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第193話 野蛮人ども


ニケたちはパイドラとアリアドネをミノスの元へ送り届けるために、サングラッセンに立ち寄っていた。


コロシアムの横を通り過ぎると、闘技場内から大きな歓声が聞こえてきた。


「サングラッセンか。ここへ来るのも久しぶりだな。この歓声、名物のコロシアムも健在みたいだな」


オリオンは葉巻を吹かし、大通りを見回す。


テッサはあからさまに嫌な顔をして煙を避ける。


「歩きながら吹かすのは止めて頂けますか? ただでさえ嫌悪感を抱く匂いだと言うのに、あなたが吹かしているという事が一層不快にさせます」


「あ? なんで俺が下僕一号の言う事を聞かなきゃならねぇんだ? 煙を吸いたくないならお前が退け」


「これだから育ちの悪い輩は・・・ 何故被害を被っている私が退かなければならないのですか? それに、あなたの下僕になった覚えはありません。不愉快極まりないのでさっさと死んでください」


「何だと?!」


「何ですか?」


睨み合う二人は今にも喧嘩を始めそうな勢いだ。


「ま、まあまあ!!」


アルテミスは二人の間に割って入る。


「そ、そうだ! 確かニケとテッサはコロシアムで出会ったんだよね? 私も二人の活躍を見てみたかったなぁ」


「フン。大袈裟ですよ姫。アニキはともかく、どうせ下僕一号はBランク辺りで調子に乗っていたんですよ」


オリオンは誇らしげに胸を叩く。


「これでも昔はAランク常連だったんだぜ。まだ闇の力に目覚める前でかなり前の話だが、アレスとかいう奴のせいでいつも優勝を逃していたんだ。ちっ! 思い出したら腹が立って来たぜ」


「そうですか。アレスさんに」


テッサは思わず口元を押さえる。


「どうかしたの? テッサ」


アルテミスは首を傾げる。


「いいえ。何でもありません。それより、反神族組織のリーダーでありながらよく堂々とコロシアムに参加できましたね」


「当時はまだ顔は割れてなかったからな。俺達が目立ち始めたのはここ最近だ」


「ってお前。上手く話を逸らしやがったな?」


「何のことでしょう? さ、あまり話しているとニケさん達に置いて行かれますよ」


テッサは手招きするパンドラを見ると足早に歩いて行った。


オリオンは空に向かい煙を吐く。


「フン。バツが悪くなって逃げやがった。どうやらBランクってのは図星だったようだな。姫! いつか俺がAランクで優勝するのを見ていてくれ!」


「が、頑張ってね! あはは」


闘志に燃えるオリオンにたじろぐアルテミスだった。




サングラッセン王の間―――。


「ただいま戻りました」


パイドラとアリアドネは深々とお辞儀をした。


「おう。戻ったか。結果は・・・ 聞くまでもないようだな」


アレスは玉座から立ち上がりこちらに向かい真っすぐ歩いてくる。


「そいつが巨星(リゲル)のリーダーだな。一緒にいるという事は、丸め込む事に成功したか。期待しちゃいなかったが褒めてやる」


「お前からの賛辞など要らん。俺の格が下がる」


アレスは不気味に微笑む。


「てめぇ。言ってくれるじゃねぇか・・・」


「おい!! 丸め込んだとは聞き捨てならねぇな! 俺はアニキに下ったのであって、その他下僕どもに下った覚えはねぇ!」


「あぁ? ギャーギャーうるせぇな。雑魚は黙ってろ」


アレスの足元に魔法陣が展開される。


「へっ!! ちょうどいい。コロシアムでの恨みを晴らしてやるぜ」


「お、落ち着いてオリオン様!」


アルテミスはオリオンの腕を引っ張る。


「コロシアムだぁ? 雑魚の顔なんざいちいち覚えてねぇ。返り討ちにしてやる」


アレスが踏み出そうとしたその時、テッサは背後から長刀で思い切りアレスの頭を叩いた。


「痛てぇな!! 何しやがる?!」


「いつまでも大人げないあなたが悪いのですよ。アレスさん」


「喧嘩売ってきたのはあいつだ」


アレスは舌打ちしオリオンを顎で指す。


「何だ? 下僕一号とてめぇは知り合いだったのか?」


アレスの耳がピクリと動く。


「おい。誰が、誰の下僕だと? まさかお前、あいつに弱みでも握られているのか?」


眉を上げるアレスにテッサは首を振る。


「まさか。誰があの野蛮人の下僕ですか。想像しただけで吐き気がします。あ、訂正します。あなたも野蛮人でしたね」


「うるせぇぞ」


アレスはため息をついた。


「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって。アレスの前にお前に引導を渡してやる」


オリオンはテッサに向かい構える。


様子を見ていたアレスは思わず高笑いする。


「こりゃあいい! 傑作だ! 巨星(リゲル)のリーダーだか何だか知らんが、相手の実力も推し量れない無能だったとは!!」


「何だと?」


「馬鹿が。俺に勝てないという事は、こいつには1000年かかっても勝てねぇって事だ」


「あははっ!! テッサは怖いよね~! ご機嫌取れているかいつもビクビクしてるよ♪ 何よりこれで人間だって言うんだから恐ろしいよね♪」


パンドラはテッサの肩をバンバン叩く。


「え?」


オリオンは目が点になる。


「痛いです。それより、思ってもいない事を口にしないで頂けますか?」


「あははっ! オリオン君が黙っちゃった。まあ、当然の反応だよね。 分かるよ〜! 持たざる者は大変だよね♪」


パンドラの振る舞いにアレスは舌打ちする。


「うるせぇヤツだ。下手な嫌味ほざいてんじゃねぇ。てめぇとは白黒はっきりつけなきゃいけねぇらしいな」


アレスはパンドラを睨む。


パンドラは大笑いしてテッサの肩を叩く。


「あははっ! 嫌味に聞こえちゃった? ごめんごめん! まあいいや♪ どうやら君もオリオン君とそう変わらないようだね♪」


「痛いです・・・」


テッサはパンドラの腕を振り解いた。


「ほう。言ってくれるじゃねーか」


アレスの眉間にシワが寄る。


「おい! 俺を無視するんじゃねぇ!」


オリオンが割って入る。


玉座の前で睨み合う三者にテッサとアルテミスは深いため息をついた。


「えーと・・・ どういう状況かな?」


いつの間にか王の間へ入ってきたミノスは頭を掻く。


「知らん」


俺とミノスは呆れ果て揃って首を振った―――。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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