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何度死んでも、俺は人間側じゃないらしい  作者: 東海林


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14話

「――来いよ」


黒瀬 湊が笑う。目の前には、それ。

人型。でも人じゃない。


「……逃がさない」


低い声が響く。空気が、重い。

足が沈む。


「……あー」


黒瀬が軽く息を吐く。


「……無理ゲー確定」


一ノ瀬 雫が横にいる。

でも、


「……下がれ」


「……嫌」


「だろうな」


知ってた。


「……でも今回はマジで無理だ」


「……」


一ノ瀬が黙る。でも、動かない。


「……はぁ」


諦める。


「……じゃあ、巻き込まれるなよ」


それだけ言う。


それが動く。

速い。重い。


「っ!」


避ける。


「……は?」


追いつかれる。


「……早すぎ」


刀で受ける。

衝撃。腕が痺れる。


「……重っ」


ただの一撃で、骨が軋む。


「……黒瀬!」


「大丈夫じゃねぇなこれ」


笑う。でも


「……面白ぇ」


少しだけ、本音が漏れる。


「……」


一ノ瀬が息を呑む。

その顔、さっきの言葉と重なる。


――壊れてる顔。


「……まあいいか」


踏み込む。斬る。当たる。

でも、


「……浅い」


ほぼ効いてない。


「……終わりだな」


それが手を伸ばす。

避ける。間に合わない。


「……あー」


腹を貫かれる。


「……やっぱりな」


視界が暗くなる。



「……16回目」


戻る。息を吐く。


「……無理だな」


正直な感想。


「……勝てる気しねぇ」


でも


「……やるしかねぇ」


それも変わらない。



繰り返す。


17回目。18回目。19回目。


「……」


回数が増えるたびに、ズレが大きくなる。


「……やばいな」


判断が遅れる。体が重い。記憶が飛ぶ。


「……これ、先に俺が終わるやつだろ」


笑えない。



20回目。


「……」


静かに立つ。


「……そろそろか」


何がとは言わない。


「……限界」


それは分かる。



戦闘。それが動く。

同じ流れ。同じ死。


「……違うな」


今回は、少しだけ違う。


「……あ?」


体が、軽い。視界が、クリア。


「……なんだこれ」


それが来る。


「……遅い」


避ける。余裕で。


「……は?」


おかしい。明らかに、今までと違う。


「……黒瀬?」


一ノ瀬の声。


「……あー」


黒瀬が、ゆっくりと笑う。


「……なるほど」


その声。少しだけ、違う。


「……これか」


刀を構える。無駄がない。

完璧な動き。


「……今まで、邪魔だったな」


ぽつりと呟く。


「……何が」


一ノ瀬が警戒する。


「……お前だよ」


黒瀬が答える。


「……思考が」


「……」


空気が変わる。


「……黒瀬?」


呼ぶ。


「……違うな」


首を振る。


「……これは」


少しだけ考えて、


「……残りか」


「……?」


意味が分からない。でも、


「……ちょうどいい」


踏み込む。それに向かって。

速い。今までとは別次元。


「……っ!?」


一瞬で距離を詰める。斬る。

深い。


「……効いてる」


それが初めて、揺れる。


「……おいおい」


黒瀬が笑う。


「……最初からこれで良かったじゃねぇか」


その笑い方、明らかにおかしい。


「……黒瀬!!」


一ノ瀬が叫ぶ。

でも、


「……うるせぇな」


一瞥。冷たい目。


「……今、集中してる」


「……」


言葉が出ない。

これは、いつもの黒瀬じゃない。



戦闘が加速する。斬る。避ける。斬る。

全てが最適。


「……遅い」


それの攻撃を、完全に見切る。


「……終わりだ」


最後の一撃。

核を捉える。


「――」


それが崩れる。

消える。静寂。



「……はぁ」


黒瀬が息を吐く。


「……楽だったな」


そのまま、刀を下ろす。


「……黒瀬」


一ノ瀬が近づく。


「……今の」


「……あ?」


黒瀬が振り向く。

その瞬間、目の色が戻る。


「……終わったか」


いつもの声。


「……」


一ノ瀬が固まる。


「……何」


「……覚えてないの」


「何が」


「……」


確信する。


「……今の、あなたじゃない」


「……は?」


黒瀬が眉をひそめる。


「……何言ってんだ」


「……違う」


一歩近づく。


「……目も、声も、全部違った」


「……」


黒瀬が少しだけ黙る。


「……知らん」


結局それ。


「……でも」


刀を見る。


「……勝ったんだろ」


「……」


それは事実。


「……代わりに」


一ノ瀬が小さく言う。


「……何か、出てきてる」


「……」


その言葉に、黒瀬は何も返さなかった。



帰り道。


「……21回目」


小さく呟く。


「……増えすぎだろ」


笑う。


「……まあいいか」


その目は、少しだけ、空っぽだった。

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