15 急襲
パイナップルバーへGO!
パイナップルバーが入居している雑居ビル近くに到着した。近くで監視をしていた嶋村先輩と合流し、状況を説明した。ビルの地下一階へ下りてみると、通路の両側に、バー、スナック、ラウンジ等の店舗が並んでいた。時刻は昼の3時。まだ営業時間外だったが、パイナップルバーの入口扉がほんの少しだけ開いているのが見えた。私たちは、顔を見合わせ、アイコンタクトで突入の合図を確認した。重厚な扉を押して、私と係長と京子はバーへ入った。
チリンチリンと鈴の鳴る音が響いた。いくつか配置されているテーブル席のひとつを囲んでいる、オーナーの市川、春日井、ショートヘアの上川苺さんが一斉に私たちの方を向いた。
「まだ、店開いてねえんだけど」
ロン毛に鼻ピアス、シースルーのシャツに腰パンという格好のオーナーの市川が、ダルそうに言った。
「おう、そうみたいだな。じゃあ、開くまで待たせてもらおうかなっと」
そう言って係長は適当な椅子に腰掛けた。
「何だお前!? 姉ちゃんら、面接に来たのか?」
ドスの利いた声で係長を睨みつけ、市川は私と京子にエロそうな視線を向けた。
「あれあれ、春日井さんじゃないですか。どうしてこんな所に? おたくの会社に訊いたら、今日は出勤日だって言ってましたけど」
係長はわざとらしく春日井さんに言った。
「あ、ええ、仕事中ですよ、営業で来てるんですよ、ここに」
春日井さんは不自然な返しをした。
「ふーん、なるほど。ガールズバーに電気シェーバーを売りに来るんですか」
「……え、ああ、その、男性従業員もいますから……」
言い訳に苦しそうだった。私は係長のネチネチした質問に困る春日井をもっと見ていたかったが、ここで余計な打破が入るとは予想していなかった。
「あなたー、上川苺ちゃんでしょー。百貨店でー、おじいちゃんからー、紙バッグを盗んだよねー」
京子が先走りしたのだ。上川さんは驚いて固まっていた。
「ちょっと京子……」
「磯田、フライングだぞ……」
私も係長も顔をしかめるしかなかった。
「お前ら、こら、何しに来たんだ!」
市川が立ち上がって凄んだ。
「おう、嶋村、高木! いいぞ!」
係長が合図を出すと、両先輩が岡村を連れて店に入ってきた。
「……え、正義、どうして……」
「苺! ずっと心配で……」
「上川! 誰だ、こいつら、知り合いか!?」
市川は上から見下ろしてまるで恫喝するように上川さんに訊いた。その態度に京子が怒りの目を向けた。
「警察よー、あなたたちをー、逮捕しに来たのよー」
「京子っ。直接的すぎるのよ」
私はたしなめるように京子に言った。
「警察? 警察が何の用すか? 家捜しでもするんすか? 令状は? もし何も見つからなかったら、えらいことになりますよ」
「いや、俺ら一応、客として来てるんで。あー、ところで、ガールズバーは、カウンターを挟んで一対一で接客しなければいけないんだったかな。このテーブル席じゃ、風営法違反かなっと」
威圧する市川に対して、係長は軽く言い放った。
「はぁ! 文句あんのか、こら!」
「あ、そうだ、春日井さん。なかせんどうさんのファンとおっしゃってましたよね。でも読み方が違うんですよ。なかやまみちさんです。ファンなら、間違えませんよね? どうして中山道さんの自宅の周りをうろついてたんです? 裕福な高齢者の家を見て回ってたんですよね。その件でまた県警までご同行頂いてもいいんですが……」
「……」
係長に言われて、春日井は顔色が急に悪くなった。
「おやおや、春日井さん、なんか、顔色が悪くなってますね」
係長はわざとらしく言った。春日井は唾液を深く飲み込んで何も言い返せないようだった。市川も焦り始めているのがわかった。
「おいこら! まだ店開いてねえんだ! 出ていけ! 110番するぞ! 令状出せ!」
市川は怒鳴り散らしてきた。
「あの、係長、どうしましょうか」
「おう、そうだな。俺の言ったプランBが成功する可能性が大じゃねえか」
「ということは、もっと煽ったほうが……」
私と係長がテンション低くヒソヒソと話していると、突然、店の入口の重い扉がバンと大きな音を立てて全開した。かなり力を入れて押さなければ開けることができないほどの重い扉が、勢いよく開いたみたいだった。
「そこまでです! 話は聞かせてもらいました!」
そこには、笑顔で筋肉ポーズを取っているタンクトップと短パン姿の男がいた。
この男、もしや!?




