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第171話 四重奏の調べ


漆黒の大鎌とトゥヴァイハンダーが激しく衝突する。


発生した衝撃波は黒き海を波立たせる。


鍔迫り合いによる火花がネメシスの瞳の模様を照らす。


鬼気森然(ききしんぜん)。恐ろしく重い一撃ですね」


「フッ。顔色一つ変えずによく言う」


互いに衝撃を利用し後方へ飛ぶ。


「さすがに、このままでは厳しそうですね」


ネメシスはため息をつきトゥヴァイハンダーを水平に構える。


「幕引きなさい。タユゲテ」


ネメシスが呟くと、辺りはうっすらと白い(もや)に包まれていく。


やがて宙に一つの小さな青白い光の玉が落ち、羽の生えた小さな何かを形成していく。


純白のドレスに身を包み、消えてしまいそうなほどの儚さを持ちながら、どこか恐怖すら覚えるその圧倒的な存在感。


長い青白(せいはく)色の髪をなびかせ、引き込まれるような金青(こんじょう)色の羽を羽ばたかせる。


九腸寸断(きゅうちょうすんだん)。まだ、機嫌を直してはくれないのでしょうか?」


〖わたくしは嘆いているのです。あなたをそのような姿に変えてしまった、わたくし自身に。そして、あなたを救えないわたくし自身に〗


タユゲテは身構えるクロノスを一瞥する。


〖あのお方、ただ者ではないですね。これ以上わたくしの力を使わないで欲しいと言っても・・・ きっと無理なのでしょうね〗


死中求活(しちゅうきゅうかつ)。あなたを頼らずして勝てる相手ではないと判断します。今一度、その力を私にお貸しください」


タユゲテは諦めるように息を吐くと、黙って頷きネメシスの体内へと消えていった。


輝く太陽のような金髪は、どこまでも透き通る深い海のように鮮やかな青色へと変わる。


背中から暗さを称える金青(こんじょう)色の二枚の羽が生え、剣の模様が光る真っ白の瞳を開いた。


【あなたには何の恨みもありませんが、消えて頂きます】


「精霊、か。テッサやパンドラに宿る精霊たちとは性質の異なるエーテルの流動。お前、普通の精霊ではないな」


タユゲテは両手剣を軽々と片手で払った。


気の抜けたように脱力しきった切っ先から凄まじい高音の音色を奏で、鋭い剣戟が一直線にクロノスへ襲い掛かる。


クロノスは咄嗟に大鎌で衝撃波をいなす。


頬に一筋の切り傷が刻まれる。


衝撃波はクロノスの背後で黒き人形を巻き込み地面を割っていく。


見えなくなるほど小さくなった衝撃波は遥か彼方でようやく消えていった。


「恐ろしいな。何て鋭さだ」


【大抵は今の一撃で息絶えるのですが。なるべく痛まないよう速さを意識したつもりでしたが】


「これは遊んでいる暇はなさそうだ」


クロノスは大鎌を握り直す。


「≪終焉をもたらす者(ソティラス)≫」


タユゲテから漏れ出る白い靄を塗りつぶすように黒い霧がクロノスの周囲を取り囲む。


やがて黒霧の薄いヴェールがクロノスの全身を包み込んだ。


「『日食(エクリプシ)』」


漆黒の大鎌を地面に突き立てる。


タユゲテの背後から液体のようにうねる黒霧の闇が襲い掛かる。


タユゲテは両手剣を撫でるように振り下ろす。


煌曲(こうきょく)


高い弦楽器のような音色と共に、黒霧を押し潰すように空から無数の光が降り注ぎ、黒霧を霧散させていく。


タユゲテが視線を戻すと、目の前に大鎌を振りかぶるクロノスの姿を捉えた。


激しい金属音が鳴り響き、嵐のような衝撃波が巻き起こる。


【くっ・・・!】


天井から生まれ落ちる黒き人形達が衝撃で吹き飛ばされていく。


タユゲテはクロノスを押し返し、両手剣を地面に突き立て両手を広げる。


振曲(しんきょく)


今度は低い弦楽器のような音色が鳴り響き、大地が激しく揺れ動く。


振動は更に激化し、ついに大地が裂け始めた。


「うわっ?!」


「何ですか?!」


遠くで黒人形の殲滅に当たっていたアレクトとメガイラの元まで厚い亀裂が走る。


クロノスは裂け崩れる岩肌を飛び移りタユゲテめがけて大鎌を振り下ろした。


タユゲテは両手剣を振り上げ迎え撃つ。


【く・・・!! うぅ!!】


下半身に力を込めると、反動で大きく地面が陥没した。


「女とは思えん怪力だな」


タユゲテは剣を両手に持ち替え思い切り振り上げクロノスを大きく吹き飛ばした。


【二重奏・(みやび)


間髪入れずに両手剣を薙ぐ。


空気を裂く高音と大地を割る低温が重なり合い一筋の衝撃波を生み出しクロノスに向かい飛んでいく。


「『浸食の月(ズィアヴロスィ)』」


薙いだ大鎌から巨大な黒霧の三日月を象った霧が勢いよく放出される。


低空飛行で迫る衝撃波を捉え、まばゆい閃光と共に白と黒の衝撃波は弾け飛んだ。


降り注ぐエーテルの中、二人は睨み合う。


「精霊の力を借りているとはいえ、とても人間とは思えん戦闘能力だ。敵ながら感心するな」


【原初の神の力、伊達ではありませんね。四重に奏でてようやく効果が表れるなんて】


「・・・何の話だ?」


言葉にした瞬間、すぐに違和感に気付いた。


握る大鎌を見つめる。


(感覚が・・・ない?)


クロノスが実感した様子を見て、タユゲテの口角が静かに上がる。


【さぁ。少し遅れましたが開演です。破滅への演奏会の、ね】


タユゲテはおもむろに両手剣を構え、クロノスに狙いを定めた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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