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何度死んでも、俺は人間側じゃないらしい  作者: 東海林


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8話

「黒瀬ー、手伝え」


「やだ」


「即答かよ」


教室の中はいつもより騒がしい。

文化祭準備。


普段ならどうでもいいイベントだけど、今日は余計にうるさく感じる。


「お前、クラスのやつなんだから働けよ」


佐藤が段ボール抱えながら言ってくる。


「働いてるだろ」


「どこがだよ」


「精神的に」


「帰れ」


正論。


「……」


周りを見る。飾り付け。ポスター。笑い声。

全部、普通。


「……なんか、違うな」


うまく言えないけど、少しだけ距離がある。

俺と、この空間の。


「黒瀬」


声。振り向く。

一ノ瀬 雫。


「なに」


「……何してるの」


「見れば分かるだろ」


「何もしてない」


「してる。精神的に」


「……帰って」


「ひどくね?」


でもまあ、いつも通りか。


「……今日」


一ノ瀬が小さく言う。


「……夜、出る」


「だろうな」


イベントとか関係ない。

あいつらは。


「……来るなよ」


「来る」


「だと思った」


ため息。


「……じゃあ昼は楽しめよ」


適当に言う。


「……楽しくない」


「なんで」


少しだけ、間。


「……あなたがいるから」


「俺のせいかよ」


「……うん」


即答。ひどい。



文化祭当日。

校内は人で溢れてる。


知らない顔ばっかり。他校のやつとか、近所の人とか。


「……多いな」


「そりゃ文化祭だしな」


横で佐藤が焼きそば焼いてる。


「お前もやれよ」


「無理。火は危ない」


「なんでだよ」


「爆発するかもしれん」


「しねぇよ」


いや、するかもしれんだろ。

俺が関わると。


「……黒瀬」


一ノ瀬が来る。今日も制服。

仕事モードらしい。


「……異常なし」


「報告ありがとう」


「……でも」


少しだけ声が低くなる。


「……嫌な感じがする」


「いつもだろ」


「違う」


首を振る。


「……近い」


「へぇ」


じゃあそのうち来るな。


「……気をつけて」


「お前もな」


軽く返す。



夕方。


「……ほんとに来たな」


人混みの中。それはいた。

普通の人には見えてないでも、確実にいる。


「……最悪だな」


こういうのが一番ダルい。人が多い場所で出るやつ。


「黒瀬」


一ノ瀬が横に来る。


「……あれ」


「見えてる」


「……ここでやる」


「やるしかないだろ」


放っとくと被害出る。

それは面倒だ。


「……人、避難させる」


「頼む」


その方が楽。一ノ瀬が動く。

周りに声をかけて、人を散らす。


上手いな。さすが慣れてる。


「……さて」


刀に手をかける。


「文化祭で怪異討伐とか、やってらんねぇな」


それが動く。人の影に紛れる。

見えづらい。


「……やりにく」


でも、


「……やるしかねぇか」


踏み込む。振る。

当たる。


浅い。


「ちっ」


次の瞬間、横から衝撃。

吹き飛ばされる。


「……ぐっ」


床に転がる。


「……クソ」


人混みのせいで動きが制限される。


「……一回死ぬか?」


頭をよぎる。リセットすれば楽になる。


「……いや」


今回はダメだ。人が多すぎる。

巻き込む。


「……面倒だな」


立ち上がる。

それが迫る。


速い。


「っ!」


避ける。ギリギリ。

でも、


「……足りねぇ」


このままだと削りきれない。

その時、


「――黒瀬!」


一ノ瀬の声。振り向く。


「……終わった」


人の避難、完了。


「……ナイス」


これで遠慮はいらない。


「行くぞ」


「……うん」


同時に動く。それが反応する。

今度は速いでも、


「見える」


もう慣れた。


「右!」


一ノ瀬が斬る。


「次、後ろ!」


俺が当てる。連携。

悪くない。


「……いけるな」


最後。それが大きく動く。


「――今!!」


同時に踏み込む。

一ノ瀬の斬撃。


俺の一閃。重なる。

それが裂ける。


消える。静寂。


「……終わり」


息を吐く。


「……黒瀬」


一ノ瀬がこっちを見る。


「……今、死ななかった」


「まあな」


「……珍しい」


「失礼だな」


でも事実。


「……どうして」


「人がいたから」


それだけ。


「……」


一ノ瀬が少しだけ目を細める。


「……やっぱり」


「なに」


「……分からない」


「だろうな」


俺も分かってない。




夜。


文化祭はまだ続いてる。でも、


「……帰るか」


もういい。十分だ。

背を向ける。その時、


「……黒瀬」


呼ばれる。振り向く。

一ノ瀬。


少しだけ、いつもと違う顔。


「……今日は」


少しだけ間。


「……楽しかった?」


「……」


考える。


「……まあ、ちょっとは」


嘘じゃない。


「……そう」


少しだけ、ほんの少しだけ、嬉しそうな顔。

でもすぐ戻る。


「……でも」


声が落ちる。


「……また夜になる」


「だな」


「……終わらない」


「終わらせるしかねぇだろ」


軽く言う。でも、


「……できるの」


「知らん」


正直。


「……でも」


刀を軽く叩く。


「やるしかねぇ」


それだけ。


「……」


一ノ瀬が黙る。

その目は、どこか遠くを見てる。


「……黒瀬」


「なに」


「……あなた」


少しだけ迷って、


「……消えないで」


「――」


それは、冗談でも軽くもない。


「……努力はする」


それしか言えなかった。


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