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第181話 篝火を囲んで


開けた場所にいくつかのテントが設営されており、その真ん中には焚火の跡が残る炭と、それを囲うように椅子代わりに使用する大きめの木箱が数個置かれていた。


アジトというより野営と言った方が近いかもしれない。


特定の場所に長く滞在する事を避ける為か、すぐに撤収できるよう荷物は最低限かつ一カ所にまとめられていた。


「客人を招待するようなものではないが、適当に座ってくれや」


オリオンは積まれた木材を適当に抱え、雑に炭の上にばらまきくわえていた葉巻を投げ入れた。


小さな種火は次第に大きくなり、乾いた音が鳴り始め煙が上がり焼けた木の匂いが漂ってきた。


「ではお言葉に甘えさせてもらおう」


俺が木箱に腰かけると、ピュラは勢いよく膝の上に飛び乗ってきた。


「えへへ!!」


嬉しそうに見上げるその笑顔に、思わず顔がほころぶ。


テッサとパンドラも互いに背中を預けるように腰かける。


「あんたらはいいのか?」


アキレウスは背筋を伸ばし直立不動のパイドラとアリアドネに木箱をすすめる。


「立っている方が気が楽ですので大丈夫です。ありがとうございます」


「そうか」


アキレウスは少し申し訳なさそうに、ゆっくりと腰を掛けた。


「えっと、私は・・・」


「姫はこれに座ってくれ!!」


アルテミスが木箱を探していると、オリオンが滑る勢いで土下座し両手で丁重に木箱を献上する。


他の木箱より少しだけ綺麗で大きい。


「ひっ?! あ、ありがとう・・・」


アルテミスは戸惑いながらゆっくりと腰を下ろした。


「さて。聞かせてくれ。アニキの知っている事、そしてそこの(しもべ)達とやろうとしている事を」


「も、もちろん姫以外だ!」


必死にアルテミスにヘコヘコ頭を下げる。


「あ、あはは・・・」


アルテミスは苦笑いし頬を掻いた。


「私達はニケさんの(しもべ)になった覚えはありませんが? あまりふざけた事ばかり(のたま)うのなら、即刻その首切り落としますよ。それと、ちゃっかりアルテミスさんの隣に座るのは止めて頂けますか? 見ていて非常に不愉快です」


「うるせぇ。下僕のお前には言ってねぇ。あと、姫は俺が守ると決めたんだ。お前みたいな危険な奴らを寄せ付けない為にな」


「分かったら黙ってろ」


テッサの目の色が変わる。


「お前ではありません。テッサです」


長刀を置き、腰の曲刀に手を当て立ち上がる。


「この俺とやろうってか? 嫁にいけない顔になっても責任取らねぇぞ? 俺には姫がいるからな」


テッサの眉がピクピク痙攣する。


「なかなか挑発の上手い殿方ですね。ここまで侮辱されたのは初めてです。いいでしょう。食べやすいよう細かく切り刻んでスキュラのエサにしてあげます」


「はいはい。そこまでにしておきな」


テッサが曲刀を抜こうとした時、パンドラは肩に手を置いた。


小さく息を吐き、テッサはゆっくりと腰を下ろした。


「お前も止めておけ。これでは落ち着いて話ができん」


俺は深くため息をついた。


「す、すまねえアニキ」


やれやれ。テッサがここまで毛嫌いするのも珍しいな。


何となく、分からんでもないが。


軽く息を吐き、俺はゆっくりと語り始めた。



「―――というわけだ」


オリオンを始め巨星(リゲル)のメンバーは静かに聞き入っていた。


焚火の乾いた音だけが響く。


オリオンは空に向かい煙を吐いた。


「なるほど。つまり、この世界に存在する闇の力はこの星に対する薬みたいなもんで、アニキはそれを投与する役割を持っているという事か。俺の闇の力がアニキに吸収されたのも、あるべき場所に帰っただけの話なんだな」


「そういうことになる。俺自身、具体的にこの力をどう使って星を救うのか未だ分かっていない。だが、明確に他の奴のものと違うのは、吸収した力は自由に使える点だ。これが救世の直接的な証拠とはならないが、他の闇の力ではそれはできない。となれば、俺にしかできない役割があると言うのは納得のできる話ではある、というわけだ」


オリオンは顎に手を当てる。


「確かに・・・ 実際、俺の力も生命力やエーテルをただ奪うだけのものだった。そういうもんだと思っていたが、違ったんだな」


オリオンは胸ポケットから新しい葉巻を取り出し、火をつける。


「さっきも言ったが、俺達はアニキの傘下に入る。アニキの話を聞いたら尚更協力したい」


「その話が本当ならここで俺達が争う意味はない。もっと言えば、アシーナ娘が率いる今のユピテリアと争う意味がない、か」


アキレウスも納得した様子で頷いている。


「ゼウスのヤツが何か企んでいるのは明白だ。何をするつもりなのかは知らんが、阻止しなければならない事だけは確実だ。アシーナ達の方も気になる。ユピテリアに戻って今後の話を・・・」


「ちょっと待ってくれ」


オリオンは神妙な面持ちで葉巻を吹かす。


「兄貴たちの援護する事は約束する。漢に二言はねぇ。出来る事は何でも協力するつもりだ。だが、一つだけやらなければならない事がある」


「やらなければならない事?」


オリオンはひと際深く吸い込み、空へ向かって煙を吐く。


「ネメシスの討伐だ」


「ネメシスって、まさか・・・」


突然出た名前に驚いたニケ達は顔を見合わせていた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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