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何度死んでも、俺は人間側じゃないらしい  作者: 東海林


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5話

夜。


「……終わってねぇのかよ」


同じ時間。同じ場所。

同じ嫌な予感。


「……あれ倒したよな、昨日」


一応確認してみる。返事はない。

当然だ。


「……まあいい」


どうせまた出る。

この巻き戻りは、そんなに優しくない。


「……黒瀬」


後ろから声。振り向くまでもない。


「来るなって言ったよな」


「来る」


「だろうな」


一ノ瀬 雫。

昨日より少しだけ距離が近い。


「……今日は、別の反応がある」


「反応?」


「怪異の気配」


「へぇ」


つまり、別個体か。


「……面倒だな」


「逃げる?」


「逃げても無駄だろ」


どうせどこかで死ぬ。

それなら、ここで処理した方が楽だ。


「……来る」


一ノ瀬が刀を構える。


空気が変わる。重い。

昨日の影とは違う。もっと、粘つく感じ。


「……新種か?」


「分からない」


次の瞬間。

地面が崩れた。


「は?」


いや、崩れてない。沈んだ。

影が、地面から浮き上がる。


人の形でも輪郭がぐにゃぐにゃしてる。


「……気持ち悪ぃな」


「気をつけて」


言われなくても。それが、笑った気がした。

顔なんてないのに。


「――来るぞ」


一ノ瀬が踏み込む。


速い。斬る。

でも、


「……効いてない?」


刃が沈むだけ。手応えがない。


「やば――」


足元。影が伸びる。


「っ!」


避ける。ギリギリ。

でも、


「――遅い」


それが、喋った。

低い声。人じゃない音。


次の瞬間、視界が潰れた。



「……っは」


戻る。


「……またかよ」


額を押さえる。


「……今の、普通に喋ったよな」


レベルが違う。


「……クソ」


こういうのが一番めんどくさい。

パターンが読めない。


「……でも」


死ねば分かる。

何回かやれば、攻略できる。


「……ほんと、ゲームだな」


クソゲーだけど。



2回目。

3回目。

4回目。


「……だいたい分かった」


息を吐く。

あいつ、攻撃じゃなくて飲み込むタイプだ。

触れたら終わり。


「……一ノ瀬がいると詰むな」


正直、守りながらだとキツい。


「……でもな」


放っとく選択肢はない。


「……めんどくせぇ」


ほんとに。



路地。


「……黒瀬」


「なんだよ」


「顔色、昨日より悪い」


「気のせい」


「……違う」


じっと見てくる。


「……何かしてる」


「してない」


「……してる」


しつこい。


「今それどころじゃねぇだろ」


「……来る」


空気が歪む。それが現れる。


「下がれ」


「嫌」


「だろうな」


知ってた。


「じゃあ死ぬなよ」


「……」


一瞬、止まる。

でも、


「死なない」


「そう言うやつが死ぬんだよ」


俺みたいに。




戦闘。

何度も繰り返した流れ。

全部なぞる。


「右!」


一ノ瀬が反応。避ける。


「足元来る!」


「……っ!」


ギリギリで回避。


「……なんで分かるの」


「勘」


「……嘘」


まあな。でも今はいい。


「あと一回でいける」


「……?」


説明する時間はない。


「俺が囮になる」


「却下」


即答。


「間に合わねぇんだよ」


「ダメ」


「いいから聞け」


強引に言う。


「俺が前出る→あいつ俺狙う→その瞬間に斬れ」


「……死ぬ」


「死ぬなって」


軽く笑う。


「慣れてる」


「――それ」


一ノ瀬の声が少し強くなる。


「やめて」


「無理」


「……どうして」


「一番効率いい」


事実だ。それだけ。


「……嫌」


ぽつりと。


「……それ、嫌」


「わがまま言うなよ」


時間がない。

それが動く。


「――行くぞ」


前に出る。

視線が集まる。狙われる。


「ほら来た」


黒い影が迫る。

飲み込まれる直前、


「――今!!」


叫ぶ。一ノ瀬が動く。

迷いがある。一瞬遅い。


「……遅ぇ」


飲み込まれる。視界が暗くなる。


「……ほんと、不器用だな」


最後に見えたのは、悔しそうな顔。



「……7回目」


戻る。


「……次で決める」


パターンは完全に見えた。

問題は――


「……あいつだな」


迷うと遅れる。それが命取り。


「……どうすっかな」


少し考えて、


「……まあいい」


やることは一つ。



最後の周回。


「……黒瀬」


「なんだ」


「さっきのやつ」


「うん」


「やらないで」


「やる」


即答。


「……なんで」


「終わらせるため」


「……」


一ノ瀬が黙る。

そして、


「……なら」


顔を上げる。


「絶対に、外さない」


「……頼む」


それでいい。




戦闘。流れは同じ。

ズレはない。


「来るぞ」


それが動く。


「――今だ」


前に出る。狙いが俺に来る。


「黒瀬!」


「いいから!」


影が迫る。

飲み込まれる、その直前


「――ッ!!」


一ノ瀬の一撃。今度は迷いがない。

完全に、核を断つ。

それが崩れる。消える。


静寂。


「……終わったか」


そのまま、膝をつく。

ギリギリ、死んでない。


珍しい。


「……黒瀬」


声。近い。


「……なんで」


またそれか。


「だから」


息を吐く。


「効率いいって言っただろ」


「違う」


強く否定。


「……そうじゃない」


「じゃあなんだよ」


少しの沈黙。

そして、


「……あなた、死ぬ前提で動いてる」


「――」


バレたか。


「……おかしい」


「今さらだろ」


「違う」


首を振る。


「……普通じゃない、じゃない」


一歩近づく。


「……壊れてる」


「ひどくね?」


笑う。

でも、少しだけ納得してる自分がいる。


「……黒瀬」


一ノ瀬が手を伸ばす。

俺の腕を掴む。


「……あなた」


少しだけ震えてる。


「……何回、死んでるの」


「……さあな」


数えてない。


「……嘘」


「ほんとに」


分からない。

途中から、どうでもよくなった。


「……ねえ」


一ノ瀬の声が、少し低くなる。


「……あなた」


その目は、もう疑いじゃない。


「……人間側じゃないよね」


「――」


夜の空気が、少しだけ重くなる。

その瞬間、


「……そこまでだ」


知らない声。振り向く。

路地の入口。スーツ姿の男が立っていた。


その後ろに、数人。

全員、同じ気配。


「……一ノ瀬 雫」


男が名前を呼ぶ。


「……任務ご苦労」


「……城崎」


一ノ瀬の声が変わる。

少しだけ、硬い。


「その男」


視線がこっちに向く。


「……回収対象だ」


「は?」


意味が分からない。


「……黒瀬 湊」


名前を呼ばれる。


「君は――」


男が、わずかに笑う。


「危険すぎる」


その言葉で、理解した。


「あー……」


ため息。


「そっち来るか」


敵認定。


予想はしてたけど、


「……めんどくせぇな、ほんと」


現実になると、だいぶダルい。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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