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何度死んでも、俺は人間側じゃないらしい  作者: 東海林


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18話

夜。


壊れた路地。静かすぎるほど、静かだった。


「……全部壊す」


黒瀬 湊が、ゆっくりと歩く。

その目は、もうほとんど別のもの。


「……やめて」


一ノ瀬 雫が立つ。

震えている。でも、逃げない。


「……黒瀬」


刀を握る手が、わずかに揺れる。


「……止まって」


「……無理だ」


即答。でも、


「……でも」


ほんの一瞬だけ、目が揺れる。


「……まだいる」


雫が言う。


「……あなた、まだいる」


「……」


黒瀬が黙る。

その奥で、何かが、ぶつかっている。



「……うるせぇな」


低い声。


「……だから言ってんだろ」


別の黒瀬。


「……もう終わりだ」


一歩踏み出す。空気が歪む。


「――来るぞ!!」


誰かの声。でも、もう関係ない。


黒瀬が消える。次の瞬間、目の前。


「――ッ!」


雫が反応する。

ギリギリで受ける。


重い。腕が軋む。


「……遅い」


押し込まれる。


「……っ」


後ろに下がる。


「……黒瀬」


呼ぶ。返事はない。

でも、


「……いるんだろ」


小さく言う。


「……聞こえてるんだろ」



「……やめろ」


小さな声。黒瀬の中から。


「……出てくんな」


重なる声。ぶつかる。


「……黙ってろ」


「……うるせぇ」


「……雫に触んな」


「……邪魔だ」


体が揺れる。

明らかに、中で何かが争っている。


「……黒瀬!!」


雫が叫ぶ。一歩踏み込む。


「……聞いて」


「……来るな」


「……聞いて!!」


強く。その声で、ほんの一瞬、

黒瀬が止まる。


「……」


目が揺れる。


「……助けるって言った」


静かに言う。


「……覚えてる?」


「……」


返事はない。


「……助ける」


一歩、また一歩。距離が縮まる。


「……だから」


涙が落ちる。


「……終わらせる」


その言葉で、黒瀬の目が、はっきりと揺れた。


「……あー」


小さく、笑う。

今度は、ちゃんと黒瀬の顔。


「……やっとか」


「……黒瀬」


「……雫」


名前を呼ぶ。優しい声。


「……悪いな」


「……」


言葉が出ない。


「……もう限界だ」


「……」


分かってる。さっき見た。


「……今なら」


黒瀬が続ける。


「……まだ、俺だ」


刀を持つ手が、震えている。

でも、


「……頼む」


その目は、真っ直ぐ。


「……終わらせてくれ」



時間が止まる。

音も、風も、全部消えたみたいに。


「……やだ」


雫が小さく言う。


「……無理」


「……できない」


「……」


黒瀬が少しだけ笑う。


「……できる」


「……できない!!」


涙が溢れる。


「……助けたいのに」


「……なんで」


「……」


その言葉に、黒瀬は少しだけ黙って、


「……それが」


静かに言う。


「……助けるってことだろ」


「……」


何も返せない。


「……来るぞ」


黒瀬が呟く。目が揺れる。

もう長くない。


「……時間ねぇ」


「……」


「……雫」


最後に、少しだけ笑う。


「……ありがとな」



その瞬間、目が変わる。

完全に、別。


「……終わりだ」


踏み込む。速い。

避けられない。


でも、雫は動いていた。


「――ッ!」


踏み込む。距離、ゼロ。

黒瀬の懐。


「……っ」


迷いはない。もう決めたから。

刃が、届く。


「……あ」


黒瀬の声。小さい。

驚いたような。でも、


「……」


すぐに、笑う。


「……いいな」


血が流れる。


「……それでいい」



雫の手が震える。でも止めない。



「……雫」


最後に、名前を呼ぶ。


「……ありがとな」


静かに、力が抜ける。



黒瀬の体が、崩れる。

音もなく。ただ、その場に倒れた。



「……黒瀬」


呼ぶ。返事はない。


「……黒瀬」


もう一度。何も返ってこない。



夜が、静かになる。

さっきまでの歪みが嘘みたいに消える。



「……終わった」


誰かが言う。


遠くで。

でも、雫には届かない。



ただ、そこに座り込む。

刀を握ったまま。

血が、手に付いている。


「……」


拭えない。動けない。



「……助けた」


小さく呟く。


「……助けたよ」


誰に言うでもなく。

でも、その声は、少しだけ震えていた。


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