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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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51話 教授には会えたけどー!

 自分のムッチムチの足にしがみついた褐色肌尖り耳の召喚教授が魔竜姫の四天王だと聞いて、福籠(ふくごもり)(なぎ)は混乱していた。


「ちょっと待って。四天王って魔王の配下の事じゃなかったの?」


(まさ)しく私は御身の忠実なる下僕(しもべ)にして神世の扉を開き真なる名を探求せし魔獣の使役者かつ長命の闇なる眷属でありながら……」


「情報過多っ! 朝礼でためになりそうな話を全部ぶっ込もうとして結局何が言いたいのか分からない上司のスピーチみたいになってるんだけど」


「あの頃は部下四人を四天王と呼び習わすのが流行っておりましたので、魔王直属の部下から辺境のガキ大将の取り巻きまで、巷は四天王で溢れ返っておりました」


「流行語だったのね」


 前髪で目元はよく見えないものの、召喚教授は梛の艶を帯びた足にしがみついたまま生き生きとした口調で説明する。引き剥がそうとしているのに糊で貼り付けたようにしがみついていた。さすが四天王。


「……つまり、魔王にも魔竜姫ちゃんにもそれぞれ四天王がいたって事ね。紛らわしいわー」


 尖がり耳を引っ張っても却って喜ぶばかりで全然痛がっている様子もない。さっきまでの陰キャっぷりはどこへ行ったのかと思うほどの押しの強さだ。


「思い出しゅたにゃ。我してんのー会議のほー告記録でこいちゅ見たでしゅ。あの頃はまだでっかい魔どー書抱えた子供だったにゃ。我のちゅくった人工生命も簡単に呼び出して使役獣にできるでしゅよ。しょー喚能力の高さは魔王軍してんのーもいちゅ目置いてましゅた」


 梛の額の宝石を通して、魔王の元四天王だったキーマがこっそりと解説してくる。そう言われれば楼閣群島でも早駆け神事でシャイヤール達を襲ったのは大量の黒い獣だったが、それを召喚していたのは、ハルピュイアに囚われていたこの教授だ。


「何でそんなすごい能力があるのにハルピュイアの奴隷になってたのかしら」


「それは私が四天王の中で最弱だからです!」


「どっかで聞いたセリフ」


「我と一緒で研きゅー室引きこもりタイプにゃ」


「あのー……」


 様子を見守っていた獣人生徒のニビが遠慮がちに手を上げる。テンションの高い召喚教授が嬉々として指名した。


「はい、ニビ君どうぞ!」


「さっきから聞いてて思ったんですけど、この人が魔竜姫……」


「魔竜姫様だ! たとえ極めて少ない我が理解者であっても、魔竜姫様を呼び捨てにするなどあってはならん!」


 私と一緒で友達少ないのね……と、梛はさらに親近感溢れる眼差しで召喚教授にギロチンチョークをかけた。全然落ちない。頸動脈がタフ過ぎる。最弱とは言えどもさすが四天王だ。


「女の子にしがみついた格好でそんな事言われてもなあ……。まあ、それはともかく、この人は魔竜姫様本人じゃないと思うんですけど」


「えっ……」


「本人だったらわざわざ自分の配下である教授に四天王の説明なんか聞かないですよね」


 ニビに指摘されてようやく召喚教授が我に返った。前髪で隠れた状態でも分かるほど顔が青ざめる。


「そんなっ!? この真珠の如き膝頭の艶とふくらはぎの曲線など、どう見ても魔竜姫様そのもの!」


「骨格と筋肉の解析大変だったにゃ……」


 キーマがしみじみと呟く。


「生徒にメイドの足を熱く語るのどうなんですか。それより魔竜姫ちゃんって呼んでたけど、どういう関係なの?」


「そ、そうだ! 私だってちゃん付けで呼んだ事ないのに!」


「あっ、言っちゃってたわね……。あー、そうなの。実は私、魔竜姫ちゃんの竜牙兵の体を借りてた事があって……」


「それってもしかして、女神様の御使いってこと? 都市伝説じゃなかったんだ! じゃあ、あの海の向こうの女神様の世界って、海底国の守護海獣が起こす蜃気楼とかじゃなくて本物なんだね!」


 今度はニビが興奮した様子で梛に迫る。その足元で、召喚教授が空気の抜けた風船のように頭を抱えてうずくまった。


「女神の御使い……!? どうしよう魔竜姫様じゃなかったどうしよう十年そこらの人間女子にしがみついて下僕ですとか足舐めさせてとか言ってたってある事ない事学園中に言いふらされて陰でキモロリ教授呼ばわりされるどうしよおおおおお……!!」


「どうもしないわよ。教授さん、何か女子生徒にトラウマでもあるの……?」


「あ、気にしないで。素だといつもこんなだから」


「本当に理解あるのね、ニビ君……」


 自分が学生の頃にこんな先生がそばにいたら、面倒くさくて逃げてしまっていただろう。


「こう見えて結構頼りになるんだよ。部活の顧問もやってもらってるし」


「えっ、クラブ活動とかあるの?」


「たくさんあるよ。興味ある? 学科の内容に関係なくても部員さえ揃えば自分で新しく立ち上げてもいいんだよ」


「うわー! 楽しそうね、それ!」


 ずっと帰宅部だった梛には部活は憧れイベントだった。ただ実際当時はオタ活以外にそこまで打ち込めるものがなかったのだ。そう思い込んでいただけかもしれないが、ひとつの好きなものに夢中になり過ぎて周りに目を向ける暇がなかった。


