表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名探偵・ザ・グレート  作者: 真山砂糖
5/6

5 陸上競技

T県立芸術文化センターへGO!

 県警の食堂で昼食を取った後、私と京子は係長と一緒に、中山道(なかやま みち)さんの展覧会を見るために芸術文化センターへ向かった。

「おう、さすがは県立のセンターだな。色々と催し物があるな」

「私ー、なんかー、退屈ー」

「京子、仕事よ、仕事」

 係長は、入口前の大型の屋外看板を端から端まで見て、興味津々のようだった。

「えー、何々、510演習室でヌードモデル・デッサン教室、未経験者、見学、飛び入り参加歓迎ってか。よし、これに行ってみよう」

 係長は女性のヌード画が描かれたポスターをニヤニヤと見ながら言った。その時、京子はすでにスマホを取り出していた。

「もしもしー、あのー、セクハラ相談窓口ですかー」

「おい、こら、磯田、待て待て、冗談だ、冗談」

 係長は必死になって京子を止めた。すごく情けなかった。

「あ、ここって、体育系もやってるんですね」

 すぐに目立つ文字が飛び込んできた。 "T県高校陸上競技選手権" の文字が。

「ホントだー、陸上競技選手権かー」

「おう、ホントだな。でも建物内じゃなくて、野外運動場だな」

「面白そー、行こうよー」

「京子、だめよ」

「えー、俳句よりもー、楽しそうじゃーん」

「香崎、ちょっと行ってみよう」

 私の注意は意味なく、係長と京子は運動場へと歩き出した。


「おう、走ってる、走ってる」

「うわー、青春ねー」

 建物の裏にある運動場では高校生がトラックの周りを走ったり、短距離走や走り幅跳び、棒高跳びをしていたりと、熱気ムンムンで競技をしていた。

「寒いのに、みんな薄着ですね」

「おう、そういう女子アスリートもなんかいいよな……」

 係長はすごくエロそうな目つきでニヤついていて、とてもキモかった。

「はーい、セクハラ相談窓口に通報ですねー」

「おう、磯田、セクハラじゃねえだろが」

「セクハラですよー」

「違う」

「相手がー、セクハラされてると思ったらー、セクハラになりますよー」

「あそこの女子たちがそう思ってたらの話だろが」

「あそこに走ってる女子たちはー、全員がー、係長のエロい視線に気づいてー、嫌がってますからねー」

「あのなぁ、そんなことわかるわけないだろ……」

 定番のやり取りが繰り広げられてすぐ、何だか聞き覚えのある特徴的な声が聞こえてきた気がした。私は運動場を見回した。

「小春ー、どうしたのー」

「なんか、聞いたことあるような声が……」

「おう、香崎、あれ、中山木じゃねえか?」

 係長が遠くを指差した。その方角に顔を向けると、タンクトップと半ズボンの筋肉質な中年男性が高校生たちを指導しているのが見えた。

「え? どうして中山木さんがここに」

「ホントだー、どうしてここにいるのー」

「係長みたいな変態なん……あっ……」

「おう、香崎、お前まで俺のことを……」

 私の心の声が無意識に漏れてしまい、係長はかなり()()んでしまった。そんな私たちのやり取りの奇妙なオーラに気づいたのか、中山木さんがこちらに全力で走って来た。

「あー、どうも刑事さん。えっと、何かあったんですか、昨日のことで?」

「あ、どうも。我々は、中山道さんの展覧会に行くために来たのですが、このギャルが、陸上競技を見たいって言うもんですから、ここに……」

「えー、ギャルってー、差別的な感じー」

「いや、京子、ギャルでしょ」

「そうねー」

 京子は頭の中が空っぽみたいな感じだった。

「あ、そういや、昨日の件で、中山木さんに仕事の依頼をした方について、お話を伺えませんか?」

 係長がダメ元な感じで尋ねてみた。

「それはダメです! 昨日も言いましたが、守秘義務がありますから、言えません!」

 そう言いながら中山木さんは、太い腕でバツ印をつくった、筋肉を強調しながら。

「ですよね……」

「ええ。ところで皆さん、陸上に興味がおありなんですか?」

 中山木さんは筋肉ポーズを取りながら尋ねた。

「あっ、いえ私は特に興味があるわけでは……」

「私もー、全然ないですー。でもー、俳句よりはー、マシかなー」

「ちょっと、京子。すみません、私も別段、興味があるわけでないです」

 私たち三人が否定すると、中山木さんは悲しさを筋肉ポーズで表現しているように見えた。

「ところで、中山木さんは、どうしてここに? 高校生を指導しているようでしたけど」

「はい、今日は後輩たちの指導をしていました。僕は陸上競技指導員の資格を持っているのです」

「へー、なんかー、よくわかんない資格ー」

「ちょっと、京子」

 京子は相変わらずのKYを発動していた。

「これでも僕は、中学からずっと陸上部でしたから」

 中山木さんは誇らしげに大げさな筋肉ポーズを披露した。

「おお、そうなんですか。ていうか、そんな薄着で寒くないんですか? そうか、筋肉があるから、寒さに強いんだな。私なんか、寒くなってきたらくしゃみが止まらなくなりますよ。ぶあっくしょいぃぃぃぃ」

「汚いー」

「中山木さん、昔からマッチョだったんですか?」

 係長はハンカチで鼻水を拭きながら言った。係長のその言葉に反応して、中山木さんのポーズはより大げさになった。

「そうです。昔から」

 少し中山木さんと世間話をしてから、私たちは中山道さんの展覧会場へと足を運んだ。


ちょっと寄り道しましたね。

中山木探偵、陸上競技指導員ですか。

マッチョなのに、陸上。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