……確かだ……っ!)


病魔で動かないはずの体を、気力だけで無理やり跳ね起こす。

突き出された青銅の短剣。

その大雑把な軌道を、前世で身体に染み込ませた剣道の「見切り」で見極める。

病弱な腕力では受け止めきれない。

一真は最小限の動きで身体を捻って刃をかわすと、刺客の手首を掴み取り、自分の膝を支点にして体重をかけて巻き込んだ。

柔道の「支え釣り込み足」。


挿絵(By みてみん)


ドスンッ!


重い衝撃音とともに、刺客は石床に激しく叩きつけられ、肺の空気を吐き出して悶絶した。


「ぐはっ……!? な、なにを……!?」


一真は落ちた短剣を拾い上げると、必死の思いで相手の首元へと突き突きつけた。

息は荒く、肩が激しく上下する。

たった一度の技を繰り出しただけで、全身の関節が悲鳴を上げ、視界がチカチカと明滅していた。


「動く……な……」


声が掠れる。

だが、人を斬った記憶を持つ一真の眼光と、至近距離で突きつけられた刃の迫力に、刺客は恐怖で顔を引きつらせ、そのままがくぐりと気を失った。


「はぁ……はぁ……っ……」


短剣を握りしめたまま、一真は床に崩れ落ちそうになる身体を壁に預けた。

状況が、まったく飲み込めない。

ここはどこなのか。

自分は誰なのか。

なぜ自分が古代エジプトの王などと呼ばれているのか。

混乱と困惑が胸を支配し、ただ荒い呼吸だけが静寂な部屋に響いていた。

その時だった。

重厚な扉が開き、一人の少女が室内に飛び込んできた。

白亜のドレスを纏い、漆黒の髪を細かく編み込んだ美しい少女、アンケセナーメン。


挿絵(By みてみん)


「ファラオ……っ!? 大きな音が……あ……っ!?」

彼女は倒れている刺客と、短剣を握って青ざめた顔で壁に背をもたせかける一真の姿を見て、息を呑んだ。

ガタガタと震え、目から涙を溢れさせる少女。

その姿を見た一真の脳裏に、この体の記憶がかすかに響く。

(この子は……アン……? 俺の……いや、この王の……妻……?)

「大丈夫……か……?」

掠れた声でそう問いかけるのが精一杯だった。

状況も、自分の置かれた立場も、この国で何が起きているのかも、何一つはっきりと理解できてはいない。

ただ一つ分かるのは、この華奢な少女が本気で自分を心配し、怯えているということだけだった。

一真は手にした短剣を床に落とすと、自分自身の震える手を見つめ、深く困惑の溜息をついた。

(……一体、俺の身に何が起きてるんだ……?)

先の見えない巨大な混乱と不透明な運命の中で、一真はただ、荒い息を吐き続けていた。


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― 新着の感想 ―
あくまで個人的な意見ですが、文章から情景などを想像して読んでいるところにAI生成絵が急に入ってくると冷めてしまうので、無い方がいいと感じました。
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