「我部活よく知らないにゃ。何でしゅか?」


「部活! それはかっこいい先輩や可愛い後輩や熱い仲間達と切磋琢磨しながら友情と恋に揺れつつもみんなで全国を目指したり、まったり日常系な感じでゆるーくグルメやガジェットやアウトドアギアを楽しみ、思い入れのある交通機関で観光スポットを巡ったりする事よ、キーマたん!」


 情報源がほぼラノベとアニメと漫画なので、余計に青春と癒しの要素が凝縮されて梛の脳内で燦然と輝きを放っていた。


「まったり部活楽しそうにゃ。我お弁当ちゅくって野掛け遊びしゅるモフモフ観察部がいいにゃ……」


「つまりモフモフを愛でるピクニックね! 双眼鏡持ってモフモフ観察する可愛いキーマたんが一番観察されそうっ。ニビ君は何の部活してるの?」


「僕が入ってるのは水晶魔技部だよ。魔技科の発足と同時に設立されたんだけど、部としては貴族クラスの方が有名で、こっちの西塔は最近まで資金難とかで休部してたんだ。また休部になりそうであんまり活動できてないんだけど……。さっき見せた水晶を独自に設計して、魔道具なんかを制作したりするんだ。今度の競技祭典では国の内外から参加者が集まって大会が開かれるんだよ!」


 ニビの頭にいた小鳥も嬉しそうに羽をぱたつかせている。この小鳥も水晶人形だ。


「つまり動くフィギュアの原型師の頂点を競うって事ね?」


「僕の説明ちゃんと伝わってるか若干不安だけど、まあ多分そんな感じだと思う。良かったら見学する?」


「本当に? 憧れの体験入部だわ!」


「ましゅたー、本来の目的忘れてるにゃ」


 キーマに言われてまだ足元にうずくまっている召喚教授に気付く。


「ハッ! レン君!!」


 召喚教授の襟首をつかんで持ち上げる。


「レン君はどこ!?」


「わああああっ!? すいませんすいません顔が不用意に近くてすいませんんんんんーっ!」


「それはいいから、レン君の居場所を教えて! 楼閣群島であなたとグリフォンにのってデート……じゃなくて、ギルドに報告に行った鬼人族のイケメンがいたでしょ?」


「ひいっ、女神の御使いにストーキングされてるっ!?」


 梛の勢いに押されてネガティブ思考が加速する召喚教授。


「私が追っかけてるのはレン君の方よ! 今どこにいるの!?」


「その人なら地下水路に行ったよ」


 会話にならないのを見かねてニビが口をはさむ。


「レン君の事、知ってるの!?」


「そりゃ、教授を助けてくれた人だもの。楼閣群島からここまで護衛をしてくれたんだよ。その後、教授の依頼で地下水路の調査に行ったんだ」


「そうなのね! いつ戻ってくるの?」


 梛が笑顔で尋ねると、ニビと召喚教授が顔を見合わせて表情を固くする。


「分からないんだ」


「えっ?」


「依頼したのはもう6日も前になるんだけど、全然連絡がなくて」


「そんな……」


 せっかくレンの気配を感じ取れる所まで辿り着いたと思ったのに。


「調査3日目に戻ってこなかったらギルドに追加要請してくれって本人にも言われてたから、一応救援要員は来てくれたんだけど、地下水路のどこにも見当たらないって……」


「……レン君は何を調べに行ったの?」


 今度はニビが急にうつむく。


「学園の生徒達です」


 代わりに召喚教授が沈んだ声で答えた。


「西塔の生徒だけが立て続けに失踪した、その調査を依頼しました」


「その失踪の仕方、何かめっちゃ裏がありそうな気がするんだけど……」


「この時期になると、そういう事がよく起こります」


「この時期……あっ、競技祭典に何か関係あるのね?」


「大抵は東塔の貴族クラスの派閥抗争で済むのですが、今年は西塔の生徒に優秀な者が多くて目をつけられたんでしょう。東塔の奴ら、貴族以外の生徒に上位を占められるのが屈辱らしい」


「……もしかして、ニビ君のお友達も?」


 ニビが小さく頷く。これは確かに言いづらい。


「地下水路までは魔獣達で匂いをたどれましたが、その後は魔術で隠蔽されて行方が追えなくなってしまって……。恐らく学園都市内のどこかに監禁されているとは思いますが」


「そういうのは分かるの?」


「こいつが動いてるから。生徒が都市から出ると人工精霊との契約は解除されるんだ」


 ニビの頭の上の小鳥はせっせと髪を引っ張って巣を作っている。本格的に居座りつもりだ。


「きっとレン君は生徒さん達を探しに行って巻き込まれちゃったのね」


 だったらやる事はひとつだ。


「今度は私がレン君と生徒さん達を探すわ!」


「本当に? ありがとう、ナギさん」


 ニビがほんの少しだけ顔色を明るくして梛を見やる。


「でもどうやって……」


「待て。今、ナギと言った? 君がナギ?」


 召喚教授が不意に尋ねる。


「そうだけど……」


 言いかけて入館証と名前が違うのを思い出す。何か言い訳を考えようとしていた梛の目の前に、召喚教授が折り畳まれた紙切れを差し出した。


「もし万が一、ナギという者が現れたら渡してくれと」


 教授から受け取った紙切れを開いて、梛の目もカッと見開かれる。


「こっ、ここここここここれはーっ!!」


 そこに書かれてあったのは、紛れもなく転生者(プレイヤー)としてのレンの個人情報だった。


「リアルのレン君と連絡がとれちゃうわーっ!?」

本日もお越し下さいまして本当にありがとうございます!初めましての方もありがとうございます!更新時間ちょっと遅れました。申し訳ありません……!

寒暖差やら雨やら色々ありすぎな毎日ですが、どうかお体を大切になさって下さい。

次回更新は5月10日頃を予定しております。

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