14 取り調べ3
引き続き、取り調べ。
「おう、香崎、磯田。中山木のことはどう思う?」
「私は、詐欺事件とは無関係だと思います。単に転ばされただけなのかなと思います」
「私もー」
「おう、やっぱそう思うか」
係長は数秒深く考えてから、自分のスマホを取り出した。
「おう、嶋村。春日井の様子はどうだ?」
係長は嶋村先輩に連絡を取った。
「え! わかった。女も入って行ったよな? そうだ。おう、わかった。何か動きがあったら至急知らせてくれ」
「係長、嶋村先輩は何と?」
「おう、春日井も今、パイナップルバーにいるそうだ」
「え!? 係長、踏み込むチャンスでは?」
「……課長の判断を仰ごう」
岡村はさらに心配そうな顔をしていた。
私たちは山崎課長と話すために、マジックミラーの向こう側へ回った。課長は眉間にシワを寄せて高木先輩と顔を見合わせていた。
「課長、どうしましょうか?」
「うーん、岡村は嘘をついているようには思えないですし、岡村の彼女と春日井がそのガールズバーに集まっているとなれば、同じ詐欺グループにいることは間違いないでしょうし、叩くには絶好の機会かもしれませんね。ただ、奪われた紙バッグを持っていればいいのですが、現金が新聞紙に替わっているのもバレているでしょうし、どこかで別の袋に交換したということも考えられますしね。しかも令状なしですから、踏み込んでも、マズいことになりかねないですね……」
「課長、その岡村の彼女のことを、複数の捜査員が目撃して追ってるんです。だから――」
「しかし、ウイッグで変装していたようですしね……」
「課長ー、岡村正義にー、現場でー、証言させればいいんじゃないですかー」
「おう、磯田、どういうことだ」
「岡村もー、一緒に連れていけばー、苺ちゃんはー、観念してー、白状しますよー」
「おう、なんか危険だな」
「磯田、それは村田係長の言うように、危険だ。白状しなかったらどうするんだ。今踏み込んでも、相手を警戒させるだけかもしれん」
課長にも危険だと言われて、京子は少しムッとした。
「小春ー、もしー、小春がー、苺ちゃんの立場だったらー、白状するー、しないー、どっちー?」
「んーと、私なら、恋人に言われたら、白状してしまうかもね」
「おう、マジでそうなのか?」
「そんなもんなのか、香崎」
「はい、そんなもんですよ、課長」
男連中は首を少し傾げていた。
「課長、ガールズバーのオーナーですが、どう見ても、DQNなんです。そういう輩は、ちょっと挑発すれば、向こうから手を出してくると思います」
「はぁ、村田係長、それだって上手くいけばの話ですよね」
課長は否定したが、この係長の提案を、私は上手くいくと思った。
「岡村に証言させることで上川苺が罪を認めるか、あるいは、挑発することでバーのオーナーがこちらに殴りかかってくるのか、そのどちらかが起これば、我々の勝ちっていうことですよね」
私は冷静に考えてそう言った。
「おう、プランAとプランBで、フィフティー、フィフティーだな」
「そうねー」
「そうですよね、係長」
私たちはほんの少しテンションが上がった。
「いや、確率でどうこうの話じゃなくて、我々警察は法に則ってだね――」
「課長、春日井がボロを出すことだってありえます」
「プランCねー、そうなればー、フィフティー、フィフティー、フィフティーねー」
課長は熟考していた。でも係長と京子のノリがおかしくて、私は少しクスッと笑った。ここで、無言だった高木先輩が会話に参加してきた。
「あの、僕たち、客としてそのガールズバーに行けば、何の問題もないんじゃ……。別に上川苺と春日井が罪を認めなくても、バーのオーナーが先制攻撃してこなくても、普通に客としてなら……」
「おう、そうだよな高木、いいとこに気づくじゃねえか。課長、踏み込みましょう」
「課長!」
私たち四人の声が揃った。
「……ん、あれ? 何か、レトリックで騙されてない? ん? あれ?」
「課長!!」
再度四人一斉に困惑する課長に圧をかけた。
「えーい、わかった、許可します。パイナップルバーへ行きなさい!」
課長は声が半分裏返りながら命令を出した。何か腑に落ちない気がしてるようで、課長の頭の上にはてなマークが見えそうだった。
「岡村、行くぞ!」
係長が取調室の岡村に声をかけた。
「え?」
「彼女を助けに行くんだよ! お前も来い!」
「はい!」
岡村は一気にハイテンションになり、精悍な顔つきに変わった。
山崎課長を一人残して、私たちはパイナップルバーまで車を走らせた。
どうやら、岡村の言ったことは本当のようですね。
それで、パイナップルバーへ乗り込みですね。




