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第182話 精霊劇場Ⅱ


「ネメシスというのは、あの金髪の大剣を持った女の事か?」


「アニキ、知っているのか?!」


オリオンは立ち上がりニケに迫った。


「素性は知らん。だが、アルカディアのレルネ湿原でその名前の女と一度会っている。エーテルの回収がどうとか言っていたな。ヤツも闇の力を持っていた」


「そういえば、アシーナがそんな事言っていたような・・・?」


アルテミスは指を頬に当てる。


「ネメシスは元々俺達の仲間で、巨星(リゲル)のメンバーだ。ある日任せていた任務から戻ることなく突然姿を消し、そのまま音信不通になっていた。オデュッセウスに捜索任務を任せていたが、先程ネメシスに殺されたという報告を受けた」


オリオンは葉巻を地面に押し付ける。


「組織内の殺生はご法度だ。どれだけ優秀であろうが、仲間を手にかける奴には制裁を加えなきゃならねぇ」


「しかし、闇の力とは一体・・・? 組織にいた頃はそんな力はなかったはずだ」


アキレウスの表情が険しくなる。


「俺が闇の力を見間違える事はまずない。それに、本人が言っていた事だ」


「そうだとしても、一体どうやって・・・」


「ゼウスだ。あいつは今星が生み出す闇の源泉を丸ごと抱えている。その仕組みを利用して闇の力を注ぎ込んだのかもしれん。嫌気が差したのか、やむを得ない事情があったのか、どういう経緯でお前達から離脱したのかは知らんがな」


