表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/64

57話 おねえさんって呼ばないでー!

「野盗か……そういえば昔に、そんな事をしていた時期もあったっけな……」


「しっかりして、つい最近の出来事よ」


 遠い目で懐かしむ野盗の男達を助け起こしながら、福籠(ふくごもり)(なぎ)はツッコんだ。


「あの情報屋に館のメイドを(さら)ってくれば大金が手に入るなんて、そそのかされてさえいなければ……今頃おれ達はただの野盗でいられたのに……」


「安心して、今もただの遭難した野盗のままよ」


「いいや、そんな生温い野盗はもういない。オレらはあの地獄を潜り抜けてきたんだ」

「複雑怪奇な出口の見えない地下水路に、見る間に尽きていくわしらの食糧」

「学園管轄のダンジョンにまで迷い込んだ末に、モンスターにやられても安全装置の転移先がボス部屋で、戦闘開始3秒で全滅ボス部屋復活3秒全滅の繰り返しで脱出不可能ループにハマるおれ達……これでもまだ生温いと?」


「盛大に迷子になって後先考えずにやけ食いして勝手に窮地に陥ってたけど、ここまで脱出できてるじゃない」


「それは後からボス部屋に来たやつに助けられたんだ。かっけえよな……主人公ってのはああいうやつの事を言うんだろうな」

「ダンジョンで不測の事態に陥ったとしても、ずっと己の美学と信念を貫けるのは生中な覚悟じゃできんさ」

「途中で恐怖のあまり仲間とこんなボス部屋だったら入り浸りたいお題で大喜利大会始めちまうおれ達とは何もかもが違う。結局おれ達は、過去の栄光から抜け出せない野盗の抜け殻なんだ……」


「抜け出せない抜け殻ってどういう状態よ。それより、その助けてくれた人って誰? 学園の管轄してるダンジョンってことは、生徒の誰か? もしかして行方不明の西塔の生徒さんなのかしら……」


 レンの行方は気になるが、こちらの話も放置するわけにはいかない。もし西塔の生徒なら助け出して、彼らを待つ召喚教授やニビの元に送り届けないと。


「どうだったかのう……だが鬼神の如き戦いぶりだった……」

「オレらが何度攻撃しても傷ひとつつかないボスモンスターを、拳ひとつでなぎ倒したんだ」

「おれは戦闘で目をやられちまったらしいな……助けてくれたあんたの姿すら見えないのに、肉弾戦を繰り広げていたあの姿を語る事も出来ないなんて……」


「姿が見えないのは視力の問題じゃなくてこれのせいじゃないかしら」


 梛が手のひらに水晶をのせてみせる。召喚教授から渡されていたこの水晶のおかげで、人目につかずに地下水路まで来る事ができたのだ。懐から取り出したからなのか、梛の思考に反応したのか、水晶は梛の姿をあらわにした。


「美少女巨乳メイド……!」


 黒髪お下げと眼鏡はいかにも変装用っぽい。それを取り払ったらあの情報屋が息を荒げながら攫ってこいと言っていたメイドの姿とよく似ている。自分達のことも知っている風な態度をしているし、あの森の中の館にいたメイドに違いない。


 だがもう、地下水路とダンジョンで散々な目にあった後では、情報屋の儲け話に乗る気は一切失せていた。自身を攫いに来た野盗だと知っても、助け起こしてくれる相手を売るほど性根が腐っていなかった事に、野盗達は顔を見合わせて苦笑いした。だったらこのメイドに迷惑をかけた分、恩を返す方がいい。


「特級品の結晶じゃないか。こんなの東塔の貴族でも持ってるやつほとんどいないぞ」

「水晶人形に使ったら回避性能の限界値超えるんじゃないか」

「これあんたが作ったのかい」


「召喚科の教授から借りてるだけよ。そんなすごい性能があるのに、よく私がいるって分かったわね」


 召喚教授に渡されていた水晶で、梛の姿と気配は知覚できないはずだった。


「おれは熱源を感知できる能力があるから、どんな暗がりでもあんたの見事な巨乳のシルエットははっきり分かるのさ!」

「わしは静電気でおまえさんの巨乳の揺れを感知できるぞ!」

「オレは超音波で巨乳の位置をおっかけられるよ!」


「セクハラ野盗集団じゃないのっ!」


 助け起こしていた野盗達をまとめて巴投げしてから梛は言った。


「そのボス部屋に案内して。行方不明になってる生徒さんかどうか確認したいわ」


 ぶん投げられた割に、野盗達は素直に梛をダンジョンのボス部屋まで案内した。


「姐さん、ここが例のボス部屋だ」

「気をつけてな、姉御」

「姉貴、まだ中から音が聞こえるよ」


「何で年上の野盗から姐さん呼ばわりされてるのかしら……」


「おれ達を介抱してくれたじゃないか、姐さん」


「その後投げ飛ばしてるんだけど……」


「そんなのは可愛いもんだ。わしらは姉御についていくぜ。元々、野盗なんてガラじゃなかったしな」


「ついてくるんだ……」


「だけどボス部屋には入らないぜっ」


「そこはついてきなさいよ」


 ツッコミを入れたが、元野盗達は頑として首を縦には振らなかった。確かに3秒全滅ループは心が挫けるかもしれない。


 ボス部屋の扉を開くと、誰かが奥でボスモンスターと戦っている姿が見える。だが、入り口付近からでははっきりとは分からない。背丈からして子供だろうか。入るしかなさそうだ。


 部屋の奥へと向かうと、熱気とともに黒い霧が周囲を覆っていた。


 黒い霧の中で、ボスの大きな腕がうねる。床に叩きつけられると、そこから黒い飛沫が飛び散った。


「なにこの黒い霧……!?」


 驚愕する梛に気付いたのか、霧の中からボスが再び腕を振り下ろす。


 腕は一本ではなかった。霧の中から、何本も現れて鞭のようにしなる。


「何か見た事あるシルエット!」


 振り下ろされる腕をよける前に、横から飛び出してきた影が鞭状の腕をまとめて払いとばした。


 風圧で黒い霧が晴れてくる。梛の前に立っていたのは、墨で真っ黒になったモモンガ獣人だった。


「む……ムサリスさん!?」


「久しぶりだな、お嬢ちゃん。墨の滴る俺様もいいもんだろ?」

いつもお読み下さって本当にありがとうございます! 25日と27日に一気読みして下さった方々もありがとうございますー! 励みになっておりますー! 

次回更新は7月10日頃を予定しております。まだしばらくバタバタで文字数少ないですがコツコツ頑張ります……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