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名探偵・ザ・グレート  作者: 真山砂糖
7/19

7 受け子?

数日後……。

 数日後、県警の食堂で昼食を取ってから、私は刑事課の自分のデスクで紅茶を飲んでいた。その時、刑事課に緊急連絡が入ってきた。山崎課長が音声をスピーカーに切り替えて応答した。

「はい、こちら山崎だ」

「《課長、高木です。オレオレ詐欺の受け子と思われる男を容疑者として確保しました》」

「よくやった。ご苦労さん」

「《課長、それが、春日井四郎なんです》」

「え、何だって!?」

 山崎課長は驚いた。私と京子も、そして係長も同じく。

「《本人は犯行を否定しています。とりあえず、今から連行して取り調べます》」

「わかった」

 高木先輩も驚いているのが声から伝わってきた。

「おう、なぜ、春日井が……」

「えー、中山木さんをー、詐欺師って言ってたのにー、何でー」

「係長、結婚詐欺と何か関係があるんでしょうか?」

「おう、調べてみないとわからんな。嶋村と高木に任せよう」


 しばらくして、嶋村先輩と高木先輩が春日井を連行して帰ってきて、取り調べが始まった。私と京子と係長はマジックミラー越しに観察することになった。

「春日井さん、今日はお仕事は?」

「今日は休みです。たまたまあそこでコーヒーを飲んでただけです」

 嶋村先輩の質問に、春日井さんは至って冷静に答えた。

「春日井さん、だったらどうして、あなたが大金の入ったカバンを持っていたんですか?」

「さっきも言いましたけど、自分のカバンと間違えたんです」

「それじゃあ、あなたの、御自分のカバンは?」

「家にあります」

 春日井さんは淡々と話すが、言い訳は見苦しく聞こえた。

「ですから、たまたま居合わせただけです」

「じゃあ、たまたまあなたがいた場所で、あなたの所有するカバンと同じカバンがあって、それを間違えて持って帰ろうとしたということですか」

「ええ、さっきからそう言ってるじゃないですか」

 春日井さんは冷静だが、困ったように何度も言い続けた。春日井さんの言い訳に、係長は私の隣でため息をついているようだった。マジックミラーの向こうでは、嶋村先輩と高木先輩による鋭い質問が春日井さんに飛び続けた。


 春日井さんが連行されることになった概要は、こうだ。

 春日井さんは、ショッピングモールのフードコートに来ていて、コーヒーを飲んでいた。席から立って飲み終わったカップを捨てに行き、席に戻ってきて近くに置かれたカバンを取ったところを置き引きに間違われ、デパートの警備員に呼び止められた。しかし、春日井さんは、その場から走り去ろうとし、警備員に制止された。近くに座っていた高齢男性が、春日井さんが抱えたカバンを、自分が置いたカバンだと言ったので、警備員は警察に通報した。そのカバンの中から現金100万円が見つかり、窃盗の疑いで緊急逮捕された、という流れだ。

 その高齢男性は、数日前に孫を名乗る人物から電話がかかってきて、「交通事故を起こして示談金の100万円が必要になったから、カバンに入れてショッピングモールのフードコートに置いてほしい。友人が受け取りに行く」と言われたそうだ。高齢男性によれば、詐欺電話の声と春日井さんの声は全くの別人の声ということだった。


「それじゃあ、大金の入ったカバンとあなたのカバンが同じカバンだとどうやって証明できるんですか?」

 高木先輩の詰めが佳境に入ってきた。

「あ、そうだ、写真でいいなら見て下さい。これ」

 春日井さんは自分のスマホを取り出し、写真を見せた。

「ほら、このカバン、もう10年ほど使ってるやつです。同じカバンでしょ。家においてありますよ」

 嶋村先輩も高木先輩も納得したように頷いた。


 私と京子と係長はすぐに春日井さんを自宅へ連れて行き、カバンを確認した。春日井さん愛用のカバンとフードコートのカバン、この二つのカバンは、全く同じカバンだった。大量生産されているありきたりの商品のようだった。


 県警へ戻り、再度取り調べが始まる。そんな中、私たちは議論し合った。

「おう、確かに同じカバンだ。普段使いのカバンが側にあったら、間違えて持っていこうとするのもありえるよな。みんなどう思う?」

「係長、『春日井さんは呼び止められたのにもかかわらず、急いで逃げるようだった』との警備員の証言が気になりますね」

「でもさー、小春がー、私のお気にの香水とー、同じのを持っててー、そこらへんに置いてあったらー、私も間違えて持っていくかもねー」

「おう、磯田、同じ意見とは、気が合うな」

「キモいー」

「あのなぁ……課長、どうしましょうか」

 おバカな会話を尻目に山崎課長は真剣だった。

「そうですね。仮に春日井が受け子だったとして、同じカバンを用意させるなんてことができるもんなのか……どちらのカバンも年季の入ったものですしね。偶然と言うしかないですね。これ以上の追及は難しいでしょう。釈放しましょう。ただし、マークは続けましょう」

「はい!」

 こうして、春日井さんは釈放されることになった。嶋村先輩と高木先輩が春日井さんの身辺調査を担当することに決まった。


春日井さん、怪しいですね。

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