アキレウスは顎に手を当てる。


「もし本当に闇の力を手にしていたとしたら、かなり厄介だな・・・」


「何が厄介なんだい? 確かに熟練した剣士であるとは感じたけど」


パンドラは近くに落ちていた薪を焚火に投げ入れる。


「闇の力だぞ。お前さん達もその力の強大さはよく分かっているだろ?」


アキレウスは意味深に俺に視線を向ける。


「それは当然分かっているさ。けれど、こちらには化け物リーダーというオリジナルがいるんだ。闇の力の話をするならそれで相殺するじゃないか」


「それ以外が問題なんだ」


アキレウスはため息をつき焚火を見つめる。


「ネメシスの持つ精霊の力が、非常にタチが悪い」


葉巻を取り出すオリオンが付け加える。


〖タユゲテ殿じゃな〗


真っ赤に燃える紅葉が美しく映える漆黒の着物を纏った精霊が、静かにパンドラの肩に座った。


「あんた、精霊使いだったのか」


オリオンとアキレウスはその美しく、気品のある高貴な精霊に釘付けになる。


「一応ね。このおばあちゃんが、どうしても契約してくれって泣きつくものだから、同情しちゃってつい、ね♪」


〖誰がおばあちゃんじゃ!! まだまだピチピチだと何度も言っておるじゃろうが!!〗


〖え~? 御婆様は御婆様じゃんか。その服装といい言葉遣いといい、おばあちゃんそのものだぜ〗


いつの間にかアルシオーネが顕現している。


〖ちょっとアルシオーネ! 私の推しに何て言い方するの?! ケライノ様を馬鹿にするのは許さないよ!〗


〖お、落ち着いてメロペ。先輩にはちゃんと「様」を付けないと・・・〗


メロペとアステロペも姿を現しケライノを囲む。


〖もう少し敬ってくれったっていいだろ?! ちょっとショックだぞ!〗


〖かかっ! いい気味じゃな。普段の行いがなっていないからそうなるんじゃ。自業自得じゃな〗


ケライノはパンドラに目配せする。


「ん? どうして僕を見るんだい?」


〖・・・お主には何を言っても無駄のようじゃな〗


「けらいのー!!」


ピュラが満面の笑みで涎を垂らしケライノに迫る。


〖ひっ?! ピュラ! く、来るでない!!〗


ケライノは空高く舞い上がる。


「う~~~」


必死に手を伸ばすピュラの瞳には涙が滲んでいる。


〖あははっ!! 御婆様にも苦手なものがあったなんて驚きだ! 良い事知っちゃったぜ♪〗


アルシオーネは意地悪な笑みを浮かべる。


「後でどうなっても私は知りませんからね」


テッサは浮かれるアルシオーネにため息をつく。


突然現れた精霊たちによる一連のやり取りに、オリオンもアキレウスもただ口を開け眺めていた。


「こりゃあ驚いた。二人とも精霊使いだったとは・・・ それに下僕一号。お前のその獲物、まさか全て断界七刀なのか?」


「下僕になった覚えはないと言っているでしょう? ・・・まあ、あなたの言う通りです」


テッサはそっぽを向く。


「そのケライノって精霊の言う通り、ネメシスは精霊タユゲテを宿している。彼女の持つその力があまりにも厄介なんだ」


オリオンはため息交じりに煙を吐く。


「こほっ。こほっ」


隣に座るアルテミの前に流れてきた煙を吸い込み、小さく咳き込んだ。


「す、すまねぇ姫!!!」


オリオンは必死に白煙をあおぎ消す。


「だ、大丈夫。気にしないで。あはは」


アルテミスは涙目で笑顔を作る。


「どういう事だい?」


パンドラはケライノに視線を送る。


〖うむ。タユゲテ殿の力は感覚喪失じゃ。音に乗せた攻撃により相手の感覚を徐々に奪っていく恐ろしい能力じゃ。この儂も幼き頃に数えるほどしか見た事はないが、えげつないものじゃったよ。相手に同情してしまうくらいじゃった〗


〖ひえ~。あんな綺麗な顔して、そんな恐ろしい能力なのかよ。タユゲテ様は怒らせちゃいけないな〗


アルシオーネは頭の後ろで手を組んだ。


〖現金な奴め・・・ まあお主の反応は尤もじゃな。気付いた時には蝕まれている。その恐ろしさから、亡失の精霊なんて呼ばれておった。敵として対峙するのは、正直嫌じゃな〗


〖ケライノ様がそこまで仰るなんて・・・〗


メロペとアステロペは息を呑む。


〖それにしても、御婆様にも戦いたくない相手がいたんだな~。これもメモしておこう♪〗


〖や、やめい!!〗


ケライノはアルシオーネの持つ紙切れを奪おうと手を伸ばす。


〖おっと!! そろそろ限界みたいだ! いや~御婆様と違ってまだまだ未熟だな~♪〗


〖たわけ! どう見てもわざとじゃろうが!〗


アルシオーネはケライノを華麗に躱し曲刀へ戻って行った。


〖わ、私達も帰ろっか・・・〗


〖う、うん〗


メロペとアステロペも様子を伺うように、静かに双剣へ戻っていった。


「とにかく、ネメシスを止め制裁を加える。これだけは譲れねぇ」


オリオンは葉巻を消し焚火に投げ入れた。


「一度オリンポス神殿へ戻るか。皆に経緯を説明する」


立ち上がるとピュラが戻り俺の手を握る。


「今日は泊まって行ってくれ。寝心地がいいとは言えねぇが、テントはある」


オリオンは後方のテントを指す。


「そうだな。それは助かる」


「寝込みを襲おうものなら、即座に切り捨てますからね」


テッサは立ち上がり埃を払う。


「俺の嫁は姫だけだ。お前に興味などない。襲うだけ無駄だ。自惚れんじゃねぇ」


テッサの眉が動く。


「最低の発言ですね。女性を軽んじるにも程があります」


「は~いはい。やめようねテッサちゃん。ぼくが傍に居てあげるから♪」


パンドラは腰の曲刀に手を当てるテッサの肩に腕を回す。


アルテミスは咄嗟にオリオンから距離を取り自分の身体を抱く。


「オリオン様は、ケダモノさんなの・・・?」


「ひ、姫! 違うんだ! 勘違いしないでくれ! 俺はそんなつもりじゃ・・・!」


「ふぁ~。そろそろ寝ようぜ~」


パンドラは二人に肩を組みテントの方へ歩いて行った。


〖・・・・・〗


ケライノは神妙な面持ちでパンドラの背中を見守っていた。


ふと、星の輝く空を見上げる。


「お~い。ケライノも早く来いよー」


〖・・・分かっておるわ〗


そう呟くと、手を振るパンドラに愛想を尽かしながらも素直に従うケライノだった。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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