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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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58話 ムサリスさんと再会よー!

 福籠(ふくごもり)(なぎ)の目の前に現れたのは、大地の妖精セキエイに転生していた時にピンチを救ってもらった伝説の大魔道士ムサリスだった。


「ムサリスさーん!」


 嬉しくなって飛びつこうとしていた梛を、モモンガ獣人のムサリスは相変わらずの渋イケメンボイスで待ったをかける。


「おっと、熱い抱擁をしてくれるって言うなら少し待ちな、お嬢ちゃん。この墨をとばさないとな」


 顔の黒い液体をかき上げるムサリス。梛から見ればつぶらな瞳が可愛い二足歩行モモンガだが、白コボルトに転生した今なら分かる。ムサリスが人間なら、かなりのセクシーワイルドなイケオジだ。


 そんなムサリスさんもワンちゃんみたいにプルプルするのかしら。これからムサリスがするであろう可愛い仕草に梛は心ときめかせた。


 ムサリスは横を向くと意識を集中させていく。足を軽く曲げ、片手の手首に逆の手をのせ、上半身をひねる。


「サイドチェストーッ!!」


 恐らく毛皮の下でパンプアップしたであろう筋肉の圧で、ムサリスの体を濡らしていた墨が一気に吹き飛んだ。


「思ってたのと違う!」


 筋肉で服を無駄に弾けさせるアニメや漫画のマッチョキャラみたいな真似をしてフワフワな毛並みに戻ったムサリスが、つぶらな瞳を細めて言った。


「久しいな、お嬢ちゃん。元気そうで何よりだ。まさかこんな所で会えるとはな」


「お久しぶりです、ムサリスさん。前と全然姿が違うのに、私の事分かるんですか?」


「ふっ、お嬢ちゃんの魂の輝きは特別さ。見間違えたりしねえよ」


 脳内シロたんが嬉ションしてしまうぐらいムサリスがカッコいい。


「ムサリスさんはどうしてここに?」


「ダンジョンの調整作業にな」


「調整……? まさかムサリスさんがここのダンジョンを造ったの!?」


「造れと言われれば造れるが、ダンジョン製作は趣味じゃないんでね。俺様が造ったのは安全装置の方さ」


「安全装置って、全滅したらダンジョンの入り口に戻される、あれですか?」


 ミミックに憑依して学園の生徒達と戦った時に、黒い獣にやられた生徒達が光って転移していったのは覚えている。


「ああ、昔に造ってその後すぐに、魔王討伐で冬眠しちまったからな。まさか趣味の悪い古代の迷宮闘技場が学園都市の後進育成用施設に使われているとは思わなかったが、今の時期は競技祭典前とやらでダンジョンを使った実技試験もない。手入れをするにはちょうどいいと思ってな」


 説明していたムサリスと梛の足元が不意に妖しい光を放ち始める。


「むっ、出たな」


 妖しい光は複雑な紋様を浮かび上がらせながら放射状に広がった。床の石畳に魔法陣が完成する。


 ムサリスはモフモフの体からペンとメモ帳を取り出すと、ものすごい勢いで魔法陣の模様を書き写し始めた。


「む、ムサリスさん……?」


「すまん、お嬢ちゃん。話は後だ!」


 怒涛の勢いでペンを走らせるムサリスだったが、一分もしない内にその魔法陣からボスモンスターが召喚された。グネグネと床に這い出す長く大きな何本もの腕。


「これは……クラーケン!」


 鞭のように振るった腕の攻撃をかわすと、魔法陣から距離をとる梛。陣からぬるりと体を出したのは、らぶちゅるちゅの水着撮影で見たのと同じ、イカなのかタコなのかはっきりしない足のやたら多いクラーケンだった。


 胴には見覚えのあるエンブレムタトゥーまでしっかりある。


「あれもホムンクルスなのね」


 ホムンクルスクラーケンは魔法陣の上に残っていたムサリスを目ざとく見つけると、大きな足の一本を振り下ろした。


「せっかち野郎は嫌われるぜ」


 ムサリスの言葉に反応して、手にしていたペンが形を変えて超重量金属杖になる。それを羽のように軽々と持ち上げると、ホムンクルスクラーケンの足を払って胴を一突きした。


 衝撃で爆発四散するクラーケン。胴から大量の墨もまき散らされて、魔法陣の光が覆い隠される。


「ああ、またやっちまったか」


 やれやれと溜息をつきながら首をふるムサリス。ボスモンスターを一瞬で倒したのに、随分と残念がっている様子だ。


「姐さん、扉が開いたぞ!」

「姉御! 部屋から出るなら今ですぜ!」

「またボスが復活しちまうよ姉貴!」


「ちょっと、その呼び方で固定するつもりっ!? 私をおねえさんって呼んでいいのはレン君だけよっ!」


 梛は気付いていなかったが、部屋に入ると扉が勝手に閉まる仕組みらしい。入り口で元野盗達が騒いでいるが、やはり誰も部屋には入ってこなかった。


「ムサリスさん、さっきから何を……?」


「足元に魔法陣があっただろう。あれがさっき言った安全装置だ。ただし、随分と書き換えられてやがる。いや、書き加えられていると言った方がいいのか。とにかくやたら細かくて七面倒臭い代物にかわっちまっててな。全体を把握しようにもボスが弱くてすぐ消える」


「その杖で殴るからでは」


 ムサリスにとってはダンベル代わりだが、大の男が数人がかりで持ち上げるのがやっとという超重量金属杖だ。威力も桁外れのはずだ。


「魔術とかで拘束できないんですか」


 イケオジキャラと筋肉がクローズアップされがちだが、ムサリスはそもそも魔道士だったはず。


「拘束は出来る。出来るが、ダンジョンが跡形もなく消える」


「杖でお願いします! 私も手伝いますから!」


 魔王討伐に行った魔道士の実力を甘く見ていた梛だった。


「ボスの体が残っていれば魔法陣も消えずに済んで、ゆっくり書き写せるんだが……」


「……クラーケンの体が……あっ」


 梛は今の今まですっかり忘れていたものを青いキューブから取り出した。


 それは水着撮影で乱入して、きゅーみーに返り討ちにされたホムンクルスクラーケンだった。

いつもお読み下さってありがとうございます! 9日と10日にまとめ読みして下さった方もありがとうございます!! 少し遅れて申し訳ありません。コツコツ書き続けますー!

急に暑くなってきました……。こまめな水分補給とエアコンフル活用でお体ご自愛下さいませ。

次回更新は7月20日頃を予定しております。

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