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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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68話 まず魔力をざっくり用意しますー!

「それでは御使いには物足りぬかもしれぬが、世界そのものの力……全てをあらしめる力であるところの魔力について、その深淵なることわりを語り尽くそう」


 召喚教授が魔竜姫の四天王時代を彷彿とさせる口調で厳かに宣言すると、リッチに憑依したままの福籠(ふくごもり)梛(なぎ)は深く頷いた。その骨格はミラーボールのように光を乱反射させて輝いている。


 この状態を何とかする為に召喚教授から講義を受けなければならないのだが……。


「御使いでも初心者だから、ホネでも分かるぐらい簡単に言ってもらえると助かるわ!」


「なっ……なん……だと……!?」


「夜遅くてちょっと眠いから、あんまり難しい事言われても頭に入ってこないのよ……」


 鬼人族のレンを探しに地下水路とダンジョンを往復して、倉庫では呪いの首飾りで操られた当の本人に剣戟ファンサをしてもらったので、さすがにそろそろ体力が尽きそうなのだ。


 あと召喚教授がメイドのもっちもちな太ももで膝枕をしてもらいながらの状態で講義をしようとしているのが気になって、頭に入ってこない。


 梛は話を聞く為にリッチの姿で視線の高さを合わせようとして、どうにか正座で落ち着いた。傍目には契約主の命が尽きるのを待つ陰気な死神みたいな絵面である。


 ついでに自分の女子高生時代そっくりのホムンクルスメイドに、頭をなでなでさせるのもいい加減にやめてほしい。


 獣人男子生徒のニビなど、気恥ずかしさで居心地が悪くなったのか、「こ、講義が終わる頃に戻って来るね」と、早々に食堂に丼鉢を返しに行ってしまった。思春期男子には刺激が強かったようだ。


 しかし膝枕効果なのか、召喚教授の挙動不審はおさまっていて、ニビがいなくてもまともに会話ができている。そんなにいいのか、膝枕アンド頭なでなで。


「……ホネでも分かるようにですか……? ええと、つまり要は世界にも骨にも太ももにも満ち溢れているのが魔力です」


「それぐらいのざっくり感でお願いするわ」


「ただ世の中にある力は魔力だけではないので、普段は色んなものと混ざり合ってる状態です。その方が安定しますからね。体にある魔力の場合は、本人の生命力や気や血液などの巡りに溶け込んでいます」


「安定してないとどうなるの?」


「魔術が暴走しているのと同じ状態ですね。そこら中が爆発したり暴風で吹き飛ばされたり氷漬けになったり」


「え、怖っ。ちょっと待って、私のこの状態って大丈夫なの? めちゃくちゃ光ってるわよ」


「ええ、その体……というか、骨の表面には高性能な古代型の魔力回路があるので、魔力は安定した状態で循環できてます。たださっきも言ったように循環している魔力の量が多すぎて漏れているだけなので、暴走しているわけではないのですよ」


「それならいいんだけど……」


 一応、このリッチの体は白キマイラになったキーマの前身だ。間近で見るとつい悲鳴を上げてしまうが、なんだかんだでお世話になっている。


 キーマ本人はモフモフ愛が強過ぎるが故に骨の体に未練はないようだが、だからといって魔力を暴走させて粉砕骨折などはしたくない。


「そして、ここからが本題です」


「眠気が増してきたからさらにざっくりお願いします」


 せめて膝枕やめてくれないかしら。見せつけられるこっちの身にもなってほしいわ。


「膝枕は止めませんが分かりました。魔力を抑える為に必要な事は何だと思いますか」


 梛の視線に込めた言外の思いを正確に受け止めて即座に拒否すると、召喚教授は問うた。


「そうね、話の流れ的にここは無詠唱魔術を習得す……」


「それは無理です」


「被せ気味に不正解にされたわ!?」 


 未だに名探偵気分でざっくり答えたが、全く違ったようだった。


「女神の世界では無詠唱が可能なのかもしれませんが、ここでは魔術を使うのに契約言語が必要になりますから」


「契約言語? もしかしてそれを覚えないと私、魔力を抑えられないの?」


「魔力を抑えるだけなら習得はすぐに必要ありません」


「じゃあ何が必要な事なの」


「体内の魔力を意識する事です」


「……そ、それだけ?」


「はい、それだけです」


「それじゃあ、いつもやってる事と変わらないわ」


「ですので、これを使うのです」


 召喚教授が懐から取り出したのは、結晶でできた小さな人形だった。ちょうど梛の指先から手首ほどの大きさだ。


「かわいいわ!」


 どことなく大地の妖精のセキエイやコクヨウを思い出させる形をしている。


「魔技部で使っている水晶人形です。大会用の初期の試作なので、好きに使って下さい。水晶人形を動かすには魔力が必要です。他の力では動きませんから魔力だけを循環させるよい練習になるでしょう」


 試しにいつもの感じで魔力を込めてみたが、やはり別の力が混ざっているのか小さく振動するだけだ。


 召喚教授の説明で梛はある事を思い出した。


「教授、私もその大会に出るわ!」


「け、決定事項なんですか……?」


 前のめりなリッチの姿に思わずひるんでメイドの足にしがみつく召喚教授。


「レン君が大会の強化選手にさせられてるのよ! 呪いの首飾りがつけられてたわ」


「なんて事だ……もしかすると、他の失踪した生徒達も強化選手にさせられている可能性がありますね……」


「そう言えば、何かレン君以外にも強化選手がいるっぽいような言い方してたような気もするわ。大会に出場して勝ったら自陣に引き込めるんでしょう? 私も選手として参加させてほしいの」


「西塔の魔技部は人手不足なので入部は歓迎しますが……」


「何か問題が!? 実年齢が十代じゃないからダメとか!?」


 召喚教授は膝枕のまま首を横に振って言った。


「とりあえず、人工精霊を動かせない事にはどうにもならないので……」

いつもお読み下さってありがとうございます!16日と17日にまとめ読みして下さった方もありがとうございます!!

次回更新は10月30日頃更新の予定です。

更新時間が遅れて申し訳ありません……。

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