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何度死んでも、俺は人間側じゃないらしい  作者: 東海林


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3話

「――またか」


視界が暗転する直前、思ったのはそれだけだった。


「……っは」


息を吸う。肺に空気が入る感覚が、やけに生々しい。


「……4回目」


呟く。時間は少し巻き戻っている。

路地に入る前。まだ影と接触していないタイミング。


「……クソ」


腹のあたりを押さえる。

傷はない、けど感覚だけは残ってる。

抉られるみたいな、嫌な感じ。


「……あれ、普通に強ぇな」


今までの中でも、割と上位だ。

というか――


「一ノ瀬がいる分、面倒くせぇ」


あいつ、確実に巻き込まれる。

さっきもそうだった。

俺が死ぬだけならまだいい。でも、あいつが死ぬのは違う。


「……はぁ」


ため息。正直、関わりたくなかった。

でも――


「放っとくと死ぬしな」


俺じゃなくて、あいつが。

それはなんか、後味が悪い。


「……行くか」


どうせやることは同じだ。

何回か死んで、正解探すだけ。



路地の手前。


「……来るなって言ったよな?」


振り向くと、やっぱりいた。

一ノ瀬 雫。


「来る」


即答。ブレないなこいつ。


「死ぬぞ」


「死なない」


「いや死ぬ」


「……?」


噛み合ってない。

まあいいか。


「とりあえず下がってろ」


「嫌」


「だろうな」


知ってた。


「じゃあせめて、俺の後ろいろ」


「……命令?」


「お願い」


少しだけ考えて、


「……分かった」


意外と素直に引いた。

助かる。


影はやっぱりそこにいた。


同じ場所。同じ形。

けど――


「……動くの、ちょっと早いな」


前の周回より、反応が速い。

気づかれてる。


「まあいい」


一歩、踏み込む。


影が揺れる。来る。

黒い腕が伸びる。

――ここで死ぬ(1回目)


横にずれる。ギリギリで回避。


「っ……!」


風圧だけでも、重い。

当たったら終わりだな、これ。


「……一ノ瀬」


「なに」


「右、気をつけろ」


「……?」


次の瞬間、影の一部が分裂する。


「っ!?」


一ノ瀬が反応する。ギリギリで受け止める。

火花が散る。


「……読んでたの?」


「勘」


適当。でも当たってる。

何回も死んでるからな。


「……」


一ノ瀬が一瞬だけこっちを見る。

その隙。


影が本体を動かす。

速い。


「っぶな――」


間に合わない。


「――下がれ!!」


叫ぶ。同時に、体が動く。

一ノ瀬を突き飛ばす。代わりに、俺が前に出る。


「……またこれか」


黒い腕が、胸を貫く。

鈍い衝撃。呼吸が止まる。


「……ほんと、雑だな」


視界が揺れる。

一ノ瀬の顔が見える。


さっきより、はっきりとした驚き。

そりゃそうだ。また同じやつが、同じように死ぬんだから。


「……なに、してるの」


声が、遠い。


「……仕事」


適当に返す。

本当は違うけど。



「……5回目」


戻る。もう慣れた。


「……あと2、3回でいけるか」


パターンは見えた。


分裂のタイミング。

本体の動き。

狙い。


「……問題は」


一ノ瀬だ。

あいつがいると、どうしてもズレる。

守る必要が出るから。


「……でもなぁ」


放っとけない。めんどくさい性格してると思う。

ほんと。



再び、路地前。


「……来るなって言ったよな」


「来る」


「はいはい」


もういいや。


「……今度は絶対下がってろ」


「理由は」


「邪魔」


「……分かった」


ちょっとムッとした顔。

でも引いた。これでいい。



戦闘。

同じ流れ。でも今回は違う。


「右!」


一ノ瀬が反応。

分裂、回避。


「次、左から来る」


「……!」


受ける。完璧。


「本体、3秒後」


「……なにそれ」


「いいから」


数える。


1、2、3ーー

影が動く。


「……っ!」


一ノ瀬の一撃が、初めて当たる。

わずかに削れる。


「効いてる!」


「だな」


でも足りない。まだ来る。


「……あと一回」


呟く。ここで、また一手。

俺が前に出る。


「黒瀬!」


「いいから」


影が俺に反応する。

狙いが逸れる。その瞬間。


「――今」


一ノ瀬が踏み込む。


一閃。


今度は、深く入る。

影が大きく歪む。


「……これで」


終わり、か。そう思った瞬間。

影が、こっちを見た。


初めて、明確に。


「……あ」


嫌な予感。次の瞬間、

俺の首が、飛んだ。



「……はぁ」


戻る。


「……6回目」


頭を押さえる。


「……ラストだな」


今ので分かった。

あいつ、最後に俺を狙ってくる。


「……ほんと、性格悪ぃ」


でも逆に言えばそこが隙だ。



最後の周回。


同じ路地。同じ影。


「……黒瀬」


一ノ瀬が呼ぶ。


「なに」


「あなた、何か隠してる」


「隠してるよ」


あっさり認める。


「……やっぱり」


「でも」


少しだけ、笑う。


「今は味方だ」


「……信用できない」


「だろうな」


それでもいい。どうせ


「今回で終わる」


一歩、前に出る。


戦闘開始。流れは同じ。


全部なぞる。

ズレはない。

そして――最後。


影が俺を見る。


来る。分かってる。

だから、


「――今だ、一ノ瀬!!」


叫ぶ。俺に向かってきたそれを、あえて引きつける。


黒い腕が伸びる。


「黒瀬!」


声。でも遅い。


「……これでいい」


貫かれる直前、


一ノ瀬が動く。


全力の一撃。影を、完全に断つ。

同時に、俺の体も、崩れる。


「……あー、やっと終わった」


安心する。ほんとに、やっとだ。

視界が暗くなる。

その中で、


「……なんで」


一ノ瀬の声。

震えてる。


「……なんで、そこまで」


理由なんてない。


「……なんとなく」


それだけ言って、意識が落ちた。


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