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名探偵・ザ・グレート  作者: 真山砂糖
16/19

16 変態は忘れた頃にやってくる

この男、やはりwww

 筋肉ポーズを取っている男に、みんな釘付けになった。そう、探偵の中山木ニックさんだった。

「え、中山木さん、どうしてここに!?」

「どうしてー!?」

「あ、そういや、こいつのことすっかり忘れてたな」

 私と京子は面食らっていたが、係長は面倒くさそうに言い放った。

「用があって県警に行ったら、たまたま皆さんが車で出動するところだったんです。それで、尾行させてもらいました」

「尾行? どうやって?」

「もちろん、走ってです」

 中山木さんはポーズを変えながら答えた。

「……え……」

「現役時代のように楽に走れませんでした。年は取りたくないもんですね」

「ここまで、一体何キロあると……」

 係長だけでなく、私も同じ思いだった。

「警察は令状がなければ動けないんでしょう。でも、僕にはそんなもの必要ありませんよ。春日井さん、僕は初めからあなたの怪しさに気づいていたんですよ。よくも僕の母を詐欺ろうとしましたね! 春日井さん、あなたを許すわけにはいきません!」

 中山木さんはいろんな筋肉ポーズを取りながら、怒りの眼差しで春日井のことを指さした。

「え? あんた、あの俳句の先生の?」

 春日井の顔が急に引きつった。

「おい、暴力はいかんぞ」

 係長が注意した。

「誰だ、この筋肉ダルマは?」

 市川がバカにするようにガンを飛ばした。

「ふっふっふっ、よくぞ訊いてくれました。身体(からだ)は筋肉! 頭脳も筋肉! 名探偵・ザ・グレート!」

 タンクトップを脱ぎ捨て、中山木さんは戦隊ヒーローのようにカッコつけて筋肉ポーズを決めた。全員が、目の前で一体何が起こっているのか理解できなかった。ヒーローショーでの正義の味方の自己紹介的な最高の見せ場のひとつのようなことが、現実に目の前で起きているにもかかわらず、その場の誰も受け止めることができなかった。中山木さんがもし爽やかイケメンキャラだったなら、正義のヒーローに見えたかもしれないのだが、実際はそうではなかったから、皆、呆気にとられるしかなかったのだ。

「頭脳も筋肉!? バカかお前!?」

 市川が呆れ顔で睨みつけた。中山木さんは、その言葉に反応して、ファイティング・ポーズを取った。

「おいおい、暴力はいかんぞ!」

 係長は少し焦って注意した。中山木さんはボクサーのように両方の拳を構えながら、無言の威嚇をして、市川との間合いをはかっているように見えた。

「待って下さい、先輩!」

 突然、そう言いながら上川さんが市川の後ろの席からこちら側へ疾走して来た。

「先輩、暴力はやり過ぎです!」

 上川さんは、隠れるように中山木さんの後ろに回った。それから岡村の側へと駆け寄った。

「苺! 先輩って?」

「うん、T県で未だに破られない数々の陸上競技の記録を打ち立てた、T県陸上会のレジェンド、中山先輩よ」

「え、この人が!」

 上川さんの衝撃発言に、岡村だけではなく、私たちも驚いた。

「ふっ、私のことを知っていましたか、麻生けい子さん、いや、上川苺さん」

「え、私のことを?」

「T県の陸上記録で第二位の記録を多く持つ天才女子アスリートを知らないわけはありませんよ。僕が全力で走って追いつけなかったんですからね」

 中山木さんは市川に睨みを利かせながら不必要にカッコつけながら言った。市川はガンをつけながら、すぐ側の天井からぶら下がってる紐を引っ張った。()()()()()()というベルの音の後、数秒ほど経ったが、何も起こらなかった。

「早く、早く来いよ!」

 市川は少し焦りながら紐を何度も引っ張り、()()()()()()()()と不快な音が響いた。

「おう、何だ、何だ」

 係長が奥にある階段の方を見た。すると、ドタバタと足音が聞こえてきて、東南アジア風の男がぞろぞろと六人出て来た。

「お前ら、やっちまえ!」

 市川が命令した。しかし、男たちはきょとんとしてるだけで、特に何をしてくることもなかった。どうやら、言葉が通じてないようだった。市川はキレ気味にスマホを取り出して、急いで両手でタップをし始めた。そして画面を男たちに見せた。

「おう、何だ、翻訳アプリでコミュニケーションを取ってるのか」

 係長は、犯罪組織とはいえ、調和の取れていない様を信じられない感じで見ていた。男たちはそれぞれ顔を見合わせながら、うんうんと首を振り、やっと意図を理解できたようだった。そして彼らはこちらに敵意を向けて戦闘態勢に入った。

「おう、俺のプランB、成功しそうだな」

 係長は呑気にスマホを触りながら言った。

「おう、嶋村、高木、香崎、磯田! 頑張れ!」

 だが突然、係長は活気ある声で命令してきた。

「押忍!」

「えー、係長もー、頑張りましょうよー」

 嶋村先輩と高木先輩は共に腹の底から声を出したが、京子だけはいつものダラダラ感だった。

「俺は上司だから、ここで見てる」

「あの、係長、私は竹刀がないと、戦えません」

 一触即発な状況だが、私は係長に正直に言った。

「おう、そうだな。じゃあ、こっちに来い」

 私はそう言われて、係長の隣の椅子に座った。

「よし、香崎、危険だから、もっと密着してもいいんだぞ」

 係長はそう言いながら、少しずつ私に体を寄せてきた。

「あの、係長、ちょっと、あの、何を……ちょっ、近い、近い、近い」

「小春ー、これ終わったらー、セクハラ相談窓口に通報しよー」

 京子のその言葉で、係長は私から離れていった。

「ちょっと、こんな時に、何をふざけたことしてるんですか!?」

 中山木さんから怒りの言葉が飛んできて、係長はへこんでしまった。


さて、お馬鹿なことやってますけど、どうなる?

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