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第192話 溢れる想い


「・・・・・え?」


先程まで笑顔を振りまいていた表情が一変する。


ペルセポネはただ一点を見つめ、その場に立ち尽くした。


「私達では、どうする事も出来なかったんだ!! 本当にすまねぇ!!」


アレクトは土下座し、額を床に擦りつける。


「全て私達の力不足のせいですっ・・・!! 責任を取れというなら、喜んでこの身を捧げますっ!! だからっ!!」


メガイラは真っ赤にした目で訴える。


ペルセポネは静かに首を横に振りメガイラに優しく微笑みかけた。


「あなたも。顔を上げて?」


ペルセポネはアレクトの頬を包み込み優しい眼差しを向ける。


そしてそっと抱きしめた。


「あなた達は良くやってくれているわ。それは私が一番良く知っている。そんなあなた達を、どうして責める事が出来るの」


「でも、私達がもっとしっかりしていればっ・・・ こんな事にはならなかったんだっ・・・!! クロノス様を失う事もなかったんだっ! ペルさんだって!!」


ペルセポネはアレクトの頭を優しく撫でる。


「そんな事言わないの。この世界に生きる人達は皆それぞれ役割を持っているのよ。あなた達が私と出会った事も。私達が、今こうしてここにいる事も。全部意味があるの。きっと、亡くなっていった先人達にだって」


「ペルさん・・・」


「クロノス様の事だって、無意味なんかじゃない。今私たちにできる事は、今できる事を全力でやる事。そうでしょ?」


一層強く抱きしめる。


人目を憚らずに泣きわめくアレクト。


メガイラは力なく地面に座り込んだ。


溢れる涙を拭う事もせず、ただ抱き合う二人を見つめていた。


「もう! そんなに泣かないの!! 子供じゃないんだから」


「ご、ごめん!!」


「謝るのも禁止! ほら、立って。クロノス様の後をしっかり継がなくちゃ。タルタロスを衰退させるわけにはいかないからね。二人とも、頼りにしているからね♪」


アレクトとメガイラは強く目を擦り、大きく頷いた。


ふと、ペルセポネは窓の外を見つめた。


「あなた達は先に王の間へ向かってくれるかしら?」


「どこへ行くのですか?」


「ほら、私こう見えてまだ病み上がりでしょ? ちょっと外の空気吸いたいかなって♪」


心配そうに見つめる二人を尻目に、ペルセポネは鼻歌を歌いながらニュクス城の外へ出て行った―――。




主を失った漆黒の大鎌は、水位の減った大海を望むように佇む。


むき出しになった岩肌は、長い年月をかけ高濃度のエーテルの晒された影響ですっかり変色している。


海水のなくなった黒海は、まるで大峡谷のように底の見えない崖となり眼前に広がっている。


「ここにいらっしゃったのですね。クロノス様」


応える者は誰もいない。


静寂だけが辺りを包んでいた。


「やっぱり私、簡単には死ねない身体なんですね。まだそっちへ行くのを許してくれないみたい」


大鎌の柄を優しく撫でる。


「ティシポネとメティスは仲良くやっているのかしら? ティシポネってば、意外とネチネチしているから、さすがのメティスもうんざりしているんじゃない?」


「それとも、頑固なメティスをティシポネが諭しているのかしら。メティスったら私とそんなに年が変わらないはずなのに、堅っ苦しくて年増に見えるから」


「二人をなだめるクロノス様も、さぞ大変なんでしょうね・・・」


鎌を撫でる手が止まる。


「あはっ。クロノス様ったら酷いんですから。眷属にしておいて、私がどんなに迫っても結局いつもはぐらかしちゃって。レディにここまでさせておいて何もしないなんて、失礼にも程がありますよ」


鎌に触れる手がぼやけて見える。


「・・・それとも、こんな生意気な小娘には本気になれなかった・・・?」


大粒の涙が頬を伝う。


「だったら、どうして私なんかを眷属にしたのですか? どうして私なんかを傍に置いていたのですか・・・?」


ペルセポネの胸元に刻まれた紋章がほのかに赤い光を帯びる。


紋章はひと際強く輝くと、赤い光は散りゆく花びらのように宙を舞い、風に乗って空へ昇って行く。


それは、眷属解消を意味していた。


ペルセポネは静かに首を振る。


「いや・・・ 離れたくない。傍に居させて。お願いだからっ」


必死に手を伸ばしても掴むことができない。


赤い光の花びらはペルセポネに別れを告げるように空へ舞い上がって行った。


力なくその場に崩れ落ちる。


何かを振り払うように必死に首を振る。


「いや・・・ そんな優しい顔で微笑みかけないで。そんな優しい声で語りかけないで。そんな優しいぬくもりで包み込まないで・・・」


涙で溢れる顔を覆う。


「どうして? どうして忘れようとするほど思い出すの? どうしてこんなに夢中にさせるの? どうしてなのよ・・・」


「お願いだから帰ってきてよ。この胸の苦しみを癒してよ・・・」


泣き崩れる彼女を見守るように、漆黒の大鎌はただ静かに佇んでいた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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